第152話 キャラクター紹介&用語集&メモ〜地球英雄ノ章〜

キャラクター紹介~地球英雄ノ章


1、タケル・エンペドクレス(15)

 T160

 魔法が存在する世界より帰還した元人間。ディーオ・エンペドクレスより力を受け継ぎ、現在は魔族種と呼ばれる超越存在。虚空心臓、高次元認識力、聖剣などの力を有する。地球へと攫われてしまったセーレスを探し出すため、故郷日本へと帰還を果たした。オッドアイの手からセーレスを奪還するため、そして自分自身の力を制御するために修行を開始する。人間社会においては異常とも言える力を有しているために、トラブルを引き寄せやすい体質になっている。その過程でカーミラ、ベゴニア、百理など、地球に古来から住む人外種の戦いに巻き込まれ、やがて協力関係を構築する。

 自分自身の魔力の総量を科学的に分析し、それを精緻に効率よく制御するため、人工精霊の作成に着手、成功する。かつてニートだった頃とは一線を画し、自分のプライドもかなぐり捨て、大切なもののために他者へと頭を下げることも厭わなくなった。目標へ向けてひたむきに努力するその姿は周囲を刺激し、いい意味でも悪い意味でも影響を与えていく。

 しかし見方を変えれば、自分は好きなことをしていて、それ以外の生活、収入の面でエアリスに頼り切りになっているため、ヒモみたいな生活をしていると自己嫌悪もしている。セーレスを取り戻した際には、エアリスとの関係も改めて見つめ直さなければならないと密かに決意している。



2、エアスト=リアス エアリス(17)

 T172 B96(New!) W63(New!) H93(New!)

 タケル・エンペドクレスとともに地球へとやってきた魔人族の少女。自身が信奉していたディーオ・エンペドクレスから力を受け継いだタケルと心のわだかまりを解消した彼女は、彼の手となり足となり、その最大の目的であるセーレスの救出に協力するようになる。

 風の精霊の加護を受ける稀有なる魔法使い。こと風の魔素の取り扱いにかけては群を抜いている。自分自身に風をまとわせてレシプロ機並みの速度で巡航することが可能。また指先の軌跡上の空気を切り取り、風の魔素を流し込む『エアカッター』、真空の糸を用いて対象物を物理抵抗ゼロで切り刻む『ホロウ・ストリングス』、真空の礫を叩きつけ、周囲の酸素を奪いながら炸裂する『エアーボム』、表面を真空にした壁を高速流動させて触れたものを物理、魔素的にも無力化する『エアーシールド』、風を全身に纏い光を屈折させる『光学迷彩』などなどが使える。

 地球へとやってきて、もっとも変わった少女。地球へ来る直前、タケルへと一世一代の告白をし、拒絶され、せめて彼の一助になればと自らの生命を捧げる。瀕死の自らをタケルに救われたことにより、己のすべてはすでに彼のものであると定義してしまった。その結果、地球に来てからというもの、その生活様式や文化、経済規模にただただ驚くとともに、柔軟な思考で適合しようと努力していく。日本語を勉強し、インターネットの使い方を覚え、少しでも彼が目的に専念できるようあらゆる面で支えようとする。健気。

 だが、そんな努力とは裏腹に、慣れない地球の生活とセーレスを取り戻したあとの自らの境遇を想像し、多大な不安とストレスを抱え込むことに。そんな彼女の心を敏感に察知した風の精霊が突如具現化し、好き放題彼女が普段心に抱えている一切合財をタケルへとぶちまけてしまう。具現化した精霊の子供にアウラと名付け、自分とタケルとの子供とすることでようやく精神の安定化と成長を見せた。

 インターネットを使いこなし、自身のインスタに写真を載せたり、料理のレシピを勉強したり、株式投資やFXまでする。最近の悩みは飽食の日本に来て、ご飯が美味しすぎてちょっと太ってしまったこと。単に成長しただけとの噂も。

 生来の勝負感、とも呼ぶべきアビリティを有しており、株式投資やFXにおいてもフィーリングだけで勝ちを拾ってしまう。すでにかなりの利益を上げているが、金儲け自体にはまったく興味がなく、娯楽や贅沢とも無縁。自分のお金はすべてタケルのものだと考えており、彼からちょっとしたプレゼントをされただけで内心大感激したりする。チョロすぎですよエアリスさん!



3、成華・エンペドクレス・タケル(15)

 豊葦原学院高等部1年E組の2学期、しかも期末テスト終わりに突如として転校してきた留学生。ボサボサの前髪で顔の大半が隠れており、瓶底メガネまで着用しているためにまったく人相がわからない。実はリゾーマタと呼ばれる小国において、某かの宗教指導者的な立場にあり、彼の国に長年技術開発援助をしてきた御堂財閥、カーネーショングループの推薦で日本へとやってきた。冴えない容姿なのに、同じく2年に留学してきたエアリス先輩に惚れぬかれており、噂では子供までいるとか。その為一部の男子生徒からは嫉妬の対象となっている。



4、成華・エンペドクレス・エアリス(17)

 豊葦原学院高等部2年A組に突如として転入してきた季節外れの留学生。

 日本人離れした褐色の肌と蒼銀髪の髪、月を写したような琥珀の瞳が特徴的な美少女。彼女の噂は初日の登校途中から全校を駆け巡り、一時間目までには校内のSNSサーバがダウン寸前に陥るほど彼女に関する意見交換や情報を求める声が相次いだ。そんな彼女を周りは放っておくはずもなかったのだが、本人にクラスメイトたちと友好を温めるつもりはまるでなく、横柄かつ不遜な態度で、自らの主人と公言してはばからない1年E組の成華・エンペドクレス・タケルの教室へと足繁く通う。信じがたいことだが既に結婚、出産までしているらしく、かなり大きな子供がいる――と一部噂もある。

 その類稀なる容姿から、本人の許可を得ずに盗撮の憂き目に遭いそうになるが、いままで撮影された写真は一枚もない。遠くからこっそりとカメラを向けようものなら、なぜかカマイタチに切り裂かれたように壊されてしまう。それでも彼女の人気は天井知らずである。



5、カーミラ・カーネーション・フォマルハウト(700)女性

 T167 B92 W58 H88

 推定700歳の吸血鬼。薄桃色のゴールドブロンドをカールにして、優雅なお嬢様口調で話す。ですわ、ですの、よしなに。

 世界に現存する神祖と呼ばれる太古の吸血鬼の血を引く唯一の生き残り。北欧で発生し、そこを起点に生活していたが、世界放浪の旅を経て、第二次世界大戦後、焼け野原となった日本に定着するようになる。高度経済成長期の日本を支え牽引した一流企業『カーネーショングループ』の初代社長を務め、その後二代目社長に代替わりするも、三代目会長・・となった現在までずっと彼女が実質的なワンマン経営を続けている。フロンティア精神の塊で、自分の楽しみを利益に換えてしまえる商売の天才。それと同時に時間も手間もお金も惜しまず、時には部下や執事の迷惑も顧みないで己の快楽のみを求め続ける破滅的な性格。

