第29話 真夜中の夢

◆真夜中の夢


 そして、その日の夜、僕は夢を見た。

 場所はどこかの草原・・

 薄く霧がかかっている。空がどんよりとして、太陽が見えない。

 その中に一人僕は立っている。

 そう、僕は夢の中で草原の果てを眺めているのだ。

 はっきりとこれが夢だとわかる。

 こんな幻想的な風景は現実にはない。

 

 この非現実的な世界に、僕以外にもう一人いる。

 僕が眺めている先・・

 草原の果てには、一人の少女がいる。

 少女は後ろ姿だ。

 声をかけても、彼女は遠のいていく。

「待ってくれ!」逃げないで欲しい。

 少女は水沢純子・・

かと思ったが、あのポニーテールではない。

 けれど、僕はあの女の子の髪型は見たことがある・・

 ずっと以前に・・

 それは確実に僕の記憶に刻み込まれている。

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