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甲乙は今耳に届いたあり得ない言葉に涎を垂れ流し涙を流し失禁した。
「そんなこと……ない。誰にも人の寿命は分からないんだ。お前に俺のことが分かってたまる……か。俺は今まで喰ってきた動物の命を貰ったんだ。絶対生きられる」
「そう思うならそうやって思っていればいいさ。さ、朝倉君、帰ろうか」
出雲大社は甲乙の横を抜け、くしゃっとなっている麻袋をそっと持ち上げた。そこには壁にべったりと張り付いて丸く小さくなって震えながら唸っている白猫の姿がそこにあった。白子さんだ。湖ははっきりとそう感じた。
「おいで」
恐怖に己の主人を認識していない白子は牙を出して威嚇した。それを軽く無視し、持ち上げ胸に抱いた。とたん、飼い主のにおいを認識した白子は大きく鳴きはじめた。
小屋の出口へと颯爽と歩いていく出出雲大社に置いて行かれないように湖は後を追う。
追いながらも残された甲乙のことが気になった。このままここに置いて行っていいものだろうか。後ろ手に縛られているから身動きがとれないだろう。
先に猿を抱えて戻った向井さんが警察に連絡しているのか。もしくは櫻井さんのどちらかがきっと園長にも連絡しているはずだ。
「これで園長も気持ちが変わるだろうね」
「……園長の気持ち? なんでですか?」
「君は本当にあれだね。なんで分からないのかが僕には分からない」
前を見ながらまたしても暴言を吐く。
「……わからないですよ。教えてくださいよ」
「まあ、いいよ」
そうなのだ、湖はこの場合、素直に開き直った方が出雲大社はすんなり教えてくれるという技を心得た。これだってジャッキーのおかげだ。彼は分からないことはちゃんと分からないと教えを願っていた。ジャッキーに学ばなければならないことがたくさんある。
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