 御堂百理とは犬猿の間柄。企業人としても、また人外の徒としても、立場もあり方も対局に位置するふたりは、邂逅以来80年近くを、影に日向に戦い続けてきた。

 自らの眷属であるベゴニアが切っ掛けでタケルと出会い、自分のおもちゃに認定する。タケルの不死性を吸血鬼の力によるものだと勘違いした百理に喧嘩を売られるも、むしろ望むところだと買ってしまい、一大妖怪大戦争に。危うく死闘になりそうだったところをタケルに調停され、その後彼に協力するという名目で、百理と歴史的な停戦に合意する。だが最近やっぱりタケルが原因で、再び百理と決裂してしまった。



6、御堂百理(332) 女性

 T146 B75 W53 H78

 御年332歳の人外。江戸時代中期に生まれた。元々は大陸から高天原を目指して日ノ本へと渡ってきた霊験あらたかなる巫女の家系。日本全ての妖怪を束ねる人外の頭領でもある。

 艶やかな黒髪とパッツン前髪、常に白無垢のような和装を着こなしていて、螺鈿の髪飾りをワンポイントにしている。

 古来より闇の者たちから日本を守り続けてきた一族の末裔『御堂』であり、歴代御堂の中でも特に戦闘能力に優れていると言われている。

 彼女の生きた時代は事更に激動の時代だった。江戸幕府の終焉、大政奉還、王政復古の大号令、戊辰戦争……時代の潮流はやがて日本を世界大戦へと巻き込んでいく。

 影に徹しているだけでは日本を守れないと感じた彼女は、表の世界からも国と民を守るために御堂財閥を立ち上げ、表の世界でも大きな力を有していく。

 そんな最中、カーミラの存在は目の上のたんこぶだった。自分の縄張りに強力な吸血鬼が堂々と商売をしているだけでも気に入らないのに、あからさまに挑発、嫌がらせを仕掛けてくるのでムキになって戦っていた。

 タケルのことをカーミラの眷属と勘違いしたのを切っ掛けに、これ幸いにとカーミラに喧嘩を売って、最後はタケルに怒られる。

 その際目にしたタケルの稀有なる力に敬服した彼女は、彼こそが日ノ本を滅亡から救う救世主なのだと確信する。その後はタケルの良き理解者となり、その目的を達成するため、カーミラと先を競って協力を申し出る。

 シリア人質事件で重症を負ったタケルに何もできなかった自分に対し、タケルを吸血鬼化することで命を救ったカーミラに醜い嫉妬心を燃やし、実質決別する。ちなみに徳川吉宗とは幼馴染だった。



7、ベゴニア(101) 女性

 T184 B99 W68 H96

 カーミラが日本に来て作ったただ一人の眷属。白髪が混じった黒髪をショートボブにした男装の麗人。筋骨隆々で自身が考案した武術を駆使してカーミラのボディガードを務め、他にも運転手や秘書の仕事もこなす、かなり有能な執事。

 元々は戦争によって人生を狂わされた少女。第二次世界大戦以前、北海道入植者だった母とロシア人だった父との間に生まれたが、戦争により父はロシアへと去り、取り残された母とふたりで貧しい生活をしていた。日号作戦が発令され、津軽海峡が機雷で封鎖されるとの噂が立ち、慌てて母と共に本州へと渡るも、混乱のどさくさで離ればなれに。その後はひとり母を探しながら南下を続けて旅をする。仕事と食料を求めて大きな街を目指し、数年後、東京大空襲に見舞われる。その際にカーミラによって命を救われ吸血鬼の眷属に。戦い方も仕事も料理も、カーミラの眷属になってからすべて覚えた。だが、主が一番欲していた『遊び相手』にだけはついぞなれず、詰まらないと切り捨てられ暇を出される。途方にくれていた折り、偶然にもタケルと出会い、御堂の刺客ではないかと疑い戦いを挑んだ。

 激闘の果てにタケルを弟子にすることを了承し、また個人的には彼にたいして恋愛感情にも似た母性を芽生えさせ、精神的に一気に成長。カーミラと正面から対峙することを全く恐れなくなった。だがどうやら主はそんな執事の自立を待っていたらしく、諸手を挙げて歓迎される。タケルイジりという名の遊びをカーミラとともに楽しんでいる。



8、綾瀬川心深(16) あやせがわここみ

 T163 B83 W59 H85

 タケルの幼馴染にして現在売出し中のアイドル声優。背の中ほどまで伸ばした黒いストレートヘア、意志の強い瞳がややキツイ印象を受ける。子供の頃から『声』に対してコンプレックスを抱いており、それが原因でイジメの対象にもなっていた。タケルの一言をきっかけに演劇の世界に興味を持ち、自分の声を制御する術を身に着け、自らのコンプレックスを克服する。

 周りの大人たちに過小評価され、ネグレクトされても我が道を進み続けるタケルに対して憧れに似た感情を抱いており、声優として成功したことでようやく自分に自信が持て、彼への恋心を自覚する。

 とにかくタケルが周囲から馬鹿にされている現状に我慢できず、彼の能力を周りの大人たちに知らしめようと暗躍していた。ようやくタケルと真っ当な学校生活を送れると思っていた矢先、さらに彼が心を閉ざしてしまう事件が起きてしまう。再び引きこもってしまったタケルに、長年溜まっていた気持ちをぶつけるも拒絶され、その直後彼は行方不明に。だが決してタケルが死んだとは思っておらず、必ず帰ってくると信じていた。

 現存する人類では数少ない魔力を秘めた人間。自身の声に魔力を乗せることにより、その声を耳にした人間の精神や生理機能に影響を与えるという『言霊の魔法』が使える。今までは全くの無自覚で、特に感情が高ぶった演技をした際に、『深い余韻を心に残す』と評価を得る程度だったが、スミスと出会い、アクア・リキッドスーツを着用することで強化された彼女の魔法は、文字通り凶器となってしまう。

 本人が全く知らないところで、タケルが魔法世界から地球へと渡航するため、『ゲート』の帰還点に設定されている。タケルが再び学校へ行くきっかけになったのも、綾瀬川心深に帰還報告をするためでもあった。


9、アウラ (0~三か月ほど) 女性?

 エアリスの内側より現れ出でた風の精霊。風の魔素の高密度集合体であり、高次の情報生命でもある。

 見た目は浅葱色の髪をツインテールにし、薄褐色の肌をした4~5歳程度の女の子。瞳の色はエアリスと同じく琥珀色である。

 フォトジェニックであり、写真映えのする天性のモデル。その才能をカーミラに見いだされ、カーネーションブランドキッズ部門の子供モデルをしている。アウラを広告に採用したことにより、キッズ部門は右肩上がりの業績を続けている。

 タケルとともに地球にやってきたことで、今度はエアリスの方が異邦者になってしまった。言葉も通じず、文化も価値観もまるで違う地球での生活の中で、タケルを心配させまい、タケルの迷惑にはならないようにと気を張り詰め、エアリスは多大なストレスをため込み続けていた。何故か知り合う者たちの悉くが美女美少女ばかりで嫉妬したことも相まり、彼女の心の重荷を解放するため、忌憚なく『本音』を言うために具現化する。地球へとやってくる直前、重傷を負ったエアリスにタケルが自身の魔力を吹き込んで復活させたので、その影響も色濃く受けている。

 今のアウラは完全とは言い難い状態で、エアリスの願望により子供の姿を取っているだけに過ぎない。先のストレスを解消するため、タケルとの新たな絆に『家族愛』を得たエアリスは、無意識のうちにタケルと自分の『娘』という役柄をアウラに求め、アウラもまたそれを引き受け続けている。

