6-14話(六章最終話) 奴は偽りの英雄 ※牛島視点
──英雄と謳われる奴があんな屑野郎とは思わなかった。
2019年5月23日16時05分
あまりに体が鈍っていた俺は、今日こそ藤野には内緒で影地令に接触しようと試みる。しかし、国語の担任である運河に中間試験で国語を赤点を取った以上、放課後に補習を受けろと言われてしまう。
「なんでこの俺が補習なんて受けないといけねーんだよ」
はっきり言って中間試験だけは悪かっただけだろ? しかも、最初の授業に受けた小テストではまあまあな点だったじゃないか、見逃してもよかったほどだぜ。
「牛島、お前も補習受ける程のバカだったとはな!」
「うるせぇぞ塚田! てめぇが言うんじゃねー」
よりによって隣にはうざってぇ塚田もいるし、まじで最低な時間になってしまったな。こいつは俺以上に成績は悪そうだが、こんなんで争ってたら藤野も呆れること違いないな。
こんな時に悪人が暴れてるとかの一報が入ってこねーかな、そしたら俺は運河も無視してすぐに駆けつけることしか頭にない。
「塚田、やっぱりてめぇ目障りだ」
「おっ? やるか藤野!?」
調子こいてんじゃねーぞ塚田、補習の最中なのに関わらず俺に顔芸しやがって。あいつが同級生じゃなかったら、悪人扱いして捕まえるよう説得してやる。
「うるさいぞ、塚田と牛島。お前ら試験結果も悪かった癖に、補習でも騒ぐのか?」
しかし、運河から注意が入った。おいおい、悪いのは俺に挑発をした塚田だろ? 俺は何も悪くねーぞ?
「悪いが私の気が変わった、塚田と牛島以外の生徒は後日補習を行う。塚田のみこの後私と残れ、牛島は明日個別指導だ」
「は? なんでだよ」
「俺まで巻き沿いになることないだろ?」
「お前ら反省すらしてないだろ? 7組の生徒でもやらないぞ、むしろ私に感謝することだな」
個別指導とかマジでふざけんなよ! 今日は塚田だからまあ少し心に許しが出たけど、明日は学校サボる案も出てきたぞ。
俺はどうしても勉強が苦手だ、中間試験2位の藤野と比べられても仕方ないぜ。むしろ、高校生活は自由に過ごしながら悪人を捕まえるだけで満足だ。
「鮫バカ野郎がみっちり受ける間、俺は補習中に通知があった藤野と合流するか」
教室から出ていくことを余儀なくされた俺は、藤野からの通知があったので確認した。“諸事情があって理科室にいられなくなった、悪いが津田沼のいつもの場所まで来い“……か。
とりあえず津田沼に向かうか、そろそろ藤野に今後のソードツインズの予定について話そう。もっとも、今は影地令より仕留めたい奴が真っ先に浮かんだがな。
◇◆◇
「明日どうすっかなー」
津田沼に移動する間、明日の行動を考えていた。補習は嫌だが、鮫バカ野郎との因縁にケリを付けたいし。あいつはたしかに悪人ではないが、本当に気に入らない。
1年前、塚田は強者を探しに俺達を訪れた。当時は藤野が塚田と戦ったが、藤野とほぼ互角で戦える奴としか見ていなかった。
俺は体格差であるなら塚田には絶対負けない、そう確信している。ただし、学力もライバル関係になるとは予想外だ。
「落とし物……ん、これは藤野の」
待ち合わせ場所も近い中、俺は落とし物を発見した。これは藤野が大事にしていたネックレス……まさか、藤野の身に何かが起きたのか?
海神中央高校のミスターパーフェクトと呼ばれる藤野が事件に巻き込まれる……そんなことは絶対ありえない。
「藤野ぉ! あれは影地令……それに変な奴もいる」
待ち合わせ場所に着いたらそこには影地令の後ろ姿があった、ここに影地令もいたなんて意外だぜ。
影地令以外にももう1人怪しげな人物が倒れていた藤野を担いでいた。あの野郎共、藤野をどうするつもりなんだ? 影地令は先に藤野を厄介者だと思って襲いに来たのかよ?
「てめぇら! 藤野を離せーー!!」
俺はすぐさま影地令に殴りかかろうとするが、時すでに遅かった。藤野は俺の声すら届かず、奴らは藤野をさらって闇の中へと消え去った。
「藤野おおおおおおお!」
うるさいと言われてもどうでもいい、俺はとにかく叫んだ。イケメンで頭もよくて喧嘩も強い藤野が影地令に敗れた上に拐われた……それだけで俺は頭が真っ白になり、奴に激しい怒りを覚える。
「ぜってぇ……ぜってぇ……てめぇらだけは絶対に許せねぇ!」
くそったれ、影地令がこんな汚い奴だとは思わなかった。俺が影地令を標的にした腹いせで、悪そうな奴と手を組んで藤野を襲うなんてよ。
もう1人は何者だ……? 最悪菜瑠美ちゃんという可能性もあるが、今は置いとこう。1人誰だかわかった以上、まずはそいつからだ。
「俺からすれば奴は偽りの英雄だ」
何が悪党共から海神中央高校を救った英雄だよ? 笑わせんじゃねー、そう言われている癖に影で悪事に加担するゴミ野郎だとはな。
奴の目的は知らんが悪人であることは事実だ、俺が藤野を拐ったというのをこの目で見たんだからな!
「影地令、奴は俺が殺す!」
藤野のいない生活なんて俺からしたらありえない、今後の学校のことなどどうでもいい。俺は奴への敵討ちをすべく、孤独に復讐することを決意する。
今の俺のただ1つのミッション……俺は他人の手など一切借りずに影地令をこの世から始末する、その後に藤野の元へ会いに行くことだ──
第六章・ソードツインズ 完
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