第252話 大暴露読書会①-2
「沙織、沙希ちゃんのことは大体想像がつくが、どうして、鈴木くんまで鈍感なんだ?」
最もな疑問だ。
「あら、鈍感で言えば、青山さん。あなたも同じね」
「私が?」
青山先輩のどこが鈍感なのか分からないが、青山先輩は、
「沙織の方こそ、鈍感だろう。私が・・これほど・・」
青山先輩は、「これほど、私は沙織のことを心配しているのに」そう言いたいのだろう。
だが、今はそんなことよりも、
「その話、読書会とは関係ないと思う」
僕がきっぱりと言うと、二人は真顔で僕に向き直り、
「これは私たち二人の問題よ!」と、声を合わせて言った。二人の美少女に同時に睨まれるとかなりの迫力だ。
二人の迫力に和田くんが驚き、小清水さんが目を丸くしている。
それでも僕は二人に、
「いや、二人の話は単なる内輪もめで、梶井基次郎の『檸檬』から話が飛んでいるよ」と言った。
「鈴木くんの言う通りだよ!」と和田くんが僕に同調する。
「でも、なんか面白い」と、微笑みに転じる仏の小清水さん。
すると和田くんが「やっぱり、話が飛ぶ方が面白いかもしれないね」と言い改めた。やはり、彼には自分というものがない。
速水さんと青山先輩は、小清水さんに「面白い」と言われたのをいいことに、
「青山さん、私は未だに憶えているわよ」
「沙織、私もだよ」
二人にしか分からない会話を始めた。
「青山さんのお父さんが、先に手を出したんじゃなかったかしら?」
速水さんが先に切り出すと、
青山先輩は「その話か・・」と受けて、
「いや、沙織のお母さんが誘惑してきた・・私はそう聞いているよ」と話に乗った。
どうやら、昔の話をほじくり出してきているようだ。だが、そんな話をしても何の解決にもならない。
「二人とも、過去のことは、もういいじゃないか」僕は二人をなだめるように言った。
すると、
「よくない!」と青山先輩。
「よくないわ」と速水部長。
見事、二人に一蹴された。
次第に僕も腹が立ってきて、
「男と女のことは、第三者があれこれ言っても分からないものだと僕は思う」と強く言った。
「私たちは第三者じゃないわ」と速水さん。
「そうだよ。当事者だ。二人とも娘なのだから」と青山先輩。
「いや、そういう意味じゃなくて、二人とも自分の親がどんな風に恋愛をしていたかなんって、分かるはずもないだろう」
僕の言葉に、青山先輩が「それもそうだが・・」と言った。
これで治まるかと思いきや、
「あら、鈴木くんは、大好きな人・・本命の水沢さんに・・」と話を切り出した。
水沢さん!
話が飛んだぞ。飛び過ぎだ。どこでどうしてそうなる!
小清水さんが「えっ、水沢さんに?」と訊いた。
速水沙織は、小清水さんの質問にここぞとばかりに、
「その水沢さんに、『好きかも』って言われたのだから、さぞかしご満悦でしょ」と言った。
「おいっ!」
速水さん、何てことを言うんだ! それは、ここで言ってはいけないだろ。
小さく、「そ、そうなんですか」と言った小清水さんを和田くんが盗み見ている。
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