第386話 速水家①
◆速水家
佐藤が速水さんの次に声をかけたのはヤヨイだ。
速水沙織の言ったことは当たっていた。
佐藤は、あのヤヨイにちょっかいを出して、蹴飛ばされた。
僕は「あくまでも噂レベルの話だ」と前置きをして話した。
「面白い顔の佐藤くんが女の子に蹴られたの?」
速水さんは驚きの表情を浮かべた。僕は「佐藤は決して面白い顔ではない」と擁護しておき、
「佐藤を蹴ったその相手は誰だと思う?」
速水さんは眉をしかめた。およその推測がついたのかもしれない。
「そう訊くからには、私の知っている人なんでしょう?」
「ああ、そうだ」
速水さんは僕の目をじっと見つめた。まるで僕の頭の中にあるヤヨイの顔を読み取るかのような瞳だった。
しばらくして速水さんは口を開いた。
「・・ヤヨイ義姉さんね」
僕は「ああ」と頷いた。
僕はその話だけではなく、キリヤマたちの遭遇の話から全て話した。当然、僕が透明になった話もした。
その間、速水さんは言葉を挟むことなく黙って聞いていた。
透明化した僕の存在をヤヨイが感じ取っていた話をした時も、驚きの顔を見せずに聞いていた。
全て話し終えると、速水さんは深い息を落とし、
「鈴木くんらしい展開ね」と言った。
やはり速水さんの反応には少し違和感がある。僕がヤヨイに遭遇したことを聞いても、速水さんはそれほど驚いてはいない。
「僕らしいって?」
「私の養父を殴ったこと、更に、ヤヨイ義姉さんに関わったこと・・本当に鈴木くんらしいわ」
そう言った速水さんの顔は少し悲しそうに見えた。
「別に僕らしくなんかない、自然の流れだった。それに水沢さんといる所へヤヨイさんが現れたのは不可抗力だ。僕の意志は関係ない」
と僕が言うと、
速水さんは「ふっ」と小さな息を吐き、「いずれにしても」と一呼吸付き、
「今後、鈴木くんらしい行動は、もう控えてちょうだい」と強く言った。
「控えろ、って言われても・・」
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