 最近眠っていることが多い。そのさまはまるで羽化する直前のさなぎを見ているような高揚感を覚える、とのちにイリーナは語った。


10、真希奈 まきな(生後2か月ほど) 女性

 人工精霊型オペレーションシステム真希奈。

 アウラの具現化をきっかけに、マキ博士の協力を得てタケルが開発した人工精霊。パーソナルは女性。生まれてからわずか二か月ほどだが、非常に早熟で、常に背伸びをしている。

 タケルが自身では制御不可能な魔力と魔素の管理を委託することを目指して開発した人工的な高次元生命体。百理から齎された『賢者の石シードコア』を器に、マキ博士が作り出した人工知能アルゴリズム、そしてタケルが注ぎ込んだ魔素と魔力、愛の意志の元に、1400光年の彼方、ケプラー452bで産声を上げた。

 自分を創造したタケルのことを神であり、主であり、父のように慕っている。その一方でとても嫉妬深く、主であるタケルが人間の振りをして学校に通うのを反対したり、タケルの周りに女が近づくこともおもしろくない。特にエアリスをライバル視しており、ことあるごとに「乳デカ女」とバカにする。対してアウラには非常にお姉さんぶった態度を取り、何かあればすぐに取り入ろうとする。

 本来は容を持たない情報生命だったが、ネットを通じて人間の姿かたちに興味を持ち、またタケルの隣に立つにふさわしい姿を夢見て、自分自身の容姿をデザインする。その際モニター越しに現れたのは、優しそうな面立ちで、おかっぱ黒髪の小学生くらいの女の子だった。すべてはタケル様のため、といいつつ、イリーナと何か悪巧みをしているらしい。



11、イリーナ・アレクセイヴナ・ケレンスカヤ(11)

 T146

 旧ソビエト連邦科学アカデミーが作り出したデザインチャイルドのラストナンバー。超優秀な遺伝子提供者のDNAを交配させ人工的に作り出された天才少女である。生まれた時から軟禁状態にあり、インターネットだけが外を知る唯一の手段だった。

 全世界規模でばら撒かれた真希奈謹製RSA量子暗号文を見事解読し、ウィザード級を超える異能な力を見せつける。その知能とクラッキング能力を駆使して、セーレスの足取りを探してもらおうと、タケルの要望をかなえる形で、御堂、カーネーションが強く働きかけ、彼女を縛り付けていた鎖を断ち切ることに成功。日本という初めての外の世界を謳歌することになる。

 かなりのネットフリークスであり、日本のサブカルチャーを当然のように信奉している。また、その影響で独特のヒーロー感を持っており、自分を解放し、両親との絆を再確認させてくれたタケルに対して感謝はしているものの、純粋に彼の容姿が子供っぽいのが嫌という理由で一歩距離を置いている。年上で渋くて太い感じの、藤岡弘がタイプ。

 シリア人質事件の当日に来日し、その後タケルとの邂逅もそこそこに、積極的に事件解決のための情報収集を行い、人質解放に多大な貢献をする。現在は百理の計らいで、人工AI進化研究所のフリーパスを与えられ、客員教授待遇を受けている。破壊されたプルートーの鎧の触媒修復を計画しており、それ以外にも人工精霊真希奈を使用して、なにがしか企んでいるらしい。



12、安倍川マキ(33)

 T165 B80 W60 H84

 御堂財閥が100%出資する研究所、人工知能進化研究所所長にして主席研究員。所謂凡人の中の天才であり、かの有名なカール・ツァイス教授より直々に仕事のオファーがくるほど。

 御堂が提唱する『災厄の日』に備えるため、人工知能を駆使した統計的な危機管理運営、都市機能防衛の研究と対策を実践している。だが現実には来るかどうかも分からない災厄に備えなければならない退屈極まる毎日に飽き飽きしていた。そんな折り、百理の紹介でやってきたタケルと出会い、非常にユニークな生態をしている彼に興味を持つ。

 タケルが持つ魔力が光の波長に似ていることを突き止め、その魔力量を国際エネルギー単位系に置き換えることに成功。後に開発した人工精霊真希奈と共に、タケルの戦闘力を飛躍的に向上させる手助けをした。

 最近の悩みの種は、科学分野で自分のお株を奪っていくイリーナの存在と、若さを失いキメと張りを失ったお肌のことである。東北の田舎出身で、メンタルがダメージを負うと訛りが出て田舎の母親に電話したくなってしまう。



13、成華モトハル(44)

 T174

 成華タケルの叔父。両親不在のタケルの親代わりであり、結果的にタケルをネグレクトしてたひとり。タケルが自分に懐かないのは、自分の家と両親の帰る場所を守るためだと正確に理解していた。実際には、タケルのことを顧みない彼の両親を追いかけ、海外まで足を運んでいる。

 不器用で生真面目で、何も秀でた部分がない凡夫。普通のサラリーマンであり、2LDKの小さな庭付き一軒家に住み、軽自動車をマイカーとして持つ。

 地球帰還したばかりのタケルが、エアリスに貧しい思いをさせないために真っ先に頼ったひとり。ウソかホントか、異世界から帰還したというタケルの話を聞き入れ、自分ではなく別の誰かのために頭を下げるタケルに、彼の貯金通帳と身分証を渡す。



14、成華スミエ(46)

 T159

 成華タケルの叔母。直接血のつながりはなく、夫がタケルの父の弟にあたる。いつもニコニコと笑みを絶やさない温和な性格。自分の夫とタケルが気まずい関係であるのを承知で、つねに会話のきっかけを与えていた。

 忽然と消え、突然帰ってきたタケルを何も聞かず優しく迎え入れる度量を持つ。その一方で、タケルの体に幾重にも刻まれた拷問痕にショックを受け涙ぐむほど感受性が強い。タケルから事情を説明され、全ては理解できなくとも、その決意が固いことを知る。別れ際、せめて学校だけはと、人間の世界との関わりを失うなとタケルの心に訴えかけた。



15、甘粕志郎 あまかすしろう(16)

 T177

 豊葦原学院高等部一年E組。フラットにオタク趣味を公言する今どきの高校生。唯我独尊で他人の意見に左右されず常にマイペース。実は常識人の皮を被った非常識人であり、自分の世界観から外れた世間を間違っていると思っている。無自覚のペドフィリア(?)という重篤な病に犯されており、そう遠くない未来逮捕されるのは確実と周囲から哀れみの目で見られている。アウラのことを好きになり、本気で求婚をしようとしてエアリスに黙殺された。

 その一方で他人にはない感性と第六感に優れ、芸術的なセンスはかなりある。実は身内に有名な芸術家がいるらしい。何故か他人の性交経験の有無を一発で看破できる特殊能力を持つ。



16、針生清次 はりゅうきよつぐ(16)

 T174

 豊葦原学院高等部一年E組。甘粕志郎、星崎一平とよくつるんでいる、校内でも屈指の不良。短気で喧嘩っ早くて進路指導室の常連。だが本人から言わせれば、本気で喧嘩をしたことなど一度もない。校内での揉め事はお遊びであり、彼が本気になれるのは彼が通う道場の師範だけだった。幼い頃から空手道場に通い、その実力は大人達も顔負け。それ故か、成華タケルが只者ではないと見破り、正々堂々と決闘を挑み敗北する。負けたあとはわだかまりもなくなり、タケルへと気さくに話しかける友人となる。タケルの実力の片鱗を見て、そのうちオリンピックなどに出たりするのだろう、と気楽に考えるなど、ある意味常識人で平和な性格。



