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「園長は甲乙たけしの父親だからさ」
「は」
「顔顔。頑張っても綺麗じゃないんだから。顔直して」
開きっぱなしの口を閉じ、顔を直し、
「甲乙さんと園長さんって、親子だったんですか!」
「そうですよ。息子ということを隠して働かせてたんでしょうね。だからこそあの小屋を任せていたわけですよ。普通に考えてあの小屋を使いたい人はここには結構いるはずでしょう? ここは研究者が多いんですから」
園長は自分の息子が何か儀式的なことをしているのに気づいていた。しかし息子に対し負い目を持っていた園長は気づいていても強く言えず、更に警察沙汰にしたらここを辞めさせなければならない。そうなると次の就職先がどこもなくなってしまう。今後の人生を考えた時、やはり自分の目の届くところに置いておいたほうがいいと考えた。
しばらく時間を置けば変な儀式はやめるだろうと思っていたが思いのほか彼はエスカレートしてしまった。最初はおそるおそるだったと思う、しかし人はエスカレートする。悪いことなら更に。
「悪い噂は広まるのが早い。園内にもその悪い噂は広がった。と同時期に動物の窃盗が始まった。盗みは更にひどくなった。自分では止められない。これでは収拾がつかないと焦った園長はつてを頼って僕のところに話しを持ってきたわけですよ。いい迷惑ですよ。ねえ、そうでしょ園長」
小屋を出たところで出雲さんは小屋の扉の裏側に向かって声をかけた。しばし後、観念した形で背を丸めて出てきた園長は目に涙をいっぱい溜めていた。帽子を取り、「本当に申し訳ありませんでした」と九十度に腰を折って頭を下げ続けた。出雲大社は甲乙たけしを見る目とはまた違った目で園長の薄くなった頭らへんに視線を落とし、
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