8-20話 チェイス ※たかこ視点
──さーて、三十路のお姉さんによるお仕置きの時間よ。
因縁の再開を果たしたRARUと戦う決心をした桜井さんとは一旦離れ、残った4人は煙幕を使って近場へ逃げた愛宕の部下達を追い続けていた。
どうせ今回も卑怯な手を使うのはあらかじめわかってたけど、小金くんを騙す作戦に出たことだけは誉めてやるわ。
ま、今の私からしたらすぐにあいつらを捕まえた後、影地くんと合流ではなく
「あの工作員達やけに頭脳的なことをしてくれたわね、同じ隊員の私がわからなかったのはちょっと恥ずかしいわ。毅が変装であることを見抜いたたかこ先輩の現役後輩達の方が見る目があるわね」
「りりっち……そう言うあなたが1番驚いてたよね。元刑事なのだから、そのような目はあなたにもあるでしょ」
「実は私にはそんな能力持ってなくて……えへ」
えへじゃないわよ、少し可愛い顔しちゃっても私がなんか許さないわ。刑事としての経験を活かすべく、人を欺ける洞察力はあるものだと思ってたわ。
それでも、結果的に考えると変装を見抜く達人の天須さん、RARUに恨みを持つ桜井さんがいただけで助かったわ。人のことを言える立場ではないけど、私と芳江姉さんだって本物の小金くんだと完全に思い込んでたわ。
「とはいっても本当にいいのですかたかこ先輩? あの子1人だけで変装魔・RARUを相手にするのは危険では?」
「復讐を抱く桜井さんの方から強気でやりたいと言い出したのだから、心配することはないわよ」
「大丈夫です梨理亜さん……桜井さんはあなたが思っている以上に高い潜在能力の持ち主ですので、強さは私が保証します」
そういえば、大学時代もりりっちは心配性なところがあったわね……それが災いとなったことも何回もあった覚えがあるわ。
それに、クラスメイトの天須さんも言ってるわけだし、私達はあのリボンでRARUを縛ってくれることを信じているはず。
「あらあら皆さん、他人の心配よりうちらの心配をした方が今は良いのではないでしょうか?」
桜井さんの心配も大事だけど、たしかに今は芳江姉さんの言う通りだわ。私達『わだつみ』だって任務のつもりで木更津に来てるわけだし、全員がいい結果を成し遂げるべきだったわね。
「へへっ、この優秀な俺達を捕まえられるかな?」
「なーにが優秀よ落ちこぼれ達!」
接近戦に持ち込めば一気に優位に立つのは違いないけど、自称優秀のあいつらとの距離はことごとく縮まないわ。例え落ちこぼれであっても、体力があることだけ私は認めましょうかね。
「ここは私だけ突発に攻めたいんだけど……」
私自体は普段通り動きやすいジャージで来たけど、問題は残りの3人だわ。露出度の高いドレスとハイヒール着用のりりっち、任務なのに何故か学校のブレザー制服の天須さん、おそらく1番動きに縁の遠いだろう着物姿の芳江姉さん。
服装だけなら全力で走るには無理そうだし、戦うこと自体適した服装だと私には感じないわ。かといって、服装の判断だけで私だけ突っ込んでみんなと離ればなれになることはしたくない。
「他にももう1つ気になる点があるわ」
ずっと追い続けてからそこまで頭になかったけど、あいつら高速道路沿いに向かってるわね。これだと、影地君と小金くんがいる金田さざなみ公園まで遠ざかってしまったわ。
「なんとしてもあいつらを……え?」
「待ってくださいよたかこ先輩……どういうことなのよ」
私だけ先頭に立とうとした瞬間、通りすがった駐車場であいつらがヤンキー座りをしながらガンつけて待機していた。こんなこと大人の私達にやるなんて、やっぱり知能は中学生並みなの?
「へへへっ、まだまだお楽しみはこれからだぜおばさん達」
「俺達第1部隊が虹髑髏最強の精鋭部隊であることを貴様らにわからせてやる」
「あらそう、やられたいなら先に言ってくれればこっちとしてもありがたいんだけど」
何がお楽しみはこれからですって、愛宕とRARU頼りで逃げようとしたくせによくそんなこと言えるわね。せっかくだから、その汚れた頭を掃除しようかしら。
「ちょっとたかこ!? ここは少し作戦を」
「姉さんごめん、私にやらせて」
まだ私は今日まともに戦ってないし、芳江姉さんの忠告を無視するのも無理はない。私だって、れっきとした海の一族の末裔なのだから。それと、あいつらの暑苦しい挑発を見てもう我慢の限界ときたわけだし。
「仕方ないわねたかこ……ピンチになればうちらも駆けつけますからね」
「柳先生……頼りにしてます」
「たかこ先輩、やっぱりあなたは最高の先輩です!」
どうやら、芳江姉さんからも許しが出たみたいだし、りりっちや天須さんもこの戦いに応援している。強い気持ちが出たせいで、以前影地くんや天須さんと戦ったときみたいにジャージを芳江姉さんに向かって強く投げつけた。
いくら体育教師とはいえど、頭がいいはずの教師が考えることより先に行動しちゃったわね。せっかくだから私の衰えしらずのスピードで、口先だけのあいつらより速いことをわからせてやるわ。
「あんた達も愛宕と同じ許さない人種よ、私の美しい技を堪能しなさい!」
これは合同任務なのに身勝手な単独行動は基本的に許されないが、私の強いプライドが許さないと心の中で叫んでいる。しかし、その強いプライドが引き金であることとあいつらの思惑だったことを──
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次回もたかこ視点です。しばらくモチベーションの関係でペースが落ちていますが、上昇したら以前までのペースでまたあげます。
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