4-5話 未衣麻衣姉妹
──親玉もやべー奴だと思ったら、部下もやべー奴らだった。
菜瑠美とのデートを一旦中断して、車両事故を起こした後に、現在逃走しているレイラを探すことにした俺と菜瑠美。
その途中で虹髑髏の幹部グループである七色の3人目の刺客・翠のアナーロが俺と菜瑠美の前に現れる。
「菜瑠美たん、一緒に遊ぼうよ」
「この人……本当に嫌……」
なにが菜瑠美たんだよ。敵対者でありながら、たん呼びするナルシストでもだった。
しかもこの男、千葉県で数件発生している連続少女襲撃事件の犯人であることは間違い無さそうだ。これは許せない限りだ、千葉県内の『悪』を1つ消してやる。
「次の標的は菜瑠美たんよ。私の持つ『
「私は……こんな最低な人間に……」
アナーロの奴、連続少女襲撃の次の標的を菜瑠美に定めたが、そんなことはさせない。菜瑠美もここで、大嫌いなアナーロを懲らしめたいと思っているはずだ。
「今すぐ菜瑠美を助けたいが……俺もピンチだ」
菜瑠美を助けるべく、なんとしてもアナーロの魔の手から救いたいたい。
しかし俺は今、アナーロの部下である未衣と麻衣の姉妹コンビによって両手を掴まれてる上に、麻衣がナイフで俺を刺そうとしている。
「アナーロさまとあんたのガールフレンドのことは、今見てることしかできないもんな」
「くっ、菜瑠美……」
ただ、動けないのは両手だけで、足は使える。ここは、雷光回転で鍛えた足技でナイフを落とさせて姉妹を油断させてやる。
「お前ら、たしかに今の俺は両手を使えないよな? これならどうだ」
俺は左足を真上に蹴り上げ、麻衣の右手に所持しているナイフを落とさせる。
「なにっ!?」
「そんなっ、私のナイフが」
レイラの時もそうだったが、俺は相手が女であろうと容赦はしない。虹髑髏を潰すことが目的なのだから。
麻衣のナイフを落とさせた反動で、未衣は少し戸惑っていた。だが依然、俺の両手は未衣に捕まれたままだ。
しかし、こんな状況なのに姉妹はまだ余裕の表情を見せている。姉妹の格好からしても、隠してる武器とかないはずなのに。
「ナイフがなくても、私達にはこれがあるわ」
「影地令、これでもくらいな」
「なっ……しまった」
未衣と麻衣はマスクを外して、口から毒霧を俺に向けて吹いてきた。
マスクの中に毒霧を仕込んでいたなんて、予想外だ。ナイフを落とさせただけで少し立場が変わったかと思ったら、また俺の劣性になってしまった。
「甘いのよねー、つかさくん」
「あんたはアナーロさま処が私達の足元に及ばないわ」
「くそっ、ぐはっ」
「あはははは」
毒霧を受けた俺は直後に、姉妹揃ってヤクザキックをくらい、地べたに倒れてしまう。そして姉妹は、甲高い声で笑いながら俺を罵倒した。
くそっ、この姉妹は今まで遭遇してきた虹髑髏の工作員の中では、段違いに強い。まさか、七色以外の相手に苦戦されるとは。
「私達未衣と麻衣の姉妹を甘くみては困るね」
「がはっ、アナーロに近づくことができないなんて」
俺が地べたに倒れた後、姉妹のハイヒールに踏みつけられてしまう。ハイヒールに踏まれてるだけあって、相当のダメージだ。
こんなものなのか俺は……強くなったと思ったのに、これは大間違いだった。
「つかさ……きゃっ」
菜瑠美は俺を心配している隙に、アナーロが両手で菜瑠美を掴み、胴回りを抱きつこうとしてきた。
アナーロは菜瑠美に対し、嫌らしい笑顔を見せた。菜瑠美にとっては、悪夢の始まりなのだろう。
「ボーイフレンドの心配より、私と遊びましょ菜瑠美たん」
「ちょっと……何するの? 嫌っ!」
アナーロは菜瑠美に抱き付いたまま、胸を触ってきた。やはり、菜瑠美の胸を平気で触ってる時のアナーロの顔が嫌らしすぎる。
