第10話 ヘルム株式会社と黒髪美少女奴隷

池袋駅からアニメイト方面へ向かう途中の雑居ビルの中に、奴隷救出プロジェクトを運営しているらしい「ヘルム株式会社」はあった。


というか、ヘルムって会社名じゃねーか!!!


本当にここは、ヘルム国という国なのだろうか?

誰かに確認してみたいが、違った場合恥ずかしすぎるので踏み出せない。


夢の中だということも手伝ってるんだろうけど、怪しすぎるだろ……。

まあでも、今はそんなことはどうでもいい。

とにかく、敵の本拠地と思われる場所にたどり着いたのだ。


俺は改めて階数を確認し、雑居ビルの中に入――ろうとしたが、ふとあることに気がついてしまった。


「……入って、どうするんだ?」


シロの妹を返せ、なんて正面から飛び込んでも、返してくれるとは到底思えない。

そもそもここは、事務所かもしれない。

アポなしで部外者が入っていいところなのか?


夢の中とはいえ、何が起こるか分からない恐怖心が払拭できるわけではない。

変な力とか使われて、現実に戻れなくなっても困る。


俺は仕方なく、いったんどこかカフェでも入って考えようと踵を返す。

「きゃっ……」


……ん?


足元を見ると、1人の女の子が尻もちをついていた。


「ご、ごめん! 大丈夫?」


その女の子は、中学生くらいの、真っすぐで綺麗な黒髪が特徴的な美少女だった。

俺個人の好みで言えばシロには敵わないが。

しかしその差は好みの問題、といった程度の、超絶美少女だ。


「も、申し訳ありませんっ!」


女の子は、俺を認識するなり怯えたような目でそう謝罪してきた。


「ああ、いや、こっちが急に立ち止まったりしたから悪いんだし。こっちこそ、ごめんな」


そう答えてから気が付いた。

ノースリーブを着ている彼女の腕には、「52」という数字とバーコードのようなものが書かれていた。


いや、書かれていた、というより、刻まれていた。

なんだこれ? 焼き印ってやつか?


そしてふと辺りを見回すと、焼き印を刻まれている人たちは他にもいた。

それは大人だったり子どもだったり、男だったり女だったりと、性別も年齢も関係ない。

ただ、数字はすべて違っていた。


……もしかしてこれは、奴隷の証ってことなのか?

さすがの俺でも、これまでの流れで何となく予想がついた。


……シロにもついてんのかな?


シロは最初会った時はTシャツを着ていたし、その後買い与えた服もノースリーブではなかったため、シロの番号は見たことがなかった。


「あの、もしかして、ヘルムって会社の子?」


俺は思い切って、黒髪美少女に聞いてみた。


「えっ? は、はい。そうです」


まじか。ビンゴ!


「ネットで見かけて、近かったから寄ってみたんだ。ここって事務所なのか? それとも、ここで買うこともできるのか?」

「買うこともできますよ。見ていかれますか? よろしければ、ご案内します」


さて、どうするべきか。

黒髪美少女は、俺の様子を窺っている。

まあ夢なんだし、せっかくだから見ていくか?

何か情報が掴めるかもしれないし、街中でここまでオープンに連れ歩いてるってことは、この世界では奴隷を買うのは普通のことなのかもしれない。


「じゃあ、お願いしようかな」


俺は覚悟を決めて、黒髪美少女に案内してもらうことにした。

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