もしかしたら会社から連絡が来てるかもしれない。この占い師が分かってるならもう答えだって出てるはず。それにインチキかもしれないし。確認はしてみるものだ。メールのお知らせがある。中をチェックして顔が青くなった。


 不採用。今回はちょっと……といったお断りお決まりの文面で書かれた内容のメールが届いていた。

 これでまた振り出しに戻った。

 実家暮らしならまだしも湖はとうの昔に家を出ている。両親とは不仲だったので家を出てからというもの一回も帰っていない。頼れる兄弟もいない。

 スマホをバッグにしまい、ぬるくなってきているコーヒーを一口飲み、近くに寄ってきていたコテツの頭を撫でる。


「というわけで、君、今日からここで働いていいよ」

 男の思いがけない一言に湖はゆっくりと男に目を向けた。頭の中で今しがた聞