17、星崎一平 ほしざきいっぺい(16)

 T175

 豊葦原学院高等部一年E組。軽薄を絵に描いたようなナンパ男。寝ても覚めても女の子のことしか考えておらず、校内の女子全員をナンパし、生活指導室行きになった伝説を持つ。エアリスに一目惚れしてしまい、タケルに対して嫉妬の感情を抱く。タケルに決闘を申し込もうとしていた針生清次に入れ知恵をし、自分はその裏でひとりぼっちのエアリスをナンパし成功するという大金星を上げる。だが、実際にはタケルのことを盛大に惚気けるエアリスの姿にお腹いっぱいになり、心の中で降参した。エアリスを通してタケルの過大な評価を聞いてしまい、翌日からタケルのことを『センセ』と呼ぶようになった。



18、綾瀬川緑子 あやせがわみどりこ(43)

 T162

 綾瀬川心深の母。かつて舞台に立ち、女優をしていたが結婚を機に引退した。心深が小学校を卒業するまでに演劇に興味がないか水を向けるつもりだったが、本人から「これやりたい」とレッスンの動画を見せられ、娘を演劇の世界へと導く。多少親バカというか我が子第一なところがあり、交友関係にはことさら目を光らせていた。家が近所というだけで、両親の姿が見えず、礼儀作法も愛想もないタケルのことを嫌っており、それとなく心深にはかかわらないよう釘を刺していた。

 だが恋心が止められないのもまた承知しており、娘の彼に対する過干渉も見て見ぬふりをしていたが、流石に火事の現場に飛び込もうとする我が子は決死の覚悟で引き止めた。ラブホテルの一件で失意の心深を送り届けたタケルを最初は気づかず、素顔を見てようやく思い出す。なにがあったのか詳しくは問いたださないが、娘の様子から大体のところは察している模様。



19、朝倉希 あさくらのぞみ(16)

 T155 B80 W58 H82

 豊葦原学院高等部一年A組。ソフトテニス部所属。綾瀬川心深の親友。初めて出会った頃は心深のことが嫌いで、何かにつけて突っかかっていた。一度心深と喧嘩同然にやり合い、わだかまりを解消した。不思議とあの子の話を聞かなくちゃいけないような気がした、と後日、彼女はもうひとりの親友夢へとそう語った。いい意味で普通。庶民的。中流家庭で育ったため金銭感覚も普通の女子高生。心深は自分で稼いでいるし、夢の家は裕福なのでふたりに挟まれると劣等感を感じてしまう。



20、支倉夢 はせくらゆめ(16)

 T149 B83 W58 H80

 豊葦原学院高等部一年A組。心深と希の親友。ボケにさらなるボケを重ねるような天然系。家は裕福で、コスメ類はすべてカーネーションブランドしか使わないらしい。さしてアニメに興味がなかったが、心深の役どころを追っていく内に、のめり込んでいってしまう。校内の流行に敏感で、学校を休みがちな心深によく校内の出来事を教えている。現在は時の人であるエアリスに興味津々。






21、アダム・スミス Adams・Smith (30)

 T187

 アメリカ軍に籍をおく軍人、エージェント、政治や実務も行う何でも屋。くすんだ金髪とひょろりと高い背丈、そして左右で虹彩の異なるオッドアイをしている。

 異常なほどに交友関係が広く、階級や立場を越えて目上や目下の人間と長年の親友のように接する。

 だがその正体は『始まりの男』の記憶を宿した人類意志の奴隷であり人類という群体の頂点に立つ男だった。ある日突然、自分のモノではない膨大な記憶を受信してしまい、人格が代わり使命感に目覚める。彼が受け取った記憶とは『人類史』であり、人間の敗北と恥辱の歴史だった。人類は過去に二度、栄華を極めていたが、その二度ともに滅びの道を辿っている。築き上げてきた文明や文化はリセットされ、その度に絶望の中から這い上がり、小さな種を大切に芽吹かせ、増やし、手を取り導いてきた。アダム・スミスはそんな3人目の男である。

 タケルたちがいる現代より50年後の未来から、異界の門ゲートを開き、異世界へと渡った。タケルがセーレスと出会うよりも30年も前の魔法世界へ降り立つ。その目的は魔法を使える者を地球へと連れて帰ること。地球にもかつては魔法が存在したが、二度の滅びで人類はその力を完全に失ってしまった。そのため、魔法が発動できるだけの魔力を持ち、大気中に満ちる魔素を感知して操れる者を求めていた。

 魔法世界で出会った『クリス』を利用し、宗教という手段で資金と権力を集める。そして彼をアークマインの中枢へと送り出し、ゲートと魔原子炉の研究を続ける。長い時間の果てにセーレスという最高の魔法素体を手に入れた彼は、聖都を消滅させ地球へと帰還を果たした。

 終始一貫してその行動目的は地球人類を滅びから救うことであり、魔法の研究も歩兵拡張装甲の研究も全ては人類のためだった。地球人類が民族、宗教、人種の壁を越えて一丸となるための人身御供を探しており、それをタケル・エンペドクレスへと求めている。

 プライベートでは、映画、ドラマ、音楽、アニメ、漫画、絵画、などなど、あらゆる芸術をこよなく愛する。特にアメコミとMANGAが大好きで、自分のコレクションルームを持っているほど。「ここは第二のノアの方舟なんです」と彼が言うとシャレにならないから困る。



22,マリア・スウ・ズムウォルト(18)

 T170 B90 W61 H88

 アメリカ人の父とインドネシア人の母の血を引くハーフ。ハワイ生まれのアメリカ国籍。父は元太平洋第7艦隊司令であり、現在は退役軍人省ベテランズへ便宜を図るアメリカ上院議員。婚外子であり、父と現地妻の母との間に生まれ、10歳のときにハワイからインドネシアへと渡っている。母、祖父を立て続けに失い、ひとり逞しく生きていたが、魔力に適正のある人間を探していたアダム・スミスにその才能を見出され、歩兵拡張装甲と出会う。

 魔力を全身に巡らせ、人間の限界を越えた肉体強化を短時間だけ行うことができる。アクア・リキッドスーツを着用すればそれが常時可能となった。第三世代型歩兵拡張装甲ブラック・ウィドウの専属パイロットにして、AAT部隊最強のエースパイロット。耐G性と空間把握能力に優れ、歩兵拡張装甲を手足のように操る。

 軍人としての階級は中尉。シリア事件を切っ掛けに昇進した。年明けには正式な任官を控えている。

 スミスの正体とセレスティアの事情を知った数少ない人間。それ以降、スミスへの態度は変わらないが、セレスティアには母のように姉のように優しく接するようになり、そのすさんだ心を解きほぐすことに成功する。

 歩兵拡張装甲に出会わなければ教師を目指していたと述懐していた。



23,セレスティア(8~9)

 T176 B98 H59 H92

 一点の曇りもないプラチナブロンドに白磁の肌、翡翠色の瞳と、ミス・ユニバースが裸足で逃げ出すほどの美貌を持った美女。

 高度な水精魔法を手足のように扱い、冷酷で残忍。虫を踏み潰すように生命を奪う。

 その正体は水の精霊。アウラと同じくセーレスを守護する精霊が主の危急に具現化した姿。発現してからまだ十年も経っておらず、中身は完全に小学生。乱暴な言葉で他人に噛み付くのも、本当はまだ子供で、善悪の分別がついていないため。また、外敵から大好きな母セーレスを守ろうと気を張り詰めすぎて膨大なストレスを抱えていた。

