[短編(オリ)・創作論]溢れ出る夢

気がつくと真っ黒な空間には、白の領域ができていた。

ーー夢だ。

いつも自分は黒の中に座っていて、白がどこからか、決まって自分の視界の中で発生して、広がる。

心なしか、大きくなっているように見える。

「どうしておまえは、そちらであろうとするんだい」

そちらには黒い自分がいる。きっと、そいつから見れば自分は白いのだろう。

「そちらに居続けても、いいことはない。寿命か、体か、精神が尽きてしまうだけ」

ある日突然、白は現れて、声を次第に大きくしている。

「あの人のもとへ行こう。まだ間に合う」

差し伸べられているらしい手が、境界線を越え、そして、見えなくなる。

ーー断る。恩師にはまだ礼を返せていない。

手を引っ込めたこれが現れたのは、あの人が現れたときだったか。消えることなく、しつこく語りかけてくる。

「その恩師は、君を見てくれているのかい」

わかりきっていることを、白の黒は口にする。黒の白である自分は答えないことを選んだ。

「ここにいたら、いけないんだよ。分かってるくせに」

白は黒に飲み込まれて、消えた。


◆◆◆◆


まだ夢のテーマは続きます。

今回は自問自答の夢でした。


人が問題に直面し、あれやこれやと迷ってるとき、答えはすでに出ていることが多い。そうは言いますが、選ぶべき道はそれではない、とも言えるような気がします。

自分は黒いところにいて、白い領域に行くべきだとなんとなく感じてはいるけれども、その一歩に理由をつけて行こうとしない、と。


葛藤に使えるシーンですが、対立項である自身を、いかにも考えの異なる自身として描くのが難しいでしょうね。自身を揺さぶる主張を自身で放つ、という矛盾した状況を実況する必要があるわけですから。

それこそ、天使と悪魔、善と悪の囁きのようなものですが、もっと重いことでしょう。

主人公自身が、自身であることを否定しないといけないのですから。


とはいっても、日常ものだったりするとこんなシーンはそうそうありえないことを考えると、機会の少なさを考えれば腕の見せ所になるのかな?と思うのでした。

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