[創作論]度とは…?
私はふと、彼を呼んで尋ねてみた。
「ふと思ったんだけど、うちで受注してるクエストにある、危険度とか、難易度とかの指標ってどうやって決めてるの?」
ここは彼、ギルドマスターの部屋。私は休憩時間に遊びに来た客だ。
「ここに限った話ではないだろう? どのクエストにもある、共通した目安として設定された指標だ」
いや、それは知ってる。頬杖をつきながら書類を眺めている彼は、マスターとは思えない。
「まず、クエストの内容を整理してみろ。どう考えても危険が及ばないものは、基本的に低く設定してある。特に、うちで扱ってる日雇い系はな」
たしかに。食事処の応援に皿洗い。馬車の積荷おろし。そして、大御所ギルド館内の清掃員。
あれ、清掃員は危険度が高めだったような。
「マスター、でかいとこのギルドの清掃員が危険なのはなんでですかー」
そこが問題だ、と彼は面を上げた。
「うちへの信用が厚いほど、危険だと、認識しているんだ。信頼信用というのは、築くのは難しいくせに、崩すのは一瞬だからな。おいそれと新人を送り込むわけにはいかんのだよ」
つまり、相手との関係に比例して設定しているのか。
「でも、共通の指標なんですよね? 勝手にいじっちゃっていいんですか?」
それは問題ない、と書類が机の上を滑る。
「共通の指標とは、危険度のことだ。第三者の目から、どれだけ危険だと判断されるかだ。難易度の方は、現地の天気や関係を考慮して、こちらで決めていいのだよ」
よくよく思い返してみれば、いずれのクエストも危険度は低い。難易度だけが上がり下がりしているだけだ。
清掃員の危険度は思い違いか。
「じゃあ、マスター。冒険者が…」
ゴーンゴーンゴーン…。
次の質問をぶつける前に、休憩時間が終わってしまった。運が悪いことだ。
「またきたまえ。どうせ私はここから離れられないのだから」
私は軽く返事をして、昼以降のクエストの目的地へと向かうことにする。
◆◆◆◆
実際のところ、ファンタジーなりゲームなりのギルドがあったらこんなふうな会話があると思うんですよ。
モンスター討伐だとか、薬草採取だとか、そんなものだけではなく日々の労働も仕入れてると思うんですよね(歴史を勉強したら、当時のギルドのことが分かることでしょうが)。
奴隷を得るだけの金もない。しかし人手が足りない。なら仲の良い友人か、ギルドに頼むしかない。
そうなると、なんでも屋状態でもあるギルドへと需要が高まり、ビジネスとして成長する、と。
クエストについて、もう一つ気になるところがあるので、それはまた明日。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます