第318話:閑話~アフォンとバッカーの顛末
リョータが施した断罪で、職人としての技術だけでなく、クロフォード商会で行われた面接や誓約書の内容…体験した「全ての事を忘れ」自宅となっている、職人街に「戻された状態」で目を覚ました。
「アフォン…ここ何処か判るか?」
「バッカー。
見た所、職人が暮らす地域のようだが…
記憶が無い」
自分たちの荷物っぽいのは理解できたのだが、使っていたであろう道具類を見ても覚えてないのだ。
「この道具を見る限り、
馬車職人だったのだろうか」
「判らない…使った記憶も持った記憶も何もない。
なのに見たことはあるって…何故だろうな」
リョータの断罪スキルは、普通に断罪できればなー…と言う思いで考えていたのだが、あまりにも阿呆な輩に絡まれてしまうから、それなら…と「絡んだ輩の技術を奪えたら」なーと思ってしまい、固定されている事に気づかず使ってしまったのだ。
アフォンが置いてある道具の1つを手に取ると、持った事が無いかの如く「こんな道具、使える気がしない」と思った。
バッカーもアフォンが持つ道具とは違う道具を手に取ってみるが、同じ感想しか出て来ない。
それもそうだろう、この2名は馬車を作る職人としての活動すらしておらず、職人ですらない者だったのだ。
道具と材料だけ揃え、職人と見せていただけ。
何か品を作ったと言う業績も、馬車作りに携わったという記録も、弟子入りしていたと言う記録すら残ってない単なる「偽物」だったのだ。
偽物ゆえに依頼は来ず、商会へ所属せず、プラプラ歩き回り、いかにも馬車作りに精通してます感だけを醸し出す偽物として有名ではあるが、捕縛されるような事柄では無かった為、放置案件としてスルーされていただけなのだ。
「どうするアフォン…所持金みたけど、
明日たべる物を買えるか判らない金額だよ」
「…俺の所持金も同じだな。
とは言え…俺たち、職人じゃ…
ないよな?」
「うん…手のひら見るけど…
カケラすらないから。
職人だったらカケラくらい、
あるよね」
互いに手のひらに道具で出来るであろうタコが無い事を確認しあい、職人街に住居がある不思議から逃れるべく、自宅だったであろう場所から、私物だったであろう品を袋詰めし、田舎に戻る事を決めた。
「でも…俺たちの田舎って何処だっけ?」
アフォンもバッカーも同じ出身地なのだが、それすら記憶から消え去っている。
余りにも強烈な「断罪」と「
リョータの容赦なしが発動してしまったが為に、彼らの田舎すら消え去っているなど、断罪を施した本人は知る由もなかった。
「何処か覚えてないなんて…あるんだな。
とは言っても職人じゃないのなら、
ここにはいられないだろ?」
職人たちの集まる地域にいづらくなった2名は、誰にも気づかれる事なく、何処かへと旅立ち、隣の職人が「あれ?あの偽物たち…逃げたか」と気づくのは、1時間もしないうちだった(らしい)
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