4-10話 作戦会議

 ──今は恋人でなく、タッグパートナーと見て戦うのがいいかもな。


 芳江さんの儀式により、本来なら海の一族しか入ることが許されない本拠地にたどり着いた。

 そこで、柳先生と芳江さんの母親であるノブヨさんと出会い、俺と菜瑠美が能力者としての実力を拝見してみたいと言い出す。

 その言葉を聞いた大和田さんが公開試合形式で、俺と菜瑠美対柳先生と大和田さんとの手合わせをしようと提案した。


「今の俺の実力を測るにはちょうどいい。日頃の特訓と、いつまでも虹髑髏にやられてるだけじゃないことを見せてやる」


 今日は強くなりたいためにここへ来たのだから、柳先生と大和田さん戦えるというだけで俺の心を踊らせていた。

 それに、海の一族の現トップ2人もこの戦いを見届ける。勝てば俺と菜瑠美が良いチームであると認められるはずだ。


「私も今日は戦うつもりでここへ来たのですから、一族の期待を裏切らない私の闇をお見せします」


 菜瑠美も着用していたロングコートを脱ぎ、既に戦う姿勢を整えていた。ま、下は戦闘服しか着てないしな。


「相変わらず天須さんのその姿と胸、羨ましいわ……でも今は勝負事、生徒とはいえ手加減はしないわ」

「あらら菜瑠美ちゃん、コートの下にこの前着てた派手な服をしていたのね。うちはその服好きだから、見れただけで感激ですわ」

「最近の若い子はあんな刺激的な服を着るのか、若い時のわしならすぐ着てたわ」

 

 柳先生だけでなく、芳江さんやノブヨさんまでも菜瑠美の戦闘服に感心してる。3人揃って貧乳だし、菜瑠美の素晴らしい胸には羨ましがるよな。

 余計に菜瑠美の戦闘服と巨乳が注目されることはわかっていたが、1番気になってしまうのは菜瑠美と組む俺なんだよな……いつまでも、見慣れできないし。


「さて、今回の対戦形式についてまだ説明してなかったな。チーム2人を戦闘不能するのではなく、12とする」

「なるほどねぇ……このルールなら、影地くんと天須さんの今の信頼度がわかりそうね」


 どちらか1人が倒れたらそこで終わりか。俺は2人まとめて競り勝とうと思ったのに、その狙いは崩されたな。


「そのルールで戦うのであれば、私はつかさと作戦会議をしたいです。少し時間を戴けますか?」

「菜瑠美?」

「いいだろう。君達に5分間を与えよう、その間に俺とたかこおばさんに勝てそうな策を考えてくれ」


 今回は2対2の戦いだから、何か作戦がないと勝つことはできないな。菜瑠美の方から大和田さんに作戦会議を申し出たのだから、菜瑠美にとっては絶対に勝てる方法があるのだろうか。

