第2話 枝豆は万能なのですカピね!
さて、家に帰って早速枝豆の下処理である。
まずは塩を揉み込む、鞘同士を擦り合わせる様にしっかりと。
それを良く
それを蒸して行く。大きな鍋に少量の湯を沸かし、ボウルと笊ごと枝豆を入れ、
蓋を開けて、ボウルは残して笊ごと枝豆を取り出し、そのまま冷まして行く。その間にもじんわりと火が通る。
「へぇ、綺麗な緑色だ」
カロムが感心した様に声を上げる。
「塩をしっかりしてるからね。味付けも兼ねてるよ。早速味見をしてみようか」
カロムと1鞘ずつ取り、指を使って中の豆を押し出すと、ぷるんと綺麗な緑色の枝豆が顔を出した。
「グリンピースよりも淡い色なんだな。形はまぁ、そりゃあ大豆と変わらんか。こっちの方が大きいが」
「大豆は乾燥させて水分を抜いてるから、その分小さくなるんだろうね。じゃあいただきます!」
「いただきます」
待ちに待った枝豆だ。浅葱は鞘に含められた塩分とともに枝豆を1粒2粒3粒と、鞘に入っていた分全てを続けて口に放り込む。
浅葱は嬉しくなって眼を細めた。
「ああ〜美味しい! やっぱりこれだよ!」
「成る程な、これは確かに旨い。エールに合うって言ってたが、このままでも充分だな。良いおやつになりそうだ」
カロムも満足げに頷く。
「これはこのままで食うだけなのか?」
「ううん、いろいろな食べ方があるよ。まずはこうして蒸すか茹でるかしなきゃだけど。そうだなぁ、今夜は2品作ってみようかな。蒸しただけのものも勿論出すよ。エールとの相性を見てみて欲しいからね」
「楽しみだ」
「じゃあ早速手伝って欲しいな。料理に使う分を鞘から出したいんだ」
「良し、分かった。とっととやっちまおうぜ」
浅葱が蒸しに使った鍋から既に冷めたボウルを取り出し、布で水分を拭ったら、ふたりでそこに枝豆の
さて、夕飯の調理開始である。カロムのお陰で枝豆はそう時間も掛けずに鞘から外す事が出来た。ボウルの中で
まずは
オリーブオイルを引いた鍋ににんにくを入れて弱火でじっくり炒め、香りが立って来たら玉葱を入れる。しんなりと透明になるまで炒まったら豚肉を入れて、しっかりと炒めて行く。
火が通ったらマッシュルームを加えて更に炒めて行く。マッシュルームが汗をかいて来たら赤ワインを入れてしっかりと煮詰める。酸味が飛び甘い香りがして来たら、ブイヨンをひたひたより少なめに入れる。沸いて来たらトマトを加えて煮込んで行く。
さてその間にもう1品。
フライパンにオリーブオイルとバターを引き、烏賊を炒めていく。大方火が通ったら鞘から外した枝豆を烏賊と同量程度入れ、炒めて行く。
烏賊に火が通り枝豆が温まったら塩
まずは1品目、烏賊と枝豆のバターソテーの完成である。
さて、煮込みも仕上げに入る。充分に煮込まれているので、そこにも枝豆を入れる。ざっと全体を混ぜたら味を整える。砂糖を少量、塩と胡椒。
豚肉とマッシュルームと枝豆のトマト煮込みの出来上がりだ。
「へぇ、緑が淡いからかな、トマトの濃い赤に良く映えるな」
「うん。我ながら美味しそうに出来た」
「アサギのトマト煮込みは裏切らないからな。絶対に旨いだろ」
出来上がった2品と枝豆の塩蒸し、そしてエールをトレイに乗せて、食卓へと運んで行く。カロムがテーブルに並べてくれている間に、浅葱が研究室にロロアを呼びに行った。
「ロロア、ご飯が出来たよ」
ドアをノックして言うと、「すぐに行くのですカピ」と中から返事があった。
