5-16話 闇の天罰 ※菜瑠美視点

 ──私はもう迷わない、学校の関係者や愛する恋人のためにも。


 覚醒した私の闇……まだまだ未知数なところがありますが、私を狙うためだけに海神中央高校を襲撃した因縁の敵・アナーロの非道でわいせつな行為により目覚めました。

 闇に染まったその『力』で、アナーロの部下である未衣と麻衣の姉妹、入学式前から私を付け狙っていたファルとデーバ。私はすでに彼ら虹髑髏4人の工作員を闇の餌食にさせました。


「残りはアナーロだけになりましたが、やはり七色だけあって油断禁物でした」


 ただし、アナーロも自身の持つ薔薇で全身を植物と化した姿へと変えました。気持ち悪さも変わらずですが、アナーロのプラント・ハントの触手によって、緊縛されたまま気絶してしまいました。

 

「苦しい……私の強さは、こんなものなの……」


 アナーロを倒す鍵であった覚醒も消えてしまい、私は万事休すな状態です。最後までアナーロを侮っていた私が間違いでした。

 こんなときに限って、己の弱さを認めそうになりました。目一杯私を苦しい思いをさせてから、虹髑髏のアジトに連れていかれるの……。

 

「令和は私にとって良い時代になる……最初はそう思ってました」


 平成から令和になる挾間に、私は駄目元半分で命の恩人であるつかさに告白しました。偶然にもその恋は両想いであり、つかさとは恋人関係として令和を過ごすことになりました。

 令和を迎えた翌日のことです。私とつかさは千葉市でデートをするはずでしたが、レイラが絡んだ事件に遭遇。レイラを今度こそ捕まえたいつかさの強い気持ちに私も同感であったので、それに了承しました。


「しかし、それが悪夢の序章に過ぎませんでした」


 ところが、私とつかさを後ろから付けてきたアナーロと遭遇。この男は、千葉県で数件発生している連続少女襲撃事件の犯人でもありました。

 私のことを菜瑠美たんと呼び、わいせつ行為を何度も仕掛けてくる最低な男でした。私にとっては最悪の幕開けで令和を迎え、私の心に深い傷を残したほどです。


「どうして……私の頭からアナーロが離れられないの?」


 遭遇した翌日から、私の夢の中にアナーロが出ることばかり続いており、今日まで悪夢ばかり見続けていました。

 夢だけではありません。学校が再開した3日間の授業中においても、心の中にアナーロが現れて授業に集中しなかった時もあります。


「怖じけたくない……私には支えてくれる人が校内にいます」


 柳先生……大和田先輩……1年7組のクラスメイトと運河先生……そしてつかさ……私はアナーロと違って、。その人達の分まで、私は目覚めなければいけない。


「つかさとの出逢いや虹髑髏の存在を知ってちょうど1ヶ月、私が闇の能力者としての真価が試される時が来たようです。私は負けない!」


 私は目を開き、もう1度覚醒できることを信じました。どうせ、アナーロがこっちに来るのだから、縛られながらも精神を統一しました。


「おやおや菜瑠美たん、お目覚めかい?」

「許さない……


 私は少しづつ怒りを見せ、再び私の体全体が紫色に染まりはじめました。私はまた覚醒できそうですし、これでアナーロを倒す覚悟が整えました。


「うぉぉぉおおお!」

「なっ!?」


 私は今までにない大きな唸り声をあげながら、私の中に眠る『闇の力』を最大限まで発揮させました。

 すると、私をずっと縛っていた触手にも異変がおきました。どうやら、この闇がプラント・ハントごとダメージを与えているようですね。


「私の叫びだけで……アナーロごと影響に与えるなんて」


 今の私は怖いものなんて何もありません。プラント・ハントごと受けたアナーロにも、怯みがでました。


「なによなによ菜瑠美たん、そんなに怒る必要ないでしょ!」

「あなたはなにもわかっていませんね……私がどうして覚醒したことを」


 私が怒っている理由がわからないなんて、本当に愚か者ですね。触手から解放され、強大な闇を抱えてる私が今やるべきことはただ1つ……。


「ええい、プラント・ハントがなくなったからって、私にはまだ薔薇があるわよ」

「それが、どうしたというのですか?」


 薔薇なんて今の私には怖くない、もうのですから。覚悟しなさい、アナーロ!


