第2話 : スターライト・エクスプレス ( 5 )




 お札の束が出て来た!! かなり分厚い!! 数百万円はあるだろう!!


 一同がギョッとする。


 しかし直ぐに、笑いの渦が起こった。 精巧セイコウにこそ出来てはいるが、その中央には、国民的漫画キャラクターが笑顔で手を振っていた。 つまりは玩具オモチャのお札である。


「随分と手の込んだ悪戯イタズラね!! 大人のする事かしら?」


 と呆れながら、クララは首をスクめた。


 明るいナゴやかな店内の雰囲気の中、リコピンだけが、納得のいかない面立ちである。


 ここで、車椅子のお嬢様が御帰宅時間となる。皆に笑われたリコピンは、何となく決まりが悪く店内に居たたまれない気持ちもあって、特別に一階までお見送りする運びと成った。


 一階のエントランスで、お嬢様に、御見送りをしていると、大勢のカメラマンやレポーターが、前を争う形でドカドカ、リコピンに詰め寄って来る!!


 一瞬、何が起きたのか理解できない彼女に間髪を入れず、レポーター陣が早口でまくし立てる。




「AKIBA・BLUE DAYSのユースケさんと、交際されていると本日発売の″週間文筆″に掲載されてますが、事実なんですかぁぁぁ? リコピンさんっ!!!!」


 マイクを、彼女の喉の下から突き上げる。


「リコピンさん!! 産婦人科医院から出て来る処を写真に撮られてますが、妊娠されているんですか!?」


「と、なるとユースケさんの、お子さんなんですかっ?」


 執拗に食い下がる男性取材陣達を押し退け、ワイドショーで良く見る女性リポーター、が、肩越しに乗り出し、必要以上にグイと彼女に近づく。


「ユースケさんは 25歳の成人ですが、片やリンピンさんは、女子高生と伺いました!!これって法律に触れませんか? どうお考えですかっ!?結婚なさる御予定があるんですかっ!!」


「答えて下さい!! リコピンさん!!あなた自身のファンの方々に対しても説明責任があるでしょう!!」


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