 固有魔法、アクア・ブラッドの使い手。

 アクア・リキッドスーツを着用したマリアと戦い、完膚なきまでにボロボロにする。その後、懲りずに戦いを挑んでくるマリアを次第に気に入るようになり、ついに、すべての事情をスミスから聞き、自分の元に真っ先に駆けつけ抱きしめてくれたマリアに陥落。心を開くように。

 心を開いた後は、年相応の子供になり甘えん坊に。しかし見た目は超絶美女のため、周りからはハードなレズビアンカップルと思われている。

 スミスに都合のいい情報しか与えられておらず、タケルのことは自分と母を放置してた非道いやつと誤解し、襲いかかった。マリアにより父と和解し、後に母セーレスを連れて魔法世界へと帰還することを勧められている。



24、秋月楓 あきづきかえで(24)

 T163 B84 W57 H81

 銀縁眼鏡にお下げ髪をした、一見地味だが知的な女性。人工知能進化研究所において安倍川マキの秘書を担当しており、かなり優秀な人物。

 その正体はアダム・スミスの右腕的存在。当然所属もアメリカ軍であり、日本へと潜入していたスパイだった。彼女に与えられた任務は『厄災の日』を提唱する御堂財閥の動向を監視するためと、日本国内において魔力の適性のある者を調査探索するためだった。

 そんな折に、偶然成華タケルが研究所を訪ねてきてびっくり仰天。すぐさまスミスへと報告し、割りと早い段階でスミスにはタケルの帰還がバレていた。スパイ任務を兼ねているので、AAT部隊に復帰するときは顔が半分も隠れるようなバイザーを被り、マリアでさえその素顔は知らなかった。

 過去、義理の父親から性的な虐待を受けており、二度中絶している。女としての尊厳を踏みにじられる地獄のような日々を送っていたが魔力に適性があったことが幸いし、スミスによって救い出される。病院で肉体的精神的な治療を受けるもなかなか回復せず、生きた屍のような状態に。楓の心を解き放つため、スミスは超法規的な権力を駆使して彼女の父親を拘束し彼女の目の前で私刑にする。その一部始終を楓に見せつけることで、心の重荷が消えたと感じた彼女はようやく生きる意味を取り戻す。

 スミスのことを病的なまでに信奉し慕っている。彼の目的のためになら自分も、そして周りの何を犠牲にすることも厭わない。狂気の女。



25、アリスト=セレス セーレス(60~)

 魔法世界においてタケルと絆を結んだハーフエルフの少女。水の精霊セレスティアの主であり、母親的存在。スミスにより無理やり地球に連れてこられてしまい、世界から矛盾した存在として抹殺されかかっていた。体力と魔力を根こそぎ奪われ、死を待つばかりだった彼女を救うためセレスティアが顕現し、固有魔法アクア・ブラッドの中へと封印されてしまう。ボロボロだった身体は幼体化させることで健全な状態を取り戻し、差し引いた年齢はセレスティアが引き継いでいる。世界で最も安全で優しい揺りかごの中で、タケルと再会するそのときまで夢を見続けている。



26、御堂命理 みどうめいり(400)

 御堂百理の実母にして現在は戦闘からも企業経営からも足を洗っている。それでも未だに政治経済の世界で影の重鎮として恐れられ、強い発言力と影響力を有している。都内で発掘された温泉施設を丸ごと改造し、セレブリティが利用できる幽玄の歓楽街を根城にしている。政治家も頻繁に来店するため、施設の通路を歩く際はマスクで顔を隠すのがマナーになっている。

 命理がいる最奥の湯殿は男子絶対禁制。御堂の戦闘員が密かに警護を務めていて、酔っ払った勢いで冷やかしに行こうものならBANされてしまうので要注意。

 年明けに公布される『非対称戦争対テロ法案』に日本が批准するのに一役買ったらしいが……?



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スミスとタケルの魔法世界←→地球タイムライン。

軸不確定性原理とか知らないし、全部同一の時間軸で展開するよヽ(=´▽`=)ノ


①1800年台初頭、ごく普通の成年だったスミスくん突如電波を受け取る。「地球がヤバイ」そう言い残し家族と恋人を捨て、人類が強くなるための道を模索する。とりあえず人脈が命だからいろんなヒトに恩を売るよ。それが後もずーっと続く。


②20XX年、アダム・スミス、セーレスとクリスを連れて地球へ帰還。スミスの主観ではこの時間から60年後の未来で魔法世界に飛び、そこで30年を過ごしてから②にやってきたことになる。「やった、カタストロフまで20年もあるわ。魔法も研究して戦略兵器作ろう。歩兵拡張装甲作るべ! 今までたくさんのヒトに恩を売ってきたから無茶できるべ! あ、魔力に適正のある人間も探すよ! 未来のみんな、多分もう二度と会えないけど、人類滅ぼしたくないんでごめんよ!」


③20XX年、②より2年ほど経過。クリス死亡。セーレス瀕死。「やべ、こんなはずじゃなかったのに。でもセーレスの精霊がこのまま主を見殺しにするはずなかんべ」。その予想は当たり、セレスティア誕生。同時にアクア・ブラッドを精製。「この水薄めて使えば魔力がそこそこ使える人間を強化できるべ。そしたらもっとすごい歩兵拡張装甲作れる??」


④201X年、ここでようやく成華タケルが現代から突如として魔法世界へと転移。セーレスと出会い別れ、魔族種となる。タケルの主観ではここから約4ヶ月ほど後に聖都でオッドアイ、アダム・スミスと会敵。タケルは⑤へ。スミスはセーレスを連れて②の時間軸へ向かう。


⑤201X年、④の時間から五ヶ月後の世界、タケル、エアリスを連れて地球帰還を果たす。ベゴニア、カーミラ、百理と出会い、イリーナをスカウトしてセーレスを探す。


⑥202X年代、地球に三度目のカタストロフ、滅びの日が襲いかかる予定。人類は絶滅し、地上文明はリセットされる。生き残った人間は地下へともぐり、内戦、食料問題、エネルギー問題と、過酷な環境の中で徐々に数を減らしていく。ゲートで魔法世界に飛ぶ前のアダム・スミスくんはこの辺から、それらの諸問題の対応に追われながら、第2世代までの歩兵拡張装甲を開発し、人類を強化するため魔法を求めてゲートの研究を始める。


⑦206X年、爪に火を灯すような地下ぐらしも限界に。スミスは残された人類の期待を背負って魔法世界へと旅立つ。スミスが居なくなった後の人類がどうなったのかは一切が不明。番外編で執筆するかも。



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用語解説 順不同


【アクア・ブラッド】

 水の精霊セレスティアが発現させた固有魔法。通称『神の血』と呼ばれるほど希少で汎用性の高い魔法。水銀のムチのように攻撃に使用したり、蠢く大蛇のように動かし相手を絡め取ったり、変幻自在で槍にも弓にも剣にもなるし、自身の分身も作り出せる。その本来の用途は内包した時間を完全に停止させるというもの。アクア・ブラッド内に取り込んだ全ての物質の時間は停止し、あらゆる外部干渉、電磁波や光波、粒子、重力も遮断する。