 菜瑠美は頭の回転が早いし、指示に関しては得意そうだ。だが、大和田さんも頭脳明晰なんだよな……肉弾戦か頭脳戦になるかだけで、大分違いがありそうだ。



◆◇◇



 柳先生達は先に特訓場に向かい、俺と菜瑠美は玄関にそのまま残り、手合わせに向けての作戦会議を行っていた。


「菜瑠美、君自身がこの時間を貰ったのだから、柳先生と大和田さんに勝てる秘策があるんだろうな」

「はい……2人は強者なので必ずしもうまくいくとは限りません」


 それはそうだよな。この作戦が100%通るなんて、俺自身も思っていない。


「つかさ……私は主に大和田先輩を引き付けます。あなたは柳先生をお願いします」

「俺が柳先生と? 学校での日頃の関係か?」


 たしかに俺は、学校にいる時いつも柳先生から色々言われたりしてるよ。普段なら絶対殴れない相手と戦えるのは滅多にないが、俺だって今は大和田さんと戦いたいよ。


「つかさも本気の柳先生と戦ってみたいでしょ」

「そうだけどさ……」

「あなたは授業を受けてないからわからないかもしれませんが、私が体育の授業を受けてる時の柳先生はをします。身体能力抜群のあなたには対抗できるでしょう」


 そういえば俺は、女子の体育の授業を指導している柳先生を見たことないな。三十路であるのに俺並の身体能力って相当なものでは? 戦う前にいいことを聞いたぜ。


「それとつかさ……」

「なになに? なるほどな」


 この場所は今2人きりなのに、菜瑠美は俺の耳元で今回の重要なポイントを語った。

 その言葉を聞いた俺は、これなら絶対勝てると確信した。少しの戸惑いがあったのは事実ではあるけどな。

 

「菜瑠美の作戦が、吉と出るか凶と出るか」


 そろそろ約束の5分が経つな、今は自身の実力と菜瑠美との結束力のことばかり考えていた。

 菜瑠美は今、白色のニーソックスを膝の上までしっかり広げているな。多少の乱れがあれば動きづらそうだもんな。

 すると、菜瑠美が俺に顔を向けて何やらあどけない表情をした。俺は緊張しすぎて、そんな表情はできないな。


、では特訓場へ」

「おう、俺が前に出るよ」


 ここは俺が先頭に立つか。戦う前に魅惑あふれる菜瑠美の戦闘服をガン見するわけにはいかなしな。特に、後ろ姿の美尻は反則的だ。

 ま、今の菜瑠美は美脚・美肌・美乳・美尻・美顔と5を揃えている。こんな美少女の恋人であることが、俺自身も否定してしまうほどだな。



◇◆◇



 特訓場に着いた俺と菜瑠美は、既にドアは開いていたため場所の広さを確かめていた。


「来たわね、2人共」

「5分全て使ったということは、余程自信があるそうだな」


 横で待機していた柳先生と大和田さんが待っていたぞと言わんばかりに待機していた。もしかしてこの2人、あまり作戦を考えずに待っていたのかもな。

 あいにくこっちは、菜瑠美が考えた切り札があるのでね。単体の強さならそちらの方が上かもしれないが、チームワークなら絶対に負けない。


「影地くん、戦う前だというのに顔少し赤いわよ」

「あら令くん、菜瑠美ちゃんとさっきまで2人きりだったからその姿に興奮したんじゃかいのかしら」

「そ……それは!」


 戦闘服の菜瑠美と2人きりでいたら、世界中の男誰もが興奮するだろ。いくら恋人の俺でもだ。



◇◇◆



「うちが審判をさせていただきますわ。試合形式は先程耕士郎が言った通り、宜しいわね?」


 芳江さんが審判を行い、いよいよ俺と菜瑠美対柳先生と大和田さんの手合わせが始まる。特訓場は特別広い場所ではないが、縦横無尽に駆け回って柳先生を驚かせてやる。


「わしらは700じゃ、これで娘達が不甲斐ない負け方をしたら恥さらしじゃい。それと、わしが他の能力者との戦いを見るのも10年振りだから、戦うという意味でも楽しみだぞい」


 たしかに、海の一族の歴史は長く引き継がれている。でも、菜瑠美の闇と菜瑠美が元々持っていた光も両親から受け継いだ物だから、互いの先祖が万が一高い上から見ていたら絶対負けられないな。


「行くぞ! 令くん、菜瑠美ちゃん」

「生徒でもチームメイトでもあるけど、今は容赦なく行くわよ」


 柳先生も大和田さんも本気で俺と菜瑠美に戦いを挑んでくる、ここは平常心を保たないと。

 本来なら、柳先生と大和田さんは俺の上の立場である人間で、反抗することは絶対許されない相手だ。だが、今回は手合わせとはいえ全力を見せたい。

 

「宜しくお願いします……柳先生、大和田先輩」

「俺は遠慮なく行きますよ」


 この戦いが、今の俺と菜瑠美の現状の強さを試すには絶好の機会だ。今は菜瑠美が練った作戦を信じ、俺は菜瑠美との連携を見せつけたい──

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