「あっ……あっ……」
「噂通りの巨乳と素晴らしい揺れ具合だよ菜瑠美たん、お次はこれよ」
「うそ……やめて……きゃああ!」
今度はベアハッグを菜瑠美に仕掛け、菜瑠美の体ごと締め付けてきた。なんて野郎だ、使う技も菜瑠美を苦しめさせるだけでなく、性的行為も含まれている。
「らめぇ、もう……無理……」
「あらぁ菜瑠美たん、もうオネンネなの」
アナーロのベアハッグで何度も締め上げられた菜瑠美は、顔が紅潮な状態で倒れてしまう。
おまけに、俺のためだけに着用したゴスロリ姿もボロボロだ。ヘッドドレスの左側に付いてある小さな薔薇が、地べたに落ちてしまった。
「まだまだよ菜瑠美たん」
「もう……来ないで……」
アナーロが地べたに落ちていた薔薇を拾い、再び菜瑠美に近づいた。菜瑠美ももう、アナーロを見ただけで怖がっている。
「菜瑠美たん、今の君には薔薇がお似合いなのになー」
「気安く頭を触らないで、汚らわしい」
取れていたヘッドドレスの左側を、アナーロの持っている薔薇に付け替えようとしている。
菜瑠美がアナーロの薔薇なんて好むかよ、俺がピンチである状態なのに好き放題しやがって。
「ほらほら菜瑠美たん、私のことを『アナーロさん大好き』と言ってみなさいよ」
「誰が……あなたみたいな人間として最低な男に……言うものですか……」
彼氏持ちの菜瑠美が、そんなこと言うわけないだろ、アナーロは自分が嫌われてることわかってないのか。
ま、その彼氏はかなり不甲斐ない状態だけどな。姉妹に踏まれたダメージが想像以上に辛い。
「言わないのであれば、また触るわよ」
「そんな……」
「くそっ、アナーロめ! ん……これは?」
アナーロはまたしても、菜瑠美に卑劣な行為を仕掛けようとした瞬間、辺りには砂嵐が降りだしてきた。これはサンド・ライト? レイラか?
「いい一時をしてるようだな、アナーロ」
「レイラ、戻ってきたのね」
こんな時に、レイラもここに来やがった。このまま奴も合流して戦闘に入ったら、今度こそ死を確信してしまう。
「アナーロ、アジトに戻るよ!」
「えー、私はまだ菜瑠美たんと遊び足りないの」
「私達は今、警察に追われてる立場よ。影地令と天須菜瑠美を始末するのは私も同じだが、そういう暇はないよ」
レイラは未だパトカーに追われてるから、オープンカーに乗ったまま奴らに撤退命令を指示するだけか。
レイラも来たのだからまとめて奴らを捕まえたいのに、今の俺にそんな気力がはない。
「ちっ、撤退するよ、未衣・真衣」
「了解」
俺をハイヒールで踏みつけていた姉妹も、ゆっくりと足をおろしてアナーロとレイラに一礼してから撤退した。
「命拾いしたね、つかさくん」
「次あんたと会った時は、お命頂戴するよ」
「ふん、やってみろ。お前らもアナーロ同様、俺の光で裁いてやる」
悪いがこの姉妹も、許すつもりなんてない。今日は俺の負けだが、挑戦的な態度をとっとくか。
「では菜瑠美たん、また遊びましょう」
「……嫌です……もう私の前に姿を見せないで……」
撤退時も菜瑠美に薔薇を差し出し、ナルシストっぷりを見せた。菜瑠美はもうアナーロと遊びたいとこれっきり思ってないよ。
「正直、今回はレイラに感謝だな」
虹髑髏第4部隊か……アナーロはもちろんだが、姉妹もかなり嫌らしい。間違いなく、最悪な奴らだ。
もしも、このタイミングにレイラが来なかったら俺は野垂れ死になってたし、菜瑠美はまだアナーロからの悪夢を見続けてただろう。
これだけは言わせてもらいたい。アナーロ、菜瑠美の精神を恐怖に追い詰めたお前を絶対許さない。お前みたいな底辺犯罪者は
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