第381話:オリバー様に誓約書を預け現地視察へ

 椅子職人と土木職人への交渉を願い出たリョータは他の職人同様、誓約書を交わして貰う事を伝えなければならない。


「オリバー様、交渉して下さる職人に俺の事を教えるにあたり、

 誓約書を書いて貰う事になるのだが、

 受け入れて貰えるだろうか?」


「誓約…君の事を話すならば、

 転生と言う事を他言無用にしなければならない…

 と言う意味だな。

 恐らくではあるが、受け入れて貰えるだろう。

 クロフォード商会での、

 お抱え職人と言う肩書が貰えるならば、

 誓約書を読まずに署名しそうな職人なんでな」


 苦笑を漏らすムーア卿とポカーンと口を開けてしまったリョータ。


 何デ職人ハ新シイ事柄ヲ知ル時、喜ビ勇ンデ誓約ガ掛ケラレテモ、食イツクンダロウネ。


 カタカナ交じりの言葉が脳内に浮かんでしまうが、仕方ないだろう。


 既に誓約してくれた職人たちは、こぞって名を署名し動いてくれてるのだ。


 それを考えれば他の職人が話を持ち込まれたとしても、喜んで署名するだろうと予測できる。


「そ…そう…なんですね。

 でしたらお願いしても宜しいでしょうか?

 俺は開発するであろう山を確認しておきたいから、

 場所を教えて貰いたいんですけど…」


「私の領地として頂いた場所は屋敷裏手になるのだが、

 その山には伝説で始祖竜がいるとされているが、

 誰も見た事も聞いたことも出会った事もないのでね。

 いたとしても討伐しないでくれるか?」


「し…始祖…りゅう?!」


 一瞬「龍」の方を思い浮かべたが漢字に起こした時「始祖龍」ではしっくり来ず「始祖竜」ならシックリしたので「竜」だろうな、と考え直した。


「そう驚かないで欲しい。

 いる…と言われてはいるが、

 誰1人として出会った事が無いのだよ。

 なので、いたとしても討伐ではなく、

 交渉して欲しいのだよ」


「山に住んでいた場合、工事する音がうるさくなる事や、

 開拓する…と言う事に対して許可を取る…

 と言う事で合っていますか?」


「そう言う事だ」


 始祖竜と呼ばれる存在を「見れる」のは嬉しいが、山の主とも言えるだろう存在との交渉とか…これも巻き込まれMAXの影響か(はぁ)。


「山は外に出れば判りますでしょうか?」


「それは執事に案内させよう」


 そうして呼ばれた執事の案内で向かった先…それは屋敷の後方にデンと構える富士山級の山。


「あちらが開発して頂く予定となる山に御座います」


「始祖竜がいる、とされてるのは、

 山頂とか湖とかの伝承はあるのでしょうか?」


 執事にはリョータが、転生者で青年だった…と言う事は伝えられておらず、子供らしい話し方へ戻しているので違和感ありまくりだ。


「中腹に住まいがあるとされておりますが、

 そこまでたどり着いた者は一切おりません」


「・・・まさか迷いの森とか・・・ですか?」


「その通りで御座いますので、

 冒険者様であっても十分、お気をつけ下さいませ」


 マジか…近くまで行って鑑定かけて「魔法で迷うようにされてる」なら転移でもムズイって事になるな。


 魔法が掛かってないなら転移で一気に住まいまで飛んで、正直に開発依頼…出すか

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