「私はこれから使う技で、あなたを永遠の闇へと閉じ込めます! 闇のダーク天罰パニッシュ!」


 私はアナーロに向けて両手を大きく広げ、両手から私と同程度の身長の高さはある紫色の球状をした闇の塊が現れました。

 闇の天罰は、『わだつみ』のメンバーも知らない独自に練習した新たな技。アナーロには、技名に偽りのない天罰を与えます。


「これが菜瑠美の本気……」

「やっちゃいなさい、天須さん!」

「アナーロ……私からの天罰を受けなさい!」


 いくら私の体力に限界がきていても、最後まで諦めたくはありません。怒りを私の強いエネルギーに変えたといっていいでしょう。

 つかさ、柳先生……見ていてください。これが、私の全力です!


「やぁああああ!」


 どうしてでしょう……練習中は扱えることが難しいと思っていたのに、覚醒したことによって難なく使いこなせるのは私も驚きです。これで、最後の押しに入ります。


「うわぁあああー、そんな! この美しい私の顔が、菜瑠美たんに汚くされるなんてー」

「はぁ……はぁ……」


 闇の天罰を受けたアナーロは派手な服装も破けており、よつんばいになりながら倒れそうになりました。


「でも……その怒った表情の菜瑠美たんもかわいいわね」

「私はまだ、あなたへの怒りはおさまっていません。今度こそ、あなたを私の深い闇の中に閉じこめさせてもらいます。やっ!」


 まだ懲りてないようですね。仕方ない、闇のダークストリングを使ってアナーロの身動きを封じさせましょう。アナーロ……あなたは私を怒らせたのにもほどがあります。


「はぁっ、すぅっ……すぅっ……」

「これで……アナーロとの関係に終止符を打てました」

 

 最後の足掻きを見せずに、アナーロを闇の糸で縛り付けることができました。アナーロも元の姿に戻ったまま縛られたため、あとは部下4人と共に身柄を警察に渡せば終わりでしょう。


「今まであなたがやってきた行為、地獄の底で反省していなさい」


 今回の一連の騒動に関しては私が悪いわけではありません、私の逆鱗に触れたアナーロがいけないのです。

 それと、アナーロは千葉県でしばらく続いていた連続少女襲撃事件の犯人。凶悪犯を捕まえただけでも、千葉県にまた平和が持たれるでしょう。


「こんな汚い薔薇……やぁっ!」


 ついでなのですが、闇の糸で縛られる前に落としていったアナーロの自慢の薔薇、これを私の闇の手で粉々にさせました。

 こんな厄介で汚らわしいもの、あってはいけないものです。


「菜瑠美! 君はすごい能力者だ」

「天須さん、あなたの中に隠された本当の『力』があったなんて」

「つかさ、柳先生……私、勝てました……アナーロに」


 戦いを終え、つかさや柳先生が疲れ果ててる私の元へと来ます。今は嬉しい気持ちもありますが、『闇の力』を全て使い果たしたので疲労も相当なものです。


「つかさ、私の今の目標は果たせました……少し休ませてください……」

「菜瑠美……ああ」


 アナーロに対する怒りの理由の1つに、私にはつかさという大切な恋人の存在がいます。つかさの支えさえなければ、ここまでの『力』は発揮できなかったはずです。


……とんでもないものを私は手にいれました」


 本当にアナーロ最低な男でした。令和の始まりから因縁が続いて9日経ち、呪縛からも解かれました。

 私が今日2度も渡って覚醒した真の闇……自身が使っていても恐ろしいものでした。今後も使うことはあるかもしれませんが、今私に言えることはただ1つ。──



──────────



 菜瑠美VSアナーロの最終決戦、すごく苦労しました。菜瑠美の葛藤も描けたと思います。

 五章ももうすぐ終わりです、次回からまた令視点に戻ります。

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