第225話:焼きたてパンの香りが目覚めを誘う

 翌日7時すこし前、機械から出来上がりの音が鳴り、焼きたての香ばしさが鼻腔をくすぐり、目覚めを誘引しリョータの腹がぐぅ…と早く食いたいと要求。


「ん~~~~~めっちゃイイ匂い♪」


 機械を買った時、ついでとばかりに買いそこねていたミトンを購入。


 パン型を機械から取り出し、中からふっくらパンを出すと、こんがりキツネ色した四角いパンがお目見え。


 ゴクリと思わず唾を飲み込んでしまう。


「これ…普通に包丁でも切れるか?

 でも専用を使った方がイイ気が…」


 パンスライサー何て業務用ではなく、パン切包丁。


 片面はギザギザが細かく、もう片面は波型の刃がついている物。


 それ(波型面)を使って切った方が断面が絶対、綺麗だと思った。


 サンドイッチくらいの幅に切るには、側面部分を切り落とす必要がある。


 勿論、そこは「つまみ食い」するつもりで切り分けていく。


 パンの耳は皿に取り置き、サンドイッチ4個分の量を切り、残ったパンは専用保管箱へ…。


 機械を買った時、余るパンをどうしようか…と思った瞬間に、魔法が作動してしまい、保管箱が出来てしまった。


 鑑定結果としては、錬金を(無意識で)使って、周囲の木材をベースに箱が形成され、様々な魔法が付与されている(どんだけチートなんだ)。


 箱の事は置いて…ツナ缶から油を落とし、マヨと合わせレタスを敷いた上に置き、1個目のサンドを作る。


 2個目のサンドはシンプルにマヨとハム。


 3個目はカツを入れ4個目は悩んだ挙句、コーンマヨにした。


 雑貨屋へ寄り道しなかった為、万能紙は購入できてない。


 万能紙に匹敵するアルミホイルを使う事にしたが、この世界に「ない」可能性を失念していた。


 残った…と言うより「あえて残した」と言えるパンの耳は、言わずとしれたスナックにするつもり。


 油でカラっと揚げ、砂糖をまぶして出来上がり♪


 お稲荷様に油揚げを持って行った頃、作って貰って嵌ってしまった食べ物でもある。


 それ以来、3枚入りのパンを買っては耳を蓄積し、纏めてスイーツにしていた。


 保管箱に入れておけば乾燥は防げるし、蓄積させて一気に作るのもアリだな。


 4つのサンドをアルミに包み、いざ自宅を出発!の前に、壁面のパンを軽くフライパンで焼き小桜たちにも分けて行く。


あるじは一体なんですの?】


「あぁ見た事ないんだよね。

 これパンを作る道具」


【もしかして、その欠片がパンですの?】


「そうだね、パンを作る時に出る端でね、

 少しだけ焼いたんだ。

 冷ましたから食べてみて?」


 召喚していた従魔たちにパンを「おすそ分け」すると、嬉しそうに食べれる権太とゴマ、不思議そうに食べる小桜とこむぎ。


 概ね、評価は良いようであった。


【主、1つ伺っても宜しいかしら】


「な、なに?」


【その銀色の物体は、

 エーテルディアにアイテムですわ。

 その品は一体、何ですの?】


「え…存在…しないぃ?!」


 小桜の指摘でようやくアルミが存在しない事を知ったリョータは、更なる絡まれを回避でき、サンドイッチは、市販されている入れ物で持って行く事となったのは言うまでもない

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