第388話:参道開拓の報告

 翌日、報告が遅れてしまいはしたが、しなければ話が進まないと思ったリョータは、気が重たくなりながらも子爵邸へと向かった。


 はあ…始祖竜に面会できたって報告したら「色々聞かれる」んだろうな。


 姿形はどうだった…とか温厚だったのか…とか…今まで、誰も面会した事が無いって言ってたもんな。


 面会できた事、開拓の許可を得た事、道を完成させるまでは自分しか入れない事…それらを報告しなければ「山へ向かう度に絡まれる可能性」が捨てきれない。


 だからこそ山の持ち主に、許可を得て居る…と言う事を証明できる何かを預からなくてはならないのでは?と思ったのだ。


 一度、面会できたからなのだろう。子爵邸を見守る騎士(?)から執事へと報告がなされ


「リョータ様、山の主であらせられる始祖竜様に、

 お会いできたのでしょうか?」


 と尋ねられてしまった。


「…その事を此処(玄関先)で話して良いのでしょうか?」


 オリバー邸の執事が秘匿事項かも知れない事柄を玄関先で…?と言う顔をして居たのに気付いたのか、バツが悪そうに


「い、いえ…旦那様に報告頂ければと…

 どうぞ報告をお待ちになっておられます」


 と軌道修正してくれた。


 流石に玄関で「始祖竜に面会できましたよ」何て聞かされて大声、出さない何て有り得ないしね。


 まあ魔法で遮音は施すつもりだったけど、こんな人目が有る所で聞かないで欲しかったよ。


 ガラの悪い連中が偶然、通りかかったようで…狙われてしまった、と察知できてしまったのだ。


 やっべ…久しぶりか?巻き込まれスイッチ反応しちまった。


 あの「断罪」ってスキルが出来て無かったらヤバかったかも知れないけど、思い描いた断罪が出来るって最高だよな。


 内心「にやり」と顔を歪ませてしまうリョータだが、現状は説明しなければならない。



 * * * *


 応接室に案内され、子爵が直ぐに到着して開口一番


「始祖竜に会えたのか?!」


 と聞いてくる(どんだけ報告待ちわびてたんだ?!)。


「え…えっと…落ち着いて欲しいんだが…

 一応、お会いする事は出来た」


「始祖竜は…本当に居たのか…」


「迷いの森と呼ばれて居るのは、

 礼儀を弁えず勝手に入って来る者を拒む為に作られた。

 だから礼儀さえ守れば誰でも会える筈だぞ」


 もう見た目が子供で中身が大人だと言う事は白状して居るので、大人な喋りをしても驚かれる事は無い…のだが、今日は別の意味で驚かれて居る。


 それはそうだろう「居るか判らなかった存在」が「居る」と判ったのだから、一大事でも有る。


「や…山の開拓は許可して頂けたのだろうか?」


「開拓は許可して頂いたが、俺だけに許可が下りた」


「・・・え・・・?まさか…1人で開拓を?!」


「一応な、如何様いかさまと言われるくらいの魔法を持って居るから、

 開拓に関しては心配はしなくていい。

 だた、広範囲になってしまったから、

 どれくらいの日数、掛かるか判らないんだ」


 およその日数は弾き出せたとしても「正確な日数」までは弾き出せない。


 それはリョータが「土木専門家」では無いからでは有るのだが、如何様を使えば弾き出すのは可能だろう。


 それでもしないのは「他に誰かから開拓に加わりたい」と言われる事への懸念も有るからだった

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