第290話:喜びの雑貨屋(3)
昨日まで男性が女性の声質を真似した如くなサミーだったのに、今、会話を交わすサミーは「初めから女性だった」と言っても過言では無い「鈴を転がしたような声音」なのだ。
「わたくしは昨日、
創造の女神様の恩恵を受けたのですわ」
「創造の女神様の…」「恩恵ですって?!」
「えぇ。天使の
男性の体に女性の魂を入れてしまったと、
お詫び頂きましたの。
正しき状態に戻して下さったので、
正真正銘、女性ですわ。
お疑いでしたら、
疑うなら女性同士、触れば判るだろう、と持ち掛けられ令嬢たちは戸惑いを隠せない。
それはそうだろう、男性だった体が恩恵を受けたからと言って、女性に「なれる訳が無い」と「思い込んでいる」から、胸元に触れば判ると言うのに躊躇したのだ。
「女性同士なら戸惑わなくてイイでしょ?
胸なら本物か偽物かくらい、判る筈だよ?」
躊躇する令嬢たちの思いを何とか断ち切って、2人には幸せになって欲しいと願うリョータが、背中を押す。
「そ、そうよね」
「偽物なら直ぐに判りますものね」
2人同時にサミーの元へと進み、勇気を振り絞った1人目の女性が胸に
「え…この…柔らかさは…本物だわ」
と信じられないと言う声を出し、離れ2人目の女性も同じように驚愕した顔で離れた。
「判って頂けたかしら?
わたくしがクロフォード様から求婚を受けたとしても、
支障は無いですわね?」
「い、意義ありですわ!」
「生まれた瞬間から女性だったわたくしたちと、
何が違いますの?!」
あれま、何が何でも彼から求婚されたくて仕方ないんだろうなー。
必死すぎ。
「お姉さんたちがサミーさんに向ける視線が違うんだって、
気づいてる?」
「え?」
「明らかにサミーさんが男性だった事に嫌悪感、
抱いてたでしょ?」
「・・・・・・」
リョータの指摘に何も言えなくなった2名。
「悪いがレイの嫁はサミー嬢しか考えられぬ」
あ、お兄さん「レイ」って名前だったんだね。
「な、何故に御座いますか」
「君たちは見た目で判断するのだろう?
レイの容姿は良い方だからな。
息子の中身まで見ておらぬだろう?」
「・・・・・・」
「サミー嬢は見てくれた。
それでも男性の体では受け入れて貰えないと、
恋心を諦めておられた。
君たちはどうだ?
サミーが女性だと知ってレイが求婚したと知って、
嫌悪感を露わにし、尚且つ、
浅はかな考えを露呈してるではないか」
レイの父親が見抜けぬ筈もなく、令嬢たちは、そそくさと逃げ出し、レイとサミーの婚約が正式に認められる運びとなりそうだ。
「リョータ君」
レイの母親が優しい微笑みでリョータを見た。
「なぁに?」
「サミーさんを普通の女性として扱ってくれてたと、
聞いたわ有難うね」
「ううん、感謝しなくていいよ?
だって男性だって女性だって同じ人だもん」
それを背中で聞いた令嬢たちは、いかに自分たちが失礼な事をしでかしていたのだろう、と言う事に気づき反省して邸へと戻って行った。
「ふふふサミーが言った通りね」
サミーさん…俺の事、何て言ったのか知りたくないが変なフラグ立ってないよ…ね?
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