【アクア・リキッド】

 アクア・ブラッドを例えるなら劇薬。そこから新薬を造り出すように生み出されたのが『アクア・リキッド』である。魔力に適合性のある人類に併せて1000分の1に希釈される。そしてそれをスーツ上に保ったまま着込めるものを『アクア・リキッドスーツ』と名付けた。着用者の生理機能、身体能力を向上させ、サーモスタット機能まで併せ持つ。マリアや心深のような魔力に適性があるもの、少しでも自身で魔力を持つものが身にまとえばたちまち超人になれる。


【歩兵拡張装甲】

 戦争の最小単位である歩兵を強化拡張するという概念から生まれた近代兵器。通称【I.E.A、Infantry Expansion Armour】

 歩兵により強い火力を、より優れた防御力を、より高い機動性を、より素早い索敵能力を兼ね揃えたスーパーソルジャーへと変身させる。以下、プロトタイプから第三世代型までを簡潔に示す。


 第一世代型I.E.A、ペルーパー(perloper/先駆者)。

 体高2,8メートル、重量1,5トン。

 イオンバッテリー駆動。

 米ロッキード・マーチンと日本の設楽重工業が共同開発をした世界初のI.E.Aであり、その存在は長年に渡り秘匿され続けてきた。

 マニピュレーターが存在せず、右腕にのみ武器の搭載が可能。

 左腕は重量バランスを取るためのカウンターウェイトしての役割しか持たないという、死重量の多い機体だった。見た目はキャタピラーの上に土管が載っかり、左右にアームが着いたものを想像して欲しい。

 後に左腕にも同じ武装を持たせるなど工夫をしていたが、バランスや反動、左右の取り扱いに混乱が見られたため、基本武装は右腕、左腕はオプションアームを取り付けるという発想が生まれ、後にも継承されていく。

 キャタピラー走行しかできない。


 第二世代型I.E.A、メランガー(merangkak/這うもの)

 体高3,1メートル、重量1,6トン。

 イオンバッテリー駆動。

 第一世代型の後継機。

 傑作と称されるほど、I.E.Aを兵器足らしめた機体。最も試作機の数が多い。

 機体の外観としては、第一世代型と大差はなく、だが、より各所が洗練され、正に軽戦車と言った風情になっている。

 本機の大きな特徴のひとつとして、多目的オプションアームと大容量バックパックマガジンが取り付けられるようになったことが上げられる。

 重装甲であり、拠点防御に適した兵器である。


 二・五世代型I.E.A、ケベラニアン(keberanian/勇気)

 体高3.6メートル、重量1,4トン。

 重イオンバッテリー駆動。

 第二世代をベースに豊富なオプションパーツを取り付けることにより、部隊運用に特化させた機体である。

 その外観はよりヒト型に近づき、ずんぐりとした胴体に、これまたずんぐりとした手足が着いている。

 主脚走行の他に足裏のキャタピラーローラーを使った走行が可能。

 近接格闘仕様では二〇ミリ腕部機関砲を。

 その他にも、三五ミリM82腕部狙撃砲を装備したマークスマン仕様や、肩部マウントに多目的グレネードランチャーを装備した支援火器タイプが存在する。


 第三世代型IEA、YF-23ブラックウィドウ(背赤後家蜘蛛)

 体高6メートル、重量1・2トン。

 重イオンコアバッテリー駆動。連続作戦行動時間 LOW50、MIL10/Hour

 日本から技術供与を受け、二・五世代を飛び越えての開発。

 天才マリア・スウ・ズムウォルトによって完成されたと言っても過言ではない。

 陸戦兵器でありながら主翼と補助翼を有する。

 両手腕を覆うほど巨大な肩部アーマーが展開式の主翼になっており、さらに中折れ式の補助翼が両脚脇に取り付けられており、同時にそれが跳躍ユニットの役割も果たす。

 左腕部に搭載された多目的ハーケンアームには超高性能モーターが内臓されており、自機を軽々と引っ張り上げることができる。

 自機よりも大きな建築物や障害物、木々などにハーケンを刺し、あるいは絡ませ、モーターによって自機を引っ張り上げることによって加速。

 さらにそのとき主翼を展開することで揚力を得、補助翼を使って方向制御、飛翔することが可能である。

 また、身体の各所に電磁投射口が存在しており、そこから照射された任意の座標にピンポイント電磁バリアを展開可能。多目的ハーケンを何もない空中に固定可能であり、また緊急の足場として方向転換、などに活用できる。

 メイン武装はM61バルカン砲(二〇ミリ)。

 多目的グレネードランチャーXM25。遮蔽物の上から炸裂するタイプ。

 さらに高度なアビオニクスとDInGO火器管制システムを搭載する。

 管制衛星ジョイントスターとリンクすることで発揮されるC4I情報処理システムなど、様々なハイテク機器をこれでもかと詰め込んでいる。


 第三世代型I.E.A、零零式ベルキーバ(Velkeeva/翅音)

 日米共同開発、米ゼネラルミランと日本の設楽重工業が開発した究極にして傑作。

 マリアの騎乗するブラック・ウィドウのプロトタイプとなった。それ以外の能力はブラック・ウィドウとほぼ同じ。一説にはこのベルキーバを素体にしてさらなる巨大拡張装甲を開発中とか……?


【G.D.S】

 グローバル・ドクターズ。非政府系医療組織。非営利団体でありその活動は皆様の募金や寄付から成り立っています。資金の独立性と透明性を保つためであり、第三者の思惑や都合によらす、必要な支援を迅速に行うことが可能です、とHPに書いてある。

 御堂財閥からも資金と人材支援が行われており、この度、十分な安全を確保した上で、内戦が続くシリア国内で医療活動を行うこととなった。

 しかしわずか一週間で現地通訳者の裏切りに遭い、テロリストに人質にされてしまう。


【クリムゾン・ジハード】

 ISISに続けとばかりに統廃合を繰り返す現地反政府組織。最終的には他国が認めざるを得ない独自の国家を形成するのが目的。そのために核武装するのが一番だと、ノースコリアより核弾頭と核ミサイルを購入しようとする。G.D.Sメンバーを人質にしたのはその第一歩。そして運悪くその第一歩目でタケルに壊滅させられてしまう。その後はアメリカ軍に拘束され、二度と日の目を見ることはなくなった。


【シリア邦人(含む)人質事件】

 非政府系医療組織、G.D.Sメンバーがシリア国内で武装勢力により拘束され、一人頭200万ドルの身代金が要求された事件。日本政府は人質救出及び交渉の全権をアメリカへと委託。アメリカ軍は新型兵器、歩兵拡張装甲を初めて投入し、人質は全員無事、武装勢力も拘束された。

 だが実際に人質を守ったのは、御堂百理の依頼を受けたタケルであり、その事実を知るのは人質となっていた当事者のみだが、アメリカ軍によって箝口令が敷かれている。真実が日の目を見る日は来るのか?


【人工知能進化研究所】

 御堂財閥が100%出資する研究施設。2045年に訪れるといわれている人工知能元年に先駆け、統計的な災害のシュミレーションを繰り返している。それもこれも御堂財閥が提唱する【滅びの日】をいち早く探知し、日本を救うためであり、所長である安倍川マキは来るはずがない、と高をくくっているが、その日は迫っていた。


【魔原子炉】

 四大魔素、エレメントを利用した原子炉。土の魔素により土台を支え、燃料フェレットから核分裂に炎の魔素による干渉制御、冷却水や高圧蒸気には水の魔素を制御媒介にし、全体をよどみ無く循環させる役割を風の魔素に一任する。燃料効率が非情によく、また低温原子炉としても活用でが期待されている。現在地球に於いてはスリーマイルの廃炉を再利用して実験中だとか……?


