[短編(市場)]マイストーリーズコラボ(市場✕妖魔)

ただの透き通った、石。日本でもそんなものを見たことはあるが、大きくてもせいぜい親指の先くらいだ。

目の前の、朱色の鱗の二足歩行角トカゲはそれを手にして俺に示した。

「なんだよ、ただの石だろ」

やっぱり、と小さく呟いた彼女は太い爪で石を握る。

「これは、魔結晶。魔力が固まってできた結晶」

魔力。少し前にも聞いた単語だ。ふぅん、と鼻を鳴らして、遠くに見える樹へとまた、あるき出す。

どうやら俺は夢を見ているらしい。魔法と大樹の世界の、夢。感触のある、現実味のある、夢。

「ところで、妖怪って、何? どう見ても人間のあんたが、俺は妖怪だ、なんて。頭のおかしいやつよ?」

後ろからついてきている、雌らしい彼女はラクリ、と名乗った。

「俺は杉崇(スギタカ)。日本にいた鬼だ。人間じゃない」

 そういうことにしとくわ、とトカゲは日本の脚で根っこを跨ぐ。

 早く、目ぇ覚めねぇかな。


◆◆◆◆


ラクリ・エスト

(世界樹の市場より)

杉崇(スギタカ)

(未公開作品より)


複数の話を書いた人にとって、各登場人物がひょんなことで出会い、交流をする話を描く…少なくないことだと私は思います。

現に、並行で製作中のSTGゲームでは、市場の世界に呼ばれた人物が、祭(弾幕STG)で勝ち進み優勝を目指す、というお話にしようとしています。

出会うことのないはずの世界が交わる。

まさしく妖怪、魔界、地獄、天国などにも通じる概念です。

いわゆるうちの子、よその子の絡みだとかも、同様のものでしょうか。


こういったお話、書くのは楽しいのですが、どうしてここまで魅力的なのでしょうか。いや、魅力というよりも、心躍る、でしょうか。

彼らの、奇怪な寄り道。異なる常識をやり取りして、喧嘩したり意気投合したり。

彼らという存在を保ちながら、自由に描けることも一因でしょうか。


きっと、妖怪などを描いた人たちも同じように、現世と異界の接点を思い浮かべ、心躍らせたのでしょう。

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