第3話 奴隷を扱う3つのカード

「ユーヤ様は、きっと奴隷を持つのは初めてですよね?」

「お、おう」


当たり前だ。


「では、簡単にご説明します」


シロはそう、持ってきたらしいアタッシュケースをテーブルの上に置き、開ける。

そこには――

「おおおおおおい!!」


俺は慌ててそのアタッシュケースを閉じる。


「……? ど、どうされましたか?」


俺の反応に驚いたのか、シロはきょとんとしている。


「こ、子どもがこんないかがわしいセット持ち歩いちゃいけません!!」


アタッシュケースの中に入っていたのは、手錠や縄、鞭、ろうそくから猫耳、犬耳、尻尾、メイド服など、いわゆるアレなアイテムだった。


「ふえ!? で、でもこれは必要なセットだって……。それに私、その、大丈夫ですよ?」

「俺が大丈夫じゃねええええええええ!」


俺が大声で叫んだせいか、シロはびくっとなって涙目になってしまった。


「ああ、いや、ごめん。つい」


というか、そんな可愛い顔で見つめないで。

犯罪者になったらどうする。

こんな、こんな……


なんて拒否しながらも、何気なくもう一度アタッシュケースを開ける。

これは決して使いたいとか、そういうことじゃない。

ほら、ほかにも何か入ってるかもしれないし?


「……って、なんだこのカードの束」


いかがわしいアイテムの端に、カードの束が入っていた。

サイズや厚みは一般的なトランプくらい、枚数もちょうどそれくらいのように見える。


「それは……私を使うためのカードです」

「使うためのカード? おまえモンスターか何かなのか?」


俺は、某ターン制のカードゲームを思い出し、そう聞いてみた。


「も、モンスターじゃないです! 奴隷です!!」


モンスターと奴隷どちらがマシなのか怪しいものだが、シロはそう頬を膨らませる。


「ごめんごめん。そうだよな。こんな可愛いモンスター、いるわけないよな」

「か、かわ……!?」


シロは、今度は真っ赤になって口をパクパクさせている。忙しい奴だ。


カードを見てみると、片面はすべて同じ模様、そしてもう片面には、何やらイラストが描かれている。

水のマークや炎のマークから、触手や拷問器具のようなものが描かれたものまで様々だ。


「カードには何種類かあって、通常カード、特殊カード、お仕置きカードがあります」

「へえ。攻撃とか防御じゃないんだ?」


「攻撃? ユーヤ様は、何かそういう職業の方なのですか?」

「いたって普通の大学生です」


いい歳して壮大なファンタジー的展開を想像してしまった自分が恥ずかしい。


「通常カードは、火や水、風などを起こすカードです」

「例えばどんなことができるんだ?」


「お肉を焼いたり、洗濯したりできます」


シロはここぞとばかりにアピールしているつもりらしいが、正直あまり魅力は感じない。

うちには、コンロも洗濯機も健在だ。


「じゃあ、特殊カードってのは?」


本当は最後のカードが一番気になるが、気持ちを落ち着けて順番に聞いていく。


「特殊カードは、私をどこにでも瞬時に召喚したり、私に強制的に何かをさせたりすることができるカードです。もちろん、私に可能な範囲のものに限りますが」


例えば、「飛べ!」とか「100万円出せ!」とか、そういうのは不可なのだろう。


「じ、じゃあ、お仕置きカードってのは?」

「お仕置きカードは、私に罰を与えるためのカードです」


いや、知ってたけどね?

アタッシュケースにあんないかがわしいものを詰め込んで持たせるような世界だし、そうだろうと思ったけどね!?


「例えば、拷問器具だったり、触手だったり、拘束だったり、いろいろあります」


さっきのあれか。

てか触手って。

エロゲの世界じゃねーか。


「ど、どんな効果があるかは、その……」


シロは涙目で真っ赤になり、しどろもどろ説明しようとしている。


「いや、言わなくていいから!!」

「ふえ!?」


危うく、こんな幼気な少女にとんでもないことを言わせるところだった。


「とにかく分かった。このカードとかその他もろもろは、俺が預かっとくよ」


万が一友人が来るとかそういう事態になった時、こんなものが部屋にあったら俺の大学生活が終了する。

これはクローゼットの奥深くにしまっておこう。


「はい。それでは、よろしくお願いいたします。ユーヤ様」

シロは改めてこちらに向き直り、きちんと正座をして頭を下げた。


「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」

何となく、釣られて俺も同じように頭を下げた。

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