【DDT特殊弾頭弾】

 DDT『dichloro-diphenyl-trichloroethane』

 ジクロロジフェニルトリクロロエタンの略称。

 有機塩素系の神経毒を凝縮させた対宇宙人用殺傷兵器。

 同時に大気汚染と土壌汚染を引き起こす諸刃の刃。

 ストックホルム条約にて規制されている。

 一度使用すると24時間以内の浄化措置が必要になる。

 アダム・スミスはアクア・リキッドによる浄化を考えている。


【パラチオン特殊弾頭弾】

 パラチオン (Parathion) 、ジエチルパラチオン、ホリドールとも呼ばれる。

 DDT特殊弾頭弾よりもさらに強力な対宇宙人殺傷兵器。

 ストックホルム条約で厳しい制限がある。

 仕様には核兵器と同じ承認が必要となる。


【精霊】

 通称イマジナリー。

 だがここは地球でタケルが提唱した高次元生命体のこと。

 四大魔素、それぞれの属性において、有形で発現するものをいう。

 現在確認されているのが風の魔素の高密度集合体であるアウラ。

 そして水の魔素の高密度集合体であるセレスティア。

 そして属性を持たない、全属性の真希奈がある。

 時間と空間の概念がなく、魔素が存在する場所にならどこにでも存在し、その逆もまた然りというデタラメな存在。


【シードコア】

 賢者の石と呼ばれる人類最古のアーティファクト。

 伝説に曰く、これを触媒に何百トンの黄金かオリハルコンが数トンは精製できたり、使用した者の肉体を不老にするなど数々の逸話に事欠かない。

 人工精霊の核となり得る唯一の存在。見た目に反した広大な余剰次元を内包し、また、デジタルデータに換算して優にエクサバイトを超える情報的空間を持っている。ちなみに全世界の情報をデータに換算すると300エクサバイトあまりになる。

 御堂が持ち得た宝の中でも珠玉の逸品であり、本来は門外不出のはずだったが、言い方を変えれば使い方がわからず持て余していた。少しでも可能性のあるタケルへと託した百理は賭けに勝ったと言える。


【魔力】

 魔法世界の住人ならば約二割が、地球人類からは完全に失われてしまった生命エネルギー。無色透明で、何ものにも染まらず、如何ようにも染められる存在。これに四大魔素と【愛】【憎】の意志力を込めて魔法を発現させる。たとえ魔法発動できるほどの魔力を持たなくとも、極微量でも持っていれば、常人より身体は丈夫になり、免疫機能も上昇する。現在地球上にある全ての病理は魔力を失ったことで現れたものばかりである。


【ビートサイクルレベル】

 タケルが虚空心臓から作り出す魔力量の単位。虚空心臓から発せられる拍動の心拍数毎分100回をレベル1に定義している。レベル1を発動すると、ベゴニアから与えられた200キロのベストが羽のように軽く感じる。

 ビートサイクルレベル1をエネルギーの国際単位系に当てはめると約200メガジュールに。これは1トンの物体を上空へ20メートル運べる力に相当する。

 現在タケルが叩き出せるビートサイクルレベルは10までしか確認されていない。

 その場合のエネルギーは20億ジュール。最新の原子力発電2基を臨界運転させた出力と同程度である。


【プルートーの鎧】

 ギリシャ聖典に登場し、古来より仇討ちのための妖甲と忌み嫌われた呪いの鎧。ギリシャ政府によって厳重に保管されていたが、経済破綻したため管理が難しくなり、ローマ聖庁が一旦預かるが、その後にカーミラへとお鉢が回ってきた厄介な代物。もともとカーミラは会社の運転資金を得るために、積極的にカースアイテムを引き取っていた過去があったため、こんな事態になった。「どうせバレやしませんわ」の一言でぼろ錆の塊だった鎧は、鋳つぶされてタケルの鎧になった。


【タケル専用の鎧】通称プルートーの鎧

 たったひとつの命と引き換えに誰でも超人になることができる呪われた妖甲、プルートーの鎧。それを鋳潰し、地球金属で最も相性がよかったシルバーチタニウムと組み合わせて再構成したタケル専用の鎧。体幹の中心に漆黒のプレートがより集まり、末端に行くほど銀色になっていく。決してマーク39ではない。

 タケルの膨大な魔力を常時ドレインすることで、比類なき膂力と防御力、運動能力を齎してくれる。一説には魔力を通わせた状態の装甲強度は『ウルツァイト窒化ホウ素』の化学結合体を凌ぐと言われている。

 パンチ力 20トン

 キック力 40トン

 走力100m 3秒

 ジャンプ力 75m

 推定握力 600キロオーバー


【触媒修復】

 その名の通り、化学反応を激化させる触媒を修復や修繕に用いる方法。生物学で使われる言葉だが、この場合は金属修復にこれを用いることを指す。

 魔力が通っていない状態でぼろぼろに破壊されてしまったプルートーの鎧を修復するため、イリーナが提唱した。

 まず未知の金属組成を持つプルートー自体を解析し、その金属組成を激化させる地球上の金属、合金を一から計算しなければならない。

 もはや錬金術の分野であり、マキ博士は早々にさじを投げたが、人工精霊真希奈の量子コンピューターを凌ぐ計算速度を利用しようと提案され、その修復が夢物語でなくなりつつある。


【エレメンタル・ギャラクシー】

 魔素分子星雲。わかりやすく言うと四大魔素を魔力でコトコト煮込んだごった煮。

『炎』『水』『風』『土』四大魔素に同時に干渉し、そこに魔力を付加することで可能性の霧にした状態。炎の鮮紅、水の濃藍、風の深緑と土の真黄が渾然一体となり、あたかも銀河のような輝きを放つ。

 これを一端作ってしまえば、魔法のプロセスを大きく短縮できる。

①魔法師が炎、水、風、土、どれに干渉しようか決定。

②魔力を練りだす。

③練りだした魔力と魔素を合体。

④『愛』『憎』の意志力の元に魔法を発現させる。

 というプロセスの①~③を短縮できるため、対人魔法戦闘においては最初から相手に銃口を突きつけた状態で勝負を開始できるというチート技。

 しかもタケルはこれを大量に虚空心臓内に貯蔵し、魔力を節約したり、いちどきに大量に広範囲に展開したりもできる。


【エレメンタル・クラウド】

 魔素情報星雲。魔素分子星雲がアクティブなものだとするなら、こちらはパッシブ。四大魔素の配合比率を変えて、風と水を多めにしている。

 静かに姿なく展開することが可能で、このエレメンタル・クラウドが散布された領域内の情報は全てタケルに掌握される。視覚情報、聴覚情報、さらには散布領域内の魔素にも干渉することが可能で、例えば重火器類のガンパウダーから炎の魔素を抜き取り、不発状態にすることも可能。さらに真希奈などはこれを通信波として用いることで、相手の無線、通信、インターネット回線にまで侵入することが可能。現代戦においては非常に有効なアビリティ。


