[短編(オリ)]マイロール、ユアロール
親からの手解きを受けながら、私は突然現れた我が子を世話をした。
特になんてことはなかったし、すべきこともすぐに覚えることもできた。私からあまり離れようとせずちょろちょろと視界を行き来するので、どうしたものかと悩んだ。
「こんなものよ? あなたを親だと思ってくれてるんだから、ちゃんと構ってあげないと」
本も読めない、と文句を言ってみたが、少しくらいいいじゃないの、と親は子供を、アレンを、可愛がるのだった。
日に日に大きくなっていく。彼か彼女の興味は私よりも、本よりも、食事よりも、親よりも、木だった。私が木を背もたれに本を開いて夢中になっていると、上から襲いかかってくるのだ。
その度、頭や本の上に不意に現れては、こちらの視界に入り込もうとする。相手にする理由もないし、そもそもしたくない。
だから意図をはかりかねて、視界から排除した。私はただ、魔女が描く魔法にのめりこんでいた。
やがて、アレンは私の頭の上で動かなくなった。特にかける言葉も思い付かず、そのままにしていた。親いわく、安全な場所で休んでいるらしい。
それだけで、済めばよかった。目障りなだけで、少し耐えればアレンは飽きて、疲れて、見えなくなってくれる。
ある時、成長した彼女はこう言った。
母さんは、いなくたっていい。
親、彼女から見れば祖父母に向けて。私がいないときに、いや正確には私が盗み聞きした。アリアと軽く話して、帰ってきたところのことだ。
別に、親らしくあろうとなんてしていないし、まっぴらごめんだった。別に、別に、あんたが、あんたが勝手に出てきたんじゃないの。勝手に親だとか言って、母さん母さんと、しつこいくらいに呼んで。
分からない。どうして、足が動かないのだろう。
「あの子だって、あなたが初めてだったわけだから、そんなこと、言わないであげて」
親は卵当番から外れて久しい。私がアレンを連れてきて、しばらくのことだ。
「あいつも、憎くておまえにそう当たっているわけじゃないだろう。分からないんだ。お前も、あいつのことを分かってやってくれ」
分からない。私は子供の頃、どうしてたっけ。気がついた頃には本に興味をもって、人間たちと文字を学んで、本を読んで。
彼女たちが何を考えているのか、分からない。
◆◆◆◆
相手が何を考えているのか、分かるはずもないのに、推し測ることが重要だとか…口にしなさい口に。
彼女は本の虫で、魔女の物語を好んで手にしていました。結果、親が人間の多い村に頼み込んで、文字を覚えることができました。
そして、魔法に憧れを抱くなか、村の図書館で火災が起きて、世界樹へと旅立ちました。
子供が分からない。リエ君にそう言った彼女は、理解しようとしたのでしょうか。あるいは、知ろうとしたのか…そのあたりはご想像にお任せいたします。
紅竜の集落の、親子という役割の制度は何を作り出すのでしょうね。
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