鬼面の欠片

将月真琴

 少年は人というものに飽き飽きしていた。

 少年の母親は少年を産み落としてすぐに蒸発した。

 父親はひたすらに育ててくれたのだろうが、小学校に上がるかどうかという頃にあっけなく体を壊して少年の前からいなくなった。

 その後、少年は親戚の間をたらい回しにされていたが、最終的には母親の遠縁に当たる人物に引き取られることとなった。

 その人物は有り体に言えば変人であった。

 だが、少年にとっては寝ることができる場所があれば家の中だろうが外だろうが興味はなかったので、住人とうまくやっていた、らしい。

 だがその住人もすぐに他界する。

 結果として彼はその住人の遺産を全て相続し、初めての自分の居場所を得るのであった。


 少年は自分の居場所を得たことを嬉しく思い、同時に煩わしく思った。

 でも、それだけだった。

 少年にとって、居ることの出来る場所は、ただの重荷であった。

 少年は、他人と違っていた。

 違っているから人から拒まれ、どうすればいいのか分からなかった幼い少年は、それを鏡のようにそっくりそのまま相手に返すようになった。

 気付けば少年の回りには壁しかなかった。

 だが、少年はそれでよかった。

 それ以外の人との関わり方を知らないから。

 体験したことの無いものは知らない。

 知らないものは実行できない。

 実行できないことは体験できない。

 無知であるがゆえの他人との関わり方を、少年は変えることができなかった。


 あの少女に出会うまでは。

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