【エレメンタル・サン】

 魔素原始星。タケルが真希奈を創造する際に偶然作り出した疑似原始星。四大魔素で作り出したエレメンタル・ギャラクシーに魔力を注ぎ続け、さらに魔力容器で高圧力をかけていくことで、恒星のゆりかごを擬似的に再現。結果、エネルギー準位が跳ね上がり、疑似重力崩壊を起こし始める。この極めて危険で莫大なエネルギーをシードコアと結合させることで真希奈は誕生した。


【第七剣王異界】

 アダム・スミスが好んで使う【聖剣】の別名。人類種ヒト種族の中でも限られたものしか触れることができない資料から、どうやら聖剣とは異なる7つの世界を発現させうる力があると推測されていた。そのウチの一つが、『ゲート』の開門魔法であり、もう一つがダークエネルギーが充満する世界。それ以外は不明である。


【高次元情報生命量子結合体】

 精霊とそれを守護する主とが『愛の意志力』の元、量子的に結合した姿。

 別名『精霊の祝福』『神がかり』『神憑き』。

 だがエアリス、真希奈、セレスティアは口を揃えて『精霊合体』と命名する。

 原子核同士の結びつきである量子結合に、高次元生命である精霊が介入することで、魔法師そのものの魂と霊格を次元的に昇格させる儀式。

 本来宿主である魔法師を通してでしか、現実世界に干渉できない精霊という存在が、ダイレクトに発現し、そのスペックを遺憾なく発揮するために必要とされる超常のプロセス。

 魔法世界に於いても、ヒト種族の歴史書にはその存在すら記されておらず、魔族種の一部と長耳長命族エルフの秘伝書に、かつてそのような存在があったとしか記述されていない、忘れ去られた存在。

 魔法師を素体にして精霊が量子分解、再結合というのが正しい在り方であるが、稀に『愛の意志力』が足りなかったり、精霊側の一方的な量子結合になってしまうと、魔法師が命を落とすことになってしまう。

 魔法師が死ねば、精霊も現世に留まることはできないので、結局双方が共倒れする。が、稀に魔法師の『器』が並外れていると、精霊にカラダを乗っ取られてしまうことが考えられる。

 ※検閲対象項目。最終章をお待ち下さい。


【ケプラー452b】

 赤経『19h44m00.89s』

 赤緯『+44°16’39.2”』

 地球から1400光年の彼方に存在する未来の地球。正確には極めて地球に近似の惑星。探査衛星ケプラーが発見した『ケプラー系列惑星』のひとつであり、恒星『G型主系列星ケプラー452』の生物居住可能領域に存在する。まさに太陽と地球と同じ関係にある。ケプラー452bは大きさが地球の1.6倍、岩石と水に囲まれた惑星として生物の存在が期待されていたが、恒星ケプラー452が誕生から60億年と、太陽よりも10億年以上経過していたため、赤色巨星化しており、死の熱線が降り注ぐ地獄の釜茹で惑星と化していた。


【サランガ】

 かつて地球に存在していたアトランティスやムーを壊滅させた存在。

 アダム・スミスは西暦202Xの会敵を予想し総決戦の準備を進めている。

 ※検閲対象項目。最終章をお待ち下さい。


 追記

 シードマスターから送り込まれてきた有機生命体の掃除屋。

 ブラックホールの境界面、重力子レコードから無限に再生され続ける。

 格子状神経系をもつ昆虫の特徴を持つ。

 見た目は地球の昆虫をさらに醜悪かつ巨大にした姿かたちをしている。

 現在地球にいる昆虫たちはすべてこのサランガの因子を持つ幼体で、ブラックホールが現出し、サランガ地球に降り立つとこぞって凶暴化する。


 サランガは総じて肉食。

 有機生命体ならなんでも喰らい尽くそうとする。

 彼らの食事には二種類あり、

 本能を満たすための食事と、

 自らを増やすため、卵を生む苗床にするためという意味がある。


 地球上の昆虫とは大きさが段違いではあるが、なによりも群体で活動することが一番恐ろしい。


 カテゴリー。

 アダム・スミスは過去の記憶からサランガには三段階があることを提唱する。


 カテゴリー・ノル(1)

 地球上の昆虫や甲虫がサランガに影響され凶暴化した第一形態。

 比較的おとなしく、人目を避けて行動を取る傾向がある。

 犬や猫などの小型哺乳類を捕食し、川などの魚も捕食する。

 体躯は元の約30倍。動きが鈍いので、歩兵の重火器でも対応できる。


 カテゴリー・ティガ(2)

 重力子レコードから再生されるサランガがこれ。

 人間を捕食するのはもちろん、苗床にして卵も植え付ける。

 さらに自身にも卵を産み付け次なる進化の個体を生み出す。

 体躯は元の約100倍。

 強い外骨格、柔軟な関節、獰猛な食欲と凶暴性、繁殖能力を持ち、爆発的に増えていく。

 迫撃砲、戦車砲、I.E.A特大銃火器などでなければ対処できない。

 世代的特徴が失われ、地球の昆虫とは言い難い、違う生物になっていく。


 カテゴリー・スブルフ(3)

 カテゴリー・ティガからさらに羽化した形態。

 体躯は元の100倍以上。

 総じて有翅種(ゆうよくしゅ)となる。

 非キチン質でできた強化外軽量骨格と非タングステン繊維でできた皮膜状の翅を持ち、空を自在に飛び回る。

 機動力と防御力に優れる空飛ぶ軽量戦車。

 活動範囲が劇的に広がるため、スプルフの繁殖は人類の絶滅と同じ。

 かつてのアトランティスやムーもこれによって全滅させられた。

 第一級即時殺処分対象。


 重力子レコードから再生されたサランガはついに地球大気圏を突破し、地表へと降り立つ。

 北緯34度05分02秒、西経177度57分33秒。

 日付変更線を跨いだ東側、なんの変哲もない太平洋上のど真ん中へと降り立った。

 ※検閲対象項目。最終章をお待ち下さい。

 



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 蛇足的考察。※読み飛ばし推奨


 新たな物理学の理論に、私達のカラダの全て、物質や空間も全てはホログラムに過ぎないとする仮説が存在する。私達が三次元だと感じている現実世界は、二次元上に記録された情報をホログラムのように投影しているだけだとする大胆な仮説だ。


【宇宙ホログラム説】と呼ばれるこの仮説を裏付ける証拠がブラックホールにある。

 例えばブラックホールに対して野球ボールを投げたとする。

 光さえ脱出不可能なブラックホールに捕らわれれば、ボールは返ってこない。

 だがブラックホールの中にボールが消えてしまったとしても、ボールの【情報】はブラックホールの境界面に保存される。

 ブラックホールにボールが触れた瞬間、質量とそれに付随する情報とに分離された物体は、質量そのものはブラックホールの中心へと永遠に落ちていき、情報だけは【重力子情報】として保存されるのだ。

 シュヴァルツシルト半径の外からボールを観察した時、ボールがブラックホールの前で静止しているように見えるのは、情報分解が起こった際の残滓と考えられる。


 最終的にボールはふたつ存在する。

 ブラックホールに吸い込まれた三次元情報のボールと、境界面に保存された二次元情報のボール。

 理論上はブラックホールの境界面情報を読み取ることによって、内部情報を復元することが可能になる。

 そして今私達がいる世界は、そんな風にブラックホールから復元され、投影された世界なのかもしれない。

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