第46話 エシル入団 1

 この日はレイ以来となるエレメシアスへの入団者がいた。その人物は今年で15歳となったエシルであった。


「お兄様!」


 エシルは兄、エクスを見つけると勢いよく抱きついてきた。


 2年前だったら、エクスはエシルの勢いを止めることができず、そのまま倒れ込んでいたが、レベルアップもあり、今日は受け止めることができた。


「エシル久しぶりだな。でも、あんまりこういうことは、その、恥ずかしい」


「そんなぁ、久しぶりに会ったのですから、今日くらいは許してください……だめですか?」


 そんな哀しそうに言われてしまってはエクスもだめとは言えず、それを許した。


「今日だけだからな」


「はい!」


 エシルそう嬉しそうにしていた。


「あのエクス、その人は誰ですか?」


 エクスは自分の妹ということがわかっているが、他の人には誰かわからず、レイがそう聞いてきた。


「ああ、すまん。エシルは僕の妹だ」


「はい。エクスお兄様の妹のエシルです。よろしくお願いします」


 エシルはエクスから離れて礼儀正しくそう言った。言い終わるとまたエクスに抱きついた。そこは自分のポジションだと言わんばかりに。


「それでその妹さん、今日はどのような用ですか?」


 アシルは名前が似ているからか、エシルとは言わず妹と言い、そんな質問をした。


「はい、今日はこのギルドに入るために来ました!」


「そうなんだ……はいぃぃぃ?!」


 エクスは最初流そうとしたが、エシルの言葉を理解すると驚きが勝り、変な声を上げた。


「私はお兄様と同じギルドに入るって決めていたので、今日からよろしくお願いします」


「いやいや、エシルの実力ならもっと良いギルドに入れるだろ!」


 そんな失礼なことを言うエクスに対してアシル達の視線は冷ややかなものになった。


「そんなこと言うならお兄様の実力なら、こんな底辺のギルドじゃなくて、もっと良いギルドがあるはずです」


「そんなことないよ。スキルがないせいでできない依頼もあるし、僕なんて才能はないよ」


 そんなことを言うエクスに対して、周りからは「お前が言うな」と言わんばかりに視線が鋭くなった。


「それはお兄様が自分の実力を理解してないだけです」


 そう言うエシルは意志が固く、ギルドを変える気は無さそうであった。


 しばらくエクスとエシルは言い争いをして、最終的にエクスが折れる形でエシルが入団することで話がまとまった。


「そんなことよりエクス、今日こそは私が勝つから!」


 レイはいつものようにエクスに対して模擬戦を申し込んだ。


 しかし、それを聞いていたエシルの目つきが変わった。

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