一六 勝田台駅

 日暮里駅を出て約四〇分後、佳奈と舞桜は勝田台駅に着いた。


「さてと、ここからバスかぁ。遠いとは言われてたけど、本当に遠いね」


 南口のロータリーに出て舞桜がぼやいた。


 周りを見回すと、チラホラシャッターが下りている店がある。


「佳奈ちゃん、バスまで少し時間があるから何か買っていこうか? お昼は永遠ちゃんが用意してくれるみたいだし」


「そうですね」


 舞桜がスマホで近くにヨークマートを見つけたので、そこに向かうことにした。


  え?


 裏路地に入ると、佳奈は視界の隅にキツネのような動物が見えた気がした。


 振り返って確かめるがキツネはおろかノラ猫すらいない。


 背筋をさむが走り、思わず包帯を巻いた右手を抱きしめる。


「どうしたの?」


 舞桜の声に我に返る。


「いえ、なんでもありません……」


 佳奈は小走りに舞桜を追いかけた。

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