第29話 15の災い。その13

「ねえねえ、ペリー。」

「なに? ちいちゃん。」

「災いって、一人歩きすると思う?」

「一人歩き!? するんじゃない、一人歩き。」

「そうだよ。災いさんだって、お腹が空いたら、おにぎりを食べるよ。」

「それはない。」

「ということは、やっぱり家々のご先祖様たちが災いを起こしたんだから、家々のご先祖様が悪いのよ。」

「そうだ! そうだ! 家々が悪い!」

「ええー!? なんで、そうなるんだよ!?」

「みんな、家々くんのことが好きなんだよ。」

「なんだ、そうなのか。エヘヘッ。」

「照れるな!」

「僕はモテモテなのか! ワッハッハー!」

「調子に乗るな!」

「ワッハッハー! ワッハッハー! ワッハッハー!」

「やっぱり家々は除名だな。」

「それだけはご勘弁ください!? 調子に乗った僕が悪かった!? 許してください!?」

「除名は効くんだな。」

「よっぽど少年少女剣客隊にいたいんだな。」

「許してください!? ウエエエ~!」

「泣くな! 男のくせに!」

「除名だけは嫌だ! ウエエエ~!」

「分かった。除名はやめてやるから。」

「本当? エヘエヘッ。」

「泣き止んだ。」

「嘘泣きだったのか。」

「笑顔が不気味だ。」

「それほどでも。ニコッ。」

「誰も褒めてない!」

「やはり! 少年少女剣客隊には、リーダーの僕がいないと物語が面白くないのだ! 第16代将軍、徳川家々あっての少年少女剣客隊だ! ワッハッハー!」

「おまえは不幸をまき散らしているだけだろうが。」

「桜先生!?」

 子供たちが騒いでいると、桜先生が教室にやって来た。

「今日から、宿題を出す。」

「宿題!? 災いだ!?」

「ええー!? 嫌だ!?」

「鬼!? 悪魔!? ババア!?」

「黙れ! 者共!」

「ねえねえ、実朝くん。」

「なに? 楓ちゃん。」

「宿題って、何?」

「寺子屋が終わってから、家で勉強しろってことだよ。」

「死ね! 桜お姉ちゃんなんか死んでしまえ!」

「私はもう死んでいます! 楓! それが姉に向かって言う言葉か!?」

「除霊のお札を貼ってやる! 家の四隅に貼って、家に入れなくしてやる! 嫌なら宿題を撤回しなさい!」

「仕方がないでしょ。私はこれでも教師なんだから。」

「じゃあ、教師やめれば?」

「簡単に言うんじゃない!? どうやってご飯を食べていくのよ? 楓は、おにぎりが食べれなくなってもいいの?」

「宿題、最高! 大好き! だから桜お姉ちゃん、しっかり働いてね。キラン!」

「ちょろい。楓に言うことをきかせる時は、食べ物の話に限るわ。」

「なんて恐ろしい姉妹なんだ!? ブルブル。」

「ということで。」

「どういうところなんだ!?」

「オープニングの寺子屋トークだけで、1話の半分も使うのよ。これじゃあ、話をまたぐか、話を長くするかしか、課題やクエストを行うのは無理です。どうしましょう?」

「そこを考えるのが教師の仕事でしょうが!?」

「そうだね。アハッ。」

「笑って誤魔化してる。」

「いるよね。今時の公務員教師。」

「税金泥棒! 金返せ!」

「あなたたち! 宿題を2倍にします!」

「お許しください! 桜先生様!」

「私たちが悪かったです!」

「家々を差し出しますから、煮るなり焼くなり好きにして下さい!」

「どうして僕が生贄にならねばらん!?」

「家々、熱湯風呂にでも入るか? ニコッ。」

「遠慮します!」

「ダメだ! 一つの会話で売り言葉に買い言葉の話が膨れ上がってしまう!? これでは話が先に進めない!? 私は教師失格だわ!? ウエエエ~!」

「桜先生、私たちの頭の回転が良いってことですよ。」

「そうですよ。これも桜先生の日々の授業で育てられたからです。」

「ありがとう。桜お姉ちゃん。」

「みんな! 私、教師をやっていて良かった! 復活!」

「桜先生の機嫌も直ったことだし、今日の宿題は無しということで。」

「それとこれとは話が別です。」

「チッ。」

「舌打ちするな。」

「で、桜お姉ちゃん。」

「なに? 楓。」

「今日の宿題は、何にするの?」

「え? しまった!? 宿題の中身を考えていなかった。」

「そんなことだろうと思ったよ。」

「だな。桜先生らしい。」

「とりあえず今日の宿題は、家々くんのご先祖様が帰るのを手を振ってお見送りしましょう。」

「それって、宿題!?」

「私は、徳川15将軍の一人、第5代将軍、徳川綱吉だ。」

「どこから現れたんだ。どこから。」

「は~い。みなさん。ご先祖様に手を振ってお別れしましょうね。それでは、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 子供たちは寺子屋から帰って行った。

「え? え? どういうこと?」

 寺子屋には、綱吉一人だけが残されたのだった。

 つづく。

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