第7話 暗殺未遂の理由は…

「……私がここに来たのは、ユーヤ様を殺すためです。私には妹がいて、ユーヤ様を殺さないと妹が殺されてしまうんです」


そう話したシロの目には、涙が浮かんでいた。


「人質に取られてるってことか? なんでそんな……。俺、おまえの国の主に恨まれるようなこと何かしたか?」


夢の世界、ヘルム国がどういう国なのかは分からないが、夢の中での行動にまで責任は持てないので、もしかしたら何かしたのかもしれない。


「いえ、ユーヤ様はまったく悪くありませんし、何もしてません。……実はヘルム国は今、深刻なエネルギー不足に陥っているんです」

「エネルギー不足?」


「はい。私たちの国は、エネルギーで満たされています。ここでいうところの空気みたいなものです。でも最近、エネルギーの質が低下しています」


地球でいうと、大気汚染的なやつだろうか。

だが、なぜそれで俺が殺されることになるのか。

至って普通の人間である俺に、特殊な浄化能力があるとも思えない。


「このままではヘルム国存亡の危機だということで、研究者たちがエネルギー不足の原因を探っていたんです。そして原因は、人間の睡眠時間の減少と質の低下にあることが分かりました。私たちヘルム国の住人は、自らエネルギーを生み出すことができません。人間がこちら側に来ることでのみ、力を得ることができるんです」


なるほど。

まあ夢っていうのは、元々人間の脳が作っている幻想らしいし。

言っていることは分からないでもない。


「でもじゃあ、殺したら駄目なんじゃないのか? 死んだ人間は夢なんて見ないぞ」

「……そうなんですが。でも人間を殺して永遠の眠りに就かせて、元々その人が持っていた寿命を回収することで、それがエネルギーに変換できるというのが分かったんです」


そんな滅茶苦茶な……。


「その回収作業を、おまえら奴隷が請け負ってるってことか?」

「そうです。買い手がつかなかった売れ残りの奴隷は、処分品として無料でばらまかれて、この回収作業をすることになります。私たちヘルム国の住人は、自分たちの力ではこちらに来ることができません。こちら側の人間に認知され、夢の中で契約することで、初めて移動が可能になるんです」


「なるほど。っておまえもしかして、既に誰か殺して……」


俺が大学に行っている間や出かけている間、こいつはいつも1人だったはずだ。

黙ってここを抜け出して殺す時間くらい、いくらでもある。


が、それは考えすぎだったようだ。


「契約した相手以外を殺してもダメなんです。ヘルム国で契約をしてからでないと、エネルギーは回収できません」


あの不謹慎なエロサイト紛いなものに、そこまでの効力があったなんて。

下心で可愛い女の子を自分のものにしようなんて考えた罰が当たったのだろう。


でも、だからって殺されてやるわけにはいかない。

俺だってまだ死にたくない。


「とりあえずさ、おまえは妹を奪還できればいいんだよな? だったら一緒に考えようぜ」

「……ありがとうございます。でも、考えてどうにかできるでしょうか」


シロは、絶望したような目でうつむく。

だが、命がかかっている以上、諦めるわけにはいかない。

それに、俺を殺して終わりだとも思えない。


そもそも、シロの妹は本当にまだ生きているのだろうか?

こんな見知らぬ土地の見知らぬ男の家に、幼い女の子をいかがわしいアタッシュケースとともに放り出すような奴らだ。

実はもう殺している、という可能性だって大いにある。


しかし、今のシロにそんなことを言う勇気は、俺にはなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます