第280話:出来上がった施設を見て小桜、口あんぐり

 転移で移動した先で影から小桜を出した瞬間、施設が目に入った小桜が


【な…な…何をなさったのですかあるじっ!!】


 天変地異でも起きたのか如く、それはそれは「びっくり仰天」「雨あられ」な状態で、目が飛び出そうな勢いで見開いている。


 う…だから言ったでしょ。


 魔法スキルが作られた結果「出来上がってた」って。


【言ってましたが…

 此処まで出来上がってるとは、

 誰も思いませんでしてよ?!】


 小桜の言い分はもっともで、家屋を作る職人などが作ったとしても「たった3日」では「完成」しない。


 にも関わらず、そこには「3日しか経過してない」にも関わらず、施設が「完成している」のだ。


 小桜、よっく考えてくれよ?


 俺「思ったり、思い描いたりしただしただけで、魔法を作れてしまう」んだよ?


【あ…】


 色々「やらかしてきた」のを「見て来た」小桜なら「どうしてこうなったか」理解できたでしょ?


【……はぁ…出来てしまったものをとやかく言いたくありませんもの】


 まあ中に入って少しでも傷を癒そうか。


 小桜だけだなく、権太とゴマも呼び出し一緒に銭湯と化した施設へと入って行く。



 * * * *


 リョータは服を脱ぎタオル1枚持った状態でガラリ…と引き戸を開けた先にあったのは壁画として描かれた「富士山」ではなく、満点の星空の下で周囲が美しい景色に囲まれた、どこぞの露天風呂のようになっていた。


「は、はぁ?!お、俺が作った時は囲いがしてあって、

 壁には銭湯特有の富士山が書かれてたのに、

 何でんのぉ?!」


【これは…主も知らぬ事が起きた…

 と言う事で宜しいのかしら?】


「うん…俺は男女別に仕切りを作って、

 両方の山側に富士と呼ばれる絶景の山を描いたんだ。

 でも見えてんの…どう考えても外だよね?」


『はい。外ですね』[外だねー]【外ですわ】


「一体これは…」


〔済まぬなリョータ。

 温泉の神である2柱ふたはしらが感謝を伝えたく作ってしまったそうだ〕


 ・・・何やらかしてんですか2柱の神様!


大己貴神おおなむちのかみ(※)と少彦名神すくなひこのかみと言う神様が、どうやら施設を作ってくれた事に感激し、リョータに変化させる事を伝える事なく「勝手にヤラかした」と言う事らしい。


 大己貴神が「済まぬ、一言つたえれば良かったな」と言い、少彦名神も「伝えねば驚く、と言う事を失念しておった、済まぬ」と謝罪を口にし、リョータは大慌てで


「ふ…2柱様が謝罪されてはなりません!

 ただっ…驚きはしましたが、

 男性が女性を覗き見する可能性も考えて下さってるのですよね?!」


 驚き戸惑いはしたが、これはこれで「趣があるな」と思ったからこその尋ねであった。


 大己貴神と少彦名神が同時に「それは考慮しておるので心配ない」と言い切ってくれた事で安心し、ようやく小桜たちと共に湯へつかる事が出来た。


 八百万やおよろずの神々は、どうやらリョータが料理やら建築やらと異世界ではあるが、普及してくれそうだと感じて、何かしらと手助けしたくてウズウズと待ち構えていたからこそ、起きた事のようだ(リョータは「あずかり知らず」である)



※=大己貴神は大国主命おおくにぬしのみことと同一人物。

 温泉の神様を検索して出て来た2柱様を引き合いに出させて頂きました

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