第2話 : 姉妹 ( 7 )




 黙って出ては来たものの、やはりどこか姉には常に申し訳なく思っている…


 しかし、それを口に出してしまうと、たった30分早く生まれて来ただけなのに「お姉さんは優秀で妹の方は …」と周囲からの口に出さなくとも伝わる、あの言われ無き圧力に屈する様な気がして、どうしても素直になれないのだ。


 また姿までも全く同じなのが、劣等感を更に刺激する。 私が双子である事は、姉とは通う学校が違う為、幸いに友人の一部が知っているだけで、恋人の彼にさえ話していない。


 加えて、母の死因は自分に有る事、それを周りが直隠ヒタカクしにして、あの妙な圧迫感を反転、れ物に触る様な不自然な態度を理解するまで、私は知らずに彼等の瞳の中で悲劇の少女を演じていた。 勿論、皆、私の事を思っての配慮だと理解はしている。


 しかし、私はもう″ 子供 ″では無い。事実上、私は母に成ろうとしている。 あんなに、恋しくて、会いたくて、会いたくてたまらなかった母 …


 その母に自分自身を重ね合わせると、生まれて来る子の命が如何イカに大切で愛おしいか、理屈では無くカラダの奥より深く実感出来る。




 バスがやって来た。 向かう先の『秋葉児童養護学園』まで約40分程の道のりだ。


 席に着き、横の二人掛けに目をやる。すると、そこには幼稚園の帰りであろう。お母さんを中心にして左右二人の女の子が気持ち良さそうに、うたた寝をしている。


 ついウラヤましい気持ちになり見つめていると、大きなお姉ちゃんと目が合ってしまう。 ちょっと気まずかった為に、愛想笑いをしてしまったが、当の女の子はそんな事は、お構いなしで満面の笑みで返してくれた。





「 ああ … やはり今夜は早く帰ろう … 」





 バスは、万世橋を渡りきった。


「次は~ 、秋葉3丁目 秋葉、駅前中央通り~」


 この停留所から児童養護施設まで、徒歩6分くらいである。


 ギリギリ間に合った …


 と、言うのも本日学園では、施設長であり学園長でもある日向﨑 ヒュウガサキマコト 先生に、永年にわたる児童福祉と教育現場における多大なる功績を認められ、東京都より都民栄誉賞を授与される事と相成アイナった。


 リコも、この名誉ある式典に参列させて頂く事となる。


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