4-11話 相手が教師であろうと
──これは真剣勝負だ、いくら相手が学校の担任でもお構いなしに戦う。
俺と菜瑠美対柳先生と大和田さとの手合わせは、緊迫した雰囲気で始まろうとしている。チーム内の手合わせは初めてだから、これが記念すべき戦いになるだろう。
元々先月の内に手合わせをするつもりだった。だが、その間に七色の刺客2人が俺と菜瑠美に現れて共に苦しめられた。
奴らへの怒りと苦しみは今でも鮮明にある、今日は仮想虹髑髏だと思って俺は挑むつもりだ。
「それでは、はじめ」
芳江さんの合図により、4人の中で誰か1人が倒れるまでのサバイバルが始まった。時間無制限とはいえ、なるべく短期決戦で勝負をつけたいと思っていた。
「何を仕掛ける……柳先生」
菜瑠美の作戦を考えると、俺は柳先生の動きを見る必要がある。一方の大和田さんは今は無視というわけにはいかないが、十分警戒が必要だ。
手合わせが始まって何秒か過ぎたが、いつ攻めて来るんだ? 俺は場内をうろつくか。
「私から攻めさせてもらうわよ、天須さん」
「狙いは……私?」
柳先生が先頭に立ち、体全体に水をまとったような突進技を仕掛けようとする。やや小柄な柳先生とは思えない、重く感じる一撃が菜瑠美を襲う。
「そうはさせませんよ」
「なっ、影地くん? 私のウォーター・ラッシングを邪魔するんて」
俺と菜瑠美の作戦とは正反対に、柳先生は菜瑠美を相手にしたいようだな。そういうわけにはいかない。
俺が柳先生の相手の役割なのだから、ここは菜瑠美と柳先生の間に
「いきなり大技を使うとは……」
柳先生が見せた2つ目の技であるウォーター・ラッシングは、技の多少の溜めはあるものの水しぶきが俺と菜瑠美にかかっていた。
もしこれが菜瑠美にフルパワーで喰らっていたら、それだけで倒れる程強力な技だ。割り込んで正解だった。
「つかさ、さすが私の今のパートナーです」
この時、菜瑠美は恋人ではなくパートナーと言ってたな。どうやら菜瑠美も、今の戦う時や学校にいる時と俺の2人でいる時の言葉選びはできてるようだな。
「作戦通りでいこう、菜瑠美」
「ふーん、影地くんは私と相手したいようね。かかってきなさい」
本当に対戦したいのは大和田さんなんだけど、菜瑠美が考えた作戦だから今は指示で動いてるだけなんだよな。
「令くんが入ってくるなら、俺も動くか。狙いは菜瑠美ちゃんだな」
1人だけじっくり眺めていた大和田さんは、柳先生と交戦中となった俺を狙わずに菜瑠美の方向へ行った。
「菜瑠美ちゃんが海神中央高校1の美少女にして人気者。本当は君の顔を傷つけたくないが、これは戦いだ。容赦なく行くぞ!」
「私もあなたが副会長であること関係なく戦います」
菜瑠美と大和田さんが交戦したか。しばらく俺は柳先生と戦いながら、菜瑠美の秘策に乗り込むか。
「これならどうだ、
柳先生が開幕から全力で自慢の技を使ったのだから、俺もすぐ仕掛けるか。
この技を使うのは久しぶりだが、球体も以前より大きくなっている。これなら、一気にダメージを柳先生に与えられそうだ。
「こっちよ、影地くん。ウォーター・ラッシング!」
「え? しまった!」
くそっ、柳先生は俺の思った以上にスピードがある。いとも簡単に閃光球体を交わしながらウォーター・ラッシングを繰り出した。
とても三十路には感じられない機敏な動きだ、伊達に体育教師をやっているだけあるな。
「はぁっはぁっ」
「間一髪で避けたかもしれないけど、この技になったらそうはいかないよ」
両手を十字にした……これはラフ・ウォーターの構えだ。しかし、俺はレイラのように跳ね返すような技を持っていない……どうするべきか?
でもラフ・ウォーターには、出す隙がある上に発生速度が遅い。ここは俺もスピードで応戦だ。
「では、フルパワーのラフ・ウォーターを受けなさい!」
「今だ、俺の技を受けてみてください!
「え? あなたいつの間に」
俺はラフ・ウォーターを出す前に、柳先生の方向に大きく跳び移って雷光十字を繰り出した。
この技を俺は信じていた。ラフ・ウォーターを打ち砕くことができるということを。
「ああっ!」
「これが俺の持つ技です、柳先生!」
自慢の技には自慢の技をぶつけないとね。柳先生は一瞬倒れたが、生徒には負けたくない闘争心を見せつけてすぐに立ち上がった。
「か、影地くん……私を本気で顔に当てに来るるなんて……今は手合わせだからいいとして、もし学校でそんなことしたら即退学よ」
「全力で柳先生と戦うのが、今の俺の授業です」
学校ではできないからこそ、この戦いに集中している。相手が担任であろうと先輩であろうと、菜瑠美と共に全力で勝ちを狙いに行ってるんだ。
「影地くんと出会ってもうすぐ1ヶ月経つけど、今までずっとあなたのこと見くびっていたわ」
このまま負けるわけにはいかない柳先生は、着ていたジャージのチャックを下ろし、そのジャージを横で見つめる芳江さんに向けて脱ぎ捨てた。
「すまない姉さん、私のジャージ預かって」
「あらあらたかこ、令くんにムキになっちゃって」
ジャージを脱いだ柳先生の上半身は水色タンクトップのみとなり、へその胸元の間には大きな傷が入っていた。 胸元は開いており、たしかに露出度はある格好だ。
なんか比べるのもあれだけど、菜瑠美の戦闘服と見たら全然だし、貧乳が目立ちすぎるのに変わりはない。ま、今はそれどころではなく戦いに集中だな。
「私をここまで本気にさせたのはレイラ以来よ、ここであなたに見せたことない大技を見せてあげる」
「おやおやたかこの奴、つかさくん相手にあの技を解放するようだな。少々大人げない気もするが」
俺を本気にさせた……か。俺は本気の柳先生と戦いたいんだ、これは悔いの残らない手合わせになりそうだ。
「うぉおおお! 禁じ手とも呼べるこの大技、見せてあげる」
柳先生は両手を上に広げ、ウォーター・ラッシング同様に体全体が水そのものとなった。
「特訓場を飲み込む勢いで行くよ、ブルーダスト・ハリケーン」
まるで柳先生そのものが海になったみたいだ。一族の奥義とも呼べるような技をここで使うなんて、柳先生は俺が能力者であることを認めた証だな。
本気の柳先生と戦えただけで光栄だ、俺はただの1年4組の生徒でないことを証明してやる──
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