第6-2話 ミックスと純血と風紀委員
「燐里、バッグで防げ」
針田の命令が聞こえた時、マドゥィナが口を開いた。
「!」
ぱっかりと開いたドラゴンの口から炎が現れ、連行しようとする風紀委員たちに向かうが、針田の指示に従った燐里がスクールバッグを盾のように向ける。
『吸収 / レベル5』
スクールバッグにぶら下がっていたハリネズミのぬいぐるみから、魔方陣が現れるのと同時に炎が到達する。
スクールバッグ前に現れた魔方陣に吸収され、誰1人被害にあうことはなかった。
「ふん、うっとうしい灰色め」
炎ブレスを止めたマドゥィナはハリネズミのぬいぐるみを睨む頃、突然の炎に周囲がざわめき始めた。
「燐里、スマホから半径5メートルに『結界/レベル5』をかけてから『ストップ/レベル2』を
静馬は変身してから、コールド系の魔法とイメージしておけ。
対策会議の後、メールで送った魔法と効果の一覧に目を通したよな」
「通したけれど…この状態で魔法少女に?」
「野次馬は、後で魔法に関しての記憶消しする」
静馬は、まだ周りの視線が気になるものの、スクールバッグから棒を取り出す中、燐里は戸惑いの声をあげた。
「ちょっと針田、ストップの魔法って毎回払いのくせにレベル2でも分身より高いんだよ」
「俺のスマホを使え。カード決済になっているから、後で経費に落とす。
なんせ今回は、悪名高きボーバルト家のマドゥィナ嬢がご乱心だからな」
「ふん。時空魔法代ぐらいポケットマネーで払うわ。用事さえ済ませれば」
マドウィナの視線が静馬に向く。
「欠片で魔王族のご機嫌とりか?
この前に起きたダドス街の暴動、裏で操ってたと噂になっているからな。ボーバルト家も落ちたものだ」
ドラゴンの刺すような視線が、悪態をつく かわいいぬいぐるみに向かう。
「ふん。灰色もそんなガセネタを信じるとは、それこそ落ちたものよ。そんな野蛮なこと、高貴なるボーバルト家がするわけもない。
私は、魔王族の欠片をコレクションにしたいだけよ」
「学校かパーティーで自慢するためだけに欲しいとは。いかにも成金一族の令嬢がすることだな」
「灰色のくせに生意気な口を、今こそ…」
「ねぇ、針田。ロック解除のパスワードを教えて」
ピリピリした空気を燐里が一気に崩した。
「円周率の小数点以下15番目から4つ」
「そんなの知らないよ」
「最低20は暗記って言ったはずだが」
「今度、覚える」
「明日までだ」
「…。いいから、教えてよ。今は、そんな状況じゃないんだよ」
「…3238」
「奇跡と希望の魔王族石。魔法少女ましず、ただいま、参上」
その横で黒髪をさらりとなびかせた美少女が現れた。
「ましずって…それにそのセリフにポーズまで。静馬いつの間に」
「昨日、有名な魔法少女の名言集を検索したの。あ、今は『ましず』だから」
「言葉づかいまで」
さらに魔法少女に変身した静馬に、周囲がざわめきの声を上げてきた。
侮辱された上、自分をないがしろにされたプライドも高いボーバルト家のご令嬢は、気分を害した。
『炎/レベル5』
口から放たれた炎は風紀委員たちを狙った炎とは明らかに威力が違った。
『魔法吸収/レベル5』
『氷壁/レベル5』
針田の魔法吸収と魔法少女 ましず の氷の壁により被害はなかったが、周囲のざわめきが悲鳴に変わる。
「雑魚どもめ。この高貴なるボーバルト家を侮辱するとは」
「燐里、まだか?」
「またも、無視して」
針田の声に燐里は、スマホから結果を張り、レベル2のストップ、魔力を持たない人間の時間を一時的に止めた。周囲からざわめきや悲鳴が無音に変わる。
それから変身解除して魔法少女りんり に姿を変え、針田の返答とした。
それとほぼ同時にマドゥィナが口を開ける。
『氷塊/レベル3』
マドゥィナの様子を見ていた ましず は氷の塊を、ぱっくり開けたマドゥィナの口めがげて飛ばす。
ましず は大きな氷の塊を口に放り込まれて、動きを封じられる間抜けなドラゴンを予想したが、マドゥィナは飛び込んできた氷を、放出しようとした炎で溶かし、口を閉じた。
じゅっと水蒸気が口周りで起きる。
「どいつもこいつも…」
しゃべる間もマドゥィナの口周りから黒煙と炎が見え隠れする。逆鱗に触れたドラゴン状態になっていた。
「全員、黒こげにしたる」
「やれやれ気の短いご令嬢だな」
「怒らせたのは針田でしょ」
「本当の事を言ったまでだ」
さすがにマドゥィナ嬢に聞こえない音量に下げてから、針田は今の状況を口にした。
「さすがにマズいな」
「え、今さら?」
「野次馬の人間たちの記憶封じ処理をしなければならないから、動けないように施したが、今度はマドゥィナから守らなければならない」
りんり は周囲を確認する。登校時間の校門前、野次馬の数は十数人ぐらいだろうか、マドゥィナから離れているとはいえ、あちこちに散らばっている。
「俺は人間たちを守るから、2人で考えて何とかしてくれ」
「え、2人で考えろって、針田、ちょっと待って」
スクールバッグから、肩のリサイズのハリネズミに戻った針田は、りんりの静止を無視して飛んでいった。
「……」
不安そうに顔を見合わせる2人に、針田がさらに問題を口にした。
「そうそう、ボーバルト家は愛人の子供でもレベル6越えだからな」
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