第8話 これが父性本能ってやつなのか?

「国が危機的状況だってのは、どれくらい危機的なんだ? その国が滅びたら、おまえや妹含め、そこの世界の住人は死ぬのか?」


「ごめんなさい。私はただの奴隷なので、具体的にどのくらい危機的なのかは分かりません。国が滅びても、私はユーヤ様と契約しているので、こっちで生き残れるかもしれません。でも妹含め、契約していない人たちは、無理だと思います」


まあ生きる場所がなくなるわけだし、そりゃそうか。


「例えばさ、俺は寝てる間って、今もそのヘルム国とやらにいるんだろ? おまえが寝てる間の俺を誘導してくれれば、向こうの調査もできるんじゃないのか?」

「この世界とヘルム国を自由に行き来できるのは、こちら側の人間だけなんです。私は夢を見ないので、こちらにいる間……つまりユーヤ様を殺すまでは、帰れません」


お、おお……。

俺は、自分があんなサイトに飛んで過ちを犯したことを激しく後悔した。


だが、今更後悔してももう遅い。


「じゃあさ、俺、寝てる間にヘルム国を調査してくるよ」

「ふえ!? で、でも、人は夢の中では行動も状況も選べないって、夢を見たことすら忘れてしまう場合が多いって聞きました」


「まあ、そうなんだけどさ。でも改善策はあるらしいんだよ」


昔、夢の中で夢だと気付ければ、思い通りに動けて夢の世界を満喫できるのでは?と思い、情報を漁ったことがあった。


「まずは現実で、常に『これは夢じゃないか』と確認するクセをつける。リアリティチェックっていうらしい。すると、夢の中でも自然とそれをするようになって、夢に気付けるんだってさ」


まあ、当時は情報を漁っただけで、結局試すには至らなかったのだが。

でもやってみる価値はあるだろう。


「……分かりました。私も本当は、ユーヤ様のこと殺したくないです。だってこんなに優しくしてもらったの、初めてなんです。なので信じて少し待ってみます」

「なるべく早急にことを進めてみるよ。信じてくれてありがとな」


そうシロの頭を撫でると、シロは少し戸惑いながらもとろんとした目でそれを受け入れる。可愛い。


妹が生きている可能性は、正直言って低いと思う。

でも今は、シロが心から笑えるように、俺にできることは少しでもしてあげたい。

シロと暮らせば暮らすほど、シロのことを知れば知るほど、そんな思いが強くなっていく。


……誰かに対してこんな気持ちになるのは初めてだな。

あれか? これが父性本能ってやつなのか?


まあ何がどこまでできるかは、分からないけれど。でも、やってやろうじゃないか。


俺はこの日から、まずは明晰夢を見るための訓練を始めた。

明晰夢というのは、自分が「これは夢である」と自覚しながら見る夢のことだ。

これができるようになれば、夢をコントロールしやすくなるらしい。

家にいる間だけでなく、大学にいる間や外出時、買い物中、風呂、トイレ……あらゆる場面で、定期的にリアリティチェックをおこなった。

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