第2話 : [ エピローグ ] ─ ( 3 )



 サユリは、パンパンに張った、リュックから何とかペットボトルを抜き取ると、グビグビと喉を鳴らし、一気に飲み干す。


 気が付けば妹のリマが、いつの間にか急な階段の頂上で、自分に向かい手を振っている。


「リマ!! 独りで行っちゃぁ駄目よう!!

 直ぐに、迷子になってしまうわよう!!」


 聞こえているのか、リマは笑顔で早くと手招きをする。


 サユリの随分前を二人の女子高生が登って行く姿が確認出来る。 一人は白のセーラー服。 片や水色のセーラー服で、どちらも特徴の有る制服なのだ。 調べれば直ぐに学校の特定が出来るだろう。 二人のスカートはに短く、あれでは、階段の下から丸見えのはずである。


 彼女達は、頂上でとすれ違うが、特に気に留める様子も無く、そのまま行ってしまった。 シバラくして息を切らせながら、サユリが到着する。


 丘の頂上には、踊り場近くの柵で談笑する先程の女子高生以外は人気ヒトケは無く、彼女達は、こちらに全く気が付かない様子である。


 リマが柵より身を乗り出して指を差す。

その先、ビルの合間に沈みゆく夕日が二人を包み込む。

 何て綺麗で暖かい夕日だろう。 どのくらいぶりに、こんなヤワラかな気持ちを持てたのかしら…。


 新しい両親は、この丘を少し抜けた所で小さな町工場を営んでいる。今夜は、私達が大好物のハンバーグを用意して待っていてくれているはずだ。


「さぁ!! リマ!! 早く新しい、お父さんと、お母さんに会いに行こう!!」


 リマが、ニッコリとウナズく。



( 人は往々オウオウにして、最中サナカに、注意力が散漫になるもの…)


 フッと、を思い出し、妹の小さな肩を抱き寄せながら優しく微笑み返した。


 サユリのリュックの頭からは、まるで、紙袋に差し込まれたフランスパンの様に、中央を三回、グルグルと、ガムテープで巻き留められた二つ折りのA4型が、無造作に顔を覗かしている。





  夕日に照らされた、小さなに影法師が一つ、階段を下り元来た道をどこまでも伸びて行く。

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