「慌てなくて大丈夫だからね」
そう声を掛け、浅葱は食卓へと戻る。カロムはテーブルの脇で立って待っていてくれた。
「ロロア少し手が離せないみたい。て、あれ?」
浅葱がそう言った時、ロロアが食卓に入って来た。
「お待たせしましたカピ」
「大丈夫だったの? 何か途中だったんじゃ」
「大丈夫なのですカピ。ご飯の方が大事なのですカピ」
ロロアは言うと、ひらりと椅子に上がった。浅葱とカロムも席に着く。
「じゃあいただくか!」
カロムの言葉で浅葱たちは両手を組む。神に祈りを捧げ、次にはいただきますと手を合わせる。
まずは皆でエールをぐいと一口。
「ぷはぁ! 美味しい!」
「ああ、旨いなぁ!」
「美味しいですカピ!」
「じゃあ枝豆、蒸した枝豆食べてみて。で、またエールを飲んでみてよ」
「おう。ロロア、剥こうか?」
ロロアには村から帰って来た時に枝豆の事を伝えていた。
「多分自分で出来ると思うのですカピ。やってみるのですカピ」
ロロアは研究で両の前足を器用に使うので、枝豆を鞘から外す事ぐらいは朝飯前だろう。
枝豆の剥き身を口にする。浅葱などは2鞘続けて食べてしまう。そしてまたエールをひとくち。
浅葱はその組み合わせの素晴らしさに、「んんっ」と眼を閉じた。
「やっぱり良いなぁ! ビールと枝豆、合うなぁ!」
するとロロアとカロムも「んっ」と眼を見開いた。
「本当だ。これは合うなぁ! こんなシンプルな豆なのに、こんなにも旨い」
「そうですカピね! とても合いますカピ。ビールも枝豆も美味しいですカピ!」
「ふたりとも気に入ってくれた? 嬉しいなぁ!」
浅葱は笑顔で言って、また枝豆を手にした。
「飯の前に食うのにも丁度良いな。前菜ってところか」
「僕の世界でも、そんな感じで枝豆を食べる事が多いかなぁ」
「これは止まらないですカピね」
ロロアも言いながら、またその手が枝豆に伸び、器用にその手で枝豆を剥いた。
「枝豆はエールもそうだけど、お酒との相性がとても良いんだ。アルコールの分解を助けてくれるんだよ」
「そうなのか。そりゃあ何か安心だ」
そうしているうちに、当たり前だが塩蒸しの枝豆はからっと空いた。
「何か終わっちまうのが勿体無い気がするな」
「そうですカピね」
カロムが「はは」と笑い、ロロアは少し残念そうに眦を下げる。
「サリノさんまた来てねって言ってくれたし、また譲ってもらえると思うから、また蒸すよ。それよりも、今日は他の枝豆料理もあるんだからね」
浅葱が言うと、ロロアとカロムは「そうだった」「そうでしたカピ」と、早速スプーンを取った。
そして眼を見合わせたふたりは、示し合わせた様に烏賊と枝豆のバターソテーを前にした。烏賊と枝豆を合わせて
「へぇ、塩で蒸したのも旨かったが、バターの味付けも良いな」
「ぷりぷりの烏賊との歯応えの違いも面白いですカピ」
「だな。烏賊の味が淡白だからか合うな」
気に言って貰えた様だ。浅葱はにっこりと笑みを浮かべる。
「じゃあ今度はトマト煮込みだな。と、ああ、こっちも良いな。トマトの軽い酸味と枝豆の甘味が合うんだな。うん、凄い旨い」
「豚肉と食べても美味しいのですカピ。枝豆は万能なのですカピね!」
ロロアの言葉に浅葱はまた嬉しくなって、「えへへ」と照れた様に笑う。
畑まで直接行かなければならないのは手間かもしれないが、そんなのは
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