ねえ、魂の重さって知ってる? ヒトにおいてはね、死ぬ、つまり肉体に宿っている魂が肉体から抜け出るときにね……ああ、死後、身体中の水分や抜け出るべき質量が抜けきったあとのことだけど、そうすると、諸説あるんだけど、だいたい二十三から三十一グラム軽くなるんだ。それが魂の重さ。魂がどこから抜け出るかなんだけど、場所は頭。

 よく漫画とかでみかける魂ってあるでしょ、真ん丸くて尻尾があるような、あれと同じものが頭から白い水蒸気のような感じで上に上がってくの。最後の尻尾が頭から抜け出たあと、確実に体重は軽くなってる。


「っていうのをドイツの学者が被験者を募って、つまり、何人もの死んでいく人を写真で撮ってみて記録したものなのね、長くなったけど、だから僕はいると思うよ」

 すこぶる長い話を一気にまくし立てた出雲大社はやりきった感満載でコーヒーカップを持ち上げた。


「それで、出雲さんはそれを見たことがあるんですか」

 震えて掠れた声で問う高宮の拳はぎゅっと握りしめられている。

「たかが誰かが記した記録を読んだくらいで自分の能力だと思い込んで勘違いするような人じゃないと思ってるよ、少なくとも僕はね」

 コーヒーカップを丁寧に戻し、なんだか有耶無耶なことを言って誤魔化している。高宮の後ろの方に視線をやった。

 湖もすかさずそっちを見たけどやはり何もない。

 視線を戻せばバチっと目があって、

「朝倉君、コーヒー、おかわりもらえる? 熱めで」

『気が利かないね』といった顔で涼しげに笑われた。

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