7-10話 菜瑠美の届かぬ願い

 ──真実を聞かないとなれば、光と闇をぶつけるしかないだろう。


 塚田と牛島の喧嘩を止めるため、俺達は牛島に殺されかけたカズキと合流してから東船橋の公園へと到着した。

 そこには、殺意の沸いた牛島が塚田にとどめを刺す瞬間であった。俺は喧嘩を止めに行ったが、牛島は俺が藤野を拉致したという意味のわからないことを言っており、標的を塚田から俺へと変えようとする。


「てめぇの方から来てくれるのは助かるねぇ影地令、今すぐてめぇを殺す!」

「待ってくれ牛島、俺の話を聞いてくれ!」

「拉致犯の言うことを聞く俺だと思うか! あぁん?」


 駄目だ、今の牛島は理由なく俺を拉致犯扱いしてくる。一体どうやって牛島へ誤解を解かすべきなんだ?


「そこにいる塚田達は今日見逃してやってもいいぞ、俺も親切なものだねぇ」

「んだとぉ? 俺はお前なんかに殺されたくないわ」


 4だと……こいつの現状を見て本当に殺す気でいるから、身の程知らずだとわからせて捕まえた方がよさそうだ。


「おい塚田大丈夫か? またお前無茶しやがって」

「うるせぇな桜井、俺様はただソードツインズが心配しただけなんだ」

「今のあんたの行動はバカだねぇ、こりゃ後でたかこ先生に怒られるな」


 塚田はソードツインズの捜索という私情な理由で学校サボって早退している。桜井さんの言う通り、後日柳先生から説教は間違いないな。

 すると、桜井さんは昔と比べて変わり果てた牛島の顔を見ながら、呆れた顔をして話しかける。


「ほんと、世話のかける奴だよ牛島! あんたが今していることがはわかっているのかい?」

「そんなことわかってる! ミナミ、てめぇも影地令や死にかけたバカを援護するのか。いずれ、てめぇも殺すから覚悟しな」

「それはそうかい……あいにく、俺は今ここで3、これは藤野も同様だ」

「俺からも上等だ、てめぇも今は拉致犯の仲間だからな」


 桜井さんの唐突なソードツインズとの縁切り宣言、そりゃ牛島の態度を見たらそうなるに聞いてる。むしろ、海神中央高校の生徒誰もが牛島を援護しようとする人なんているはずがない。


「令、戻ってきたばかりで尚更だけど、一旦ここから離れる。牛島が怖すぎて仕方ないからな」

「俺の仇は取ってくれよ影地!」

「影地、全てはあんたに託した」

「ああ、牛島は俺が止める」


 カズキと塚田と桜井さんは凶悪な牛島を恐れ入れて公園から出ようとする、牛島の標的は俺であることと後日に殺すと宣言してるしな。


「邪魔者は去ったし、覚悟しな」

「俺はお前に殺されはしない」


 牛島は雷の能力者であることは事前から知っているがが、ボルト・ファング以外の技も多数所持しているのに違いない。カズキ達も公園から立ち去ったし、存分に『光の力』を使えることは俺にとっては好都合だ。


「……」


 ただ、菜瑠美だけはまだ公園に居続けていた。何故だ……今の牛島は危険人物だし、強力な闇を持つ菜瑠美でも太刀打ちできそうにない。

 すると、菜瑠美は俺と牛島が戦おうというのに間に入ろうとしてきている。何がしたいんだ菜瑠美?


「おい菜瑠美?」

「菜瑠美ちゃん!?」

「牛島さん! どうしてあなたはつかさを殺そうとするのですか?」


 なんて予想外な行動だよ、菜瑠美が俺に手を出すなと言わんばかりに、牛島の前に両手を広げなら割って入ってきた。


「牛島さんお願いです! つかさを殺すのをやめてください」

「何故だ!?」


 このタイミングで菜瑠美が牛島に説得しようと試みる。菜瑠美が昨日の藤野との行動を喋るのであるなら、牛島もきっとわかっているだろう。


「私は昨日の放課後……牛島さんが補習を受けている間に、藤野さんが私と戦いたいと申して私はそのまま挑みました。結果は引き分けでしたが、藤野さんは私との戦いを満足な表情をしながら牛島さんと会いにいくつもりでした」

「ほう」

「その後、私はつかさと一緒に今日の朝までずっとつかさの家にいました。外出してないというアリバイがある以上、つかさが藤野さんを拉致することはできないはずです」


 よく言ってくれたぞ菜瑠美、今の言葉が真実なんだよ牛島。昨日家に戻って以降、翌日の学校まで一歩も外にふらついてないんでね。

 てか、カズキ達がここから出ていかなければ言えたものだよな菜瑠美も。これで、牛島の気持ちも変わるのか?


「それが ボルト・ファング!」

「きゃっ……どうしてですか、牛島さん?」


 なんという奴だよ……菜瑠美の必死の説得も、牛島の声は届くことない上にボルト・ファングで菜瑠美に襲いかかる。

 菜瑠美は間一髪かわすことができたが、もしも菜瑠美の美しい顔に傷をつけたらどうするんだ?


「牛島! お前菜瑠美に何しやがる?」

「俺は影地令を援護する奴は


 まじでふざけるなよ……俺や菜瑠美の聞く耳すら持たないで俺をいつまでも拉致犯扱い。しかも、牛島は菜瑠美のファンクラブ会員であるはずだろ? 平気で技を仕掛ける神経がわからない。

 恋人に対して歯向かう時点で牛島はますますシャイン死ねだが、菜瑠美も怒りが貯まったことには違いない。


「そんな……牛島さん、私の言っていることは全て本当のことです!」

「黙れ拉致犯の仲間が! もしかすると、影地令と一緒にいた水色フードの正体は菜瑠美ちゃんじゃねぇのか!?」

「え? 水色フード……意味がわかりません」


 そもそも、俺の周りに水色フードを被った知り合いなんていないんだよな、菜瑠美だって被ろうともしない。牛島が憎む理由がますますわからなくなってきたぜ。


「だったらさ、菜瑠美ちゃんとも戦いたかったし、てめぇらまとめてかかって来やがれよ! ハンデってわけじゃねぇが、俺は藤野の亡霊を背負って戦うからよ」


 牛島の奴、ここにきて1人で俺と菜瑠美に対抗しようと言いやがった、まとめて戦おうなんていかにも牛島らしいな。

 それと、何が藤野の亡霊だと? まだ死んでもないのに勝手に亡霊と言うのは藤野に対して失礼すぎないか、本当に藤野の盟友なのか疑いたくなるな。


「つかさ……先程の牛島さんの行動を絶対に許さないと心に決めました。私は……牛島さんを私の闇の餌食にしたいと思います」

「そうだな。真実を無視するなんて、牛島はシャイン死ねな奴だ」


 俺と菜瑠美の思いを秘め、ここは以前練習した連携技を見せつけるしかないようだ。盟友の絆より、恋人の絆の方が上であることを証明してやる。


「さあててめぇら、死ぬ覚悟は出来たか?」

「私はあなたが先程した行為、許す気になりません……牛島さんを止めましょう……つかさ」

「ああ、俺の光と菜瑠美の闇で牛島のしていることが偽りであることをわからせてやる」


 藤野、もしまだ生きていたらお前に質問したいことがある。この牛島の許されざる行動を見て庇うか? それとも叱るか?──

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