第2話 : スターライト・エクスプレス ( 4 )




 階段を下りながら怒りの余り彼は、一度スロープを殴る。


「チキショー!!何だ!!あの澄ました態度わっ!!これだから女は信用ならんのだ!!幾らでも演技をしやがる!!者のクセに、者ブル芸当なんて朝飯前だ!!


 人前でハバカらず、大泣きしていても、そもそも本人が何の理由で涙を流していたのか平気で忘れてしまう生き物だ!!


 クッソウ … ああ … ナンテ日なんだ!! この後は、学園に帰り次第、私の温室を壊した 犯人捜しだ…。


 サユリの奴、私の言いつけた通りに出来ているのかぁ? また、私を落胆させるなよ!!」


 憤怒フンヌで顔を紅潮させながら急いでビル外に。やがて通称メイド通りを足早に行く途中、大勢のカメラマンやマイクを握ったテレビクルーと、すれ違っていたのだが、彼の目には一向に入ってはいなかった。




 残された店内の客及びメイド達は、今のやり取りを見ており、彼女が受け取ったものが何であるのか、興味津々なのである。 その一人でもあるクララが、皆の代表者として単刀直入に、リコピンに聞く。


「 今の人 … だれ?」


 皆も一同、うなずく。


「うぅぅん … 私の御主人様 … なのだ … けれど … 」


 リコピンは曖昧アイマイに答える。


「名前、覚えてないの? ちょっと、そのみせて。」


 クララは受け取り、表に印刷された表示を確認する。


「 秋葉児童養護学園 学園長 日向﨑 誠 その他には、学園の住所と電話番号が記載されてるわね …

 ああ!! 思い出した!! リコピン!!今の人、どこかで見た事あるなと思っていたのよ!!」


 と、印刷表示に指を指しながら興奮気味に言う。


「ほらほら… リコピンが入店した当初、私達メイド全員で、ボランティアイベントを企画した事があったじゃない!!


 覚えてる?この近くの児童養護施設にウカガったの? そこの学園長さんよう!!男性にしては、綺麗な指が特徴なのよ!! 間違いないわ!!」


 得意気に、クララが解説する。


「ああっ!! そっそうだったわね … でも … これ … 」


 困った様子で封筒を見つめる。


「ネェネェ! 中、開けちゃおうよ!この厚みといい、お金だったりしてっ!! うらやまし~ぃ!!」


 人ごとだけに、クララがはしゃぐ。


「ええ … 分かったわ。 プレゼントを皆の前で確認する事は、お行儀が悪いのだけど … この際、仕方ないわね …」


 リコピンは、素手で封筒の端からビリビリと裂いていく。 店内の皆、何が出て来るのか固唾カタズを飲んで見守る。



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