四
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東関道は思いの外空いていた。成田空港方面へ向かう道のりの途中に覆面がいることが多いので気を付けてくださいと昨日木立に聞いていたが、運転するのは湖だ。法廷速度は守ります。そしてハンドルだって十時十分で握ってます。
『わ』ナンバーの白いプリウスの後部座席には白子が乗っていて、お菓子をぼりぼり食べながらミルクを飲んでいる。ちょっと食べちゃあ手を拭いたり顔を拭いたりとせわしない。そんなに気になるなら食べなきゃいいのに。もしくは食べ終わってから思う存分グルーミン……いや、綺麗にすればいいのに。と、心で思いながら、デリケートな問題かもしれないからあえて言わず、その辺に覆面がいないかにも気を付けた。
今日も出雲大社は不在だ。そのかわりの白子と共に向かっているわけだが、白子が一体何者なのか、いや、もう既に『ねこ』だってことは分かっているんどけど、なんで今人になっているのかすら不思議でならないが、湖がここで働きだしてからの中で、おばけという説明のつかないものや、しゃべる死体なんかも目の当たりにしているからか、白子が猫であろうとなんであろうとさして驚きもない。
ここまできたら出雲大社だって人であるかどうか怪しいところだ。
高速を降りてしばらく道なりに進むと『にこにこ動物園』この先左へ。といった大きい看板が建てられていて、いたるところににこにこ動物園の宣伝がなされていた。やはり千葉県民には人気のスポットだということが分かる。
山の中に入ったところで一枚木で作られている看板が視界に入った。
「白子さん、着きましたね。ここみたいです」
「高速降りたところからもう匂ってるから言わなくても分かるわ。猫の嗅覚ってすごいのよ」
「そうでしたか、それはすみません。白子さんて、猫なんですね」
いつ聞こうかタイミングをみていたところに自分からぺろっと行ってくれた白子は、「今更? おっそいわね相変わらず」となんとも答えようのない返答であった。
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