第320話 合同読書会②-4
合同読書会・・心配された小清水さんの多重人格のヒカルかミズキのどちらかが登場することを危惧していたが、何事もなかった。僕が少し取り乱しただけに終わった。
サークル部員たちは大満足の様子だ。青山先輩は速水部長と何やら話し込んでいるし、小清水さんには笑顔が溢れている。和田くんも小清水さんの騎士的役割を果たせて良かった。
一方、向かいの席では、茶髪の榊原さんが髪を指で髪をくるくる回しながら、欠伸連発男に、「阿部は、もっと読書会に出ておいた方がいいんじゃないの?」と戒めている。彼は読書会経験が少ないようだ。むしろ榊原さんの方が読書経験が豊かに思えた。
色々とあったが、神戸高校に抱いていたコンプレックスは、きれいに無くなったようだった。学力は差があるが、少なくとも文学に於ける感想や考え方には大差ないようだ。
加えて、神戸高校文芸部は、女性陣の方が圧倒的に優れている!
「みんな、長い時間、お疲れさま!」
両部長が声を合わせて言った。
神戸高校の部長の真山さんは、速水部長に「なかなか楽しかったよ」と言って「速水さんの所にはいい部員がいるね」と小さく言った。
そして、僕に向かって、
「鈴木くんの激しくかつ何かの思い込みのような発言も面白かったよ」と言った。
小清水さんが横でクスクスと笑った。
小清水さんの笑顔に。これまでの不快な気分や緊張が一気に解けたような気がした。
同時に、肩の力が抜けたように、一気に眠く・・
まさか、あと数分で透明化?
カフェインの効力がもう切れたっていうのか?
透明化はしないと思うが、不安になった僕は部長に断り、トイレに向かったが、幸いにも透明化はしなかった。部室に戻ると、神戸高校の部員たちは帰った後だった。学祭の催しに向かったのだろう。
その時、僕は思っていた。
・・最近、体が透明化していない。
もしかしたら、症状が治ったんじゃないのか?
それだったら、大いに助かる。透明化能力があってもロクなことがなかった。佐藤の裏の顔が見れたくらいだ。
透明化していれば、水沢さんには僕の心が伝わると思っていたが、それも無かった。
症状が無くなれば、こんなにいいことはない。体に悪いカフェインを飲む必要もない。
だが、この後は青山先輩との校内巡りだ。また透明化しないとも限らない。
念のためにカフェインを飲むことにしたが、今回は半分にしておいた。ま、学祭のような賑やかな場所では眠くなることもないだろう。
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