薔薇のカルペディエム

諸星モヨヨ

はじめに

はじめに~『薔薇のカルペディエムとは?』

中世を思わせる煉瓦造りの街を焼き尽くし、巨大な怪獣が進撃する。

砕け散る教会!吹き飛ぶ山!! その時! 地面を割いて出現する巨大ロボット!


重厚な音楽が高鳴り、画面に『薔薇のカルペディエム』の文字が現れる。


見よ!目もくらむ巨大ロボ、ブラッディローズの雄姿!!


そして主題歌の後、流麗に語られる石坂江二のナレーション「月の裏にある世界、アストラルワールド。人類は無数の人工島を浮かべ平穏な時を過ごしていた……」こうして我々は、毎週毎週『薔薇のカルペディエム』の世界へ引き込まれていったのだ……




『薔薇のカルペディエム』は昭和50年10月1日から、翌、昭和51年7月10日まで放映された空想科学特撮番組で、連続物だが基本的には1話完結。30分枠で全39話(うち1話は再編集版)の作品である。


特撮ファンの間でも“ほぼ幻の作品”として有名な作品であるが、その実、作品に関する資料や文献、果ては本編である映像まで今日では全く目にすることはない。それもそのはず、本作は全39話すべてのマスターテープが紛失。ネガフィルムも火事で焼失したために映像と言えるものはほぼ全て存在していないのだ。


では幻の名作と呼ばれる本作が当時は人気だったのかと言うと、そうとは言い難い。諸般の事情によって打ち切られることとなった『ドキッとましゅマロ!』の後番組として急遽作成されることとなった本作。少女向けの巨大ヒーローものという斬新な基軸は当初諸手を挙げて受け入れらたが、時は第二次怪獣ブームの末期。75年の初めには「ウルトラマンレオ」が視聴率の低下、制作費の緊縮に伴い半ば打ち切りに近い形で終了している。


本作もそのあおりを受け、とっつきにくい世界観と怪獣がメインターゲットに受け入れられず、番組中盤からはかなりの苦戦を強いられた。


キー局が極端に少なかった事、裏番組に「UFOロボグレンダイザ―」や「鋼鉄ジーグ」などの強力なライバル番組があったことも視聴率低下に拍車をかける結果となった。

メインスポンサーであった日本空気販促が倒産したこともあり、結局本作は3クールに3本足した全39話と言う形で終了している。(当初の契約では5クールが計画されていたという)


こんな悲運に恵まれた本作ではあるが、後述する脚本やノベイズ版を見ると、作品のクオリティとしては一見の価値があるものと言える。


監督・脚本はあの鬼才、長浜由悠季。当時流行りだった熱血スポ根モノと少女漫画を融合させ、そこに怪獣と巨大ロボをぶちこんだセンスはやはりどうかしているとしか言いようがない。


物語展開のポリシーとしては、所謂特撮のお約束を風習しつつ、女の子が憧れるフランスやヨーロッパなど中世風の街並とデザインを基調とした異国情緒あふれる世界観の中で、可憐な少女達が縦横無尽に駆け回り、視聴者の憧れを叶えるという方針が立てられていた。


登場する怪獣も全く正体不明で意思疎通の取れない絶対的な敵として設定され、世界に対する異物として扱われた。

その結果、怪獣を倒す使命に燃える少女達の人間ドラマと成長に重点が置かれ、物語の舞台は常に「熱血」のあるところとして、企画書でも強く「熱血」と謳われていることは、主題歌の歌詞もこれを反映していることがうかがえ、興味深い。



製作は『サボテンキック』(1972年)、『お便所ジョジョ丸』(1974年)の泉光社。豪華な特殊技術を担当したのは『スーパーロボットレッドバロン』(1973年)で監督も務めた高野宏一。


美術には『ウルトラセブン』などでも有名な成田亨と池谷仙克がデザインを提供。怪獣の多くは成田亨のデザイン・高山良策造形という奇跡的な組み合わせによって生み出されている。


特にメインメカニックとなるブラッディローズは長浜監督の意向から曲面と鋭角をふんだんに活かした挑戦的な造形となり、番宣ポスター等のデザインでもブラッディローズの特徴的なシルエットをあしらったものが作られた。(このデザインは玩具化の際に大変苦労したという逸話も残っている)


何より特徴的なのが、放送と並行して監督自らが執筆した、ノベライズとも原作とも取れる小説を少女雑誌「マーガレット」に連載していたことである。


今回は特撮ファンの声に何とか答えようと、そんなマーガレット連載版を出来る限り、そのまま掲載し当時の熱気とパワー、雰囲気などを出来る限り再現しようと努めた。


マーガレット連載版はテレビ放送と同じく全39回。その殆どが同封の別冊子に掲載されており、当時の雑誌単体を見ても確認することは出来ない。

その為、関係各所を回り掲載冊子を出来る限り収集し、確認次第再編しここへ上げることとした。歴史の狭間に消えた幻の名作を、本来副次的なものであるノベライズ版から体験し、『薔薇のカルペディエム』と言う作品自体の再評価に繋がれば、これ幸いである。


では、ひとしきりの予備解説を終え、さっそく『薔薇のカルペディエム』の素晴らしい世界をお楽しみいただくとしよう。その豊穣なる世界に、存分に心を遊ばせていただきたい。


(尚、第1回更新は4月27日の夕方を予定しております。是非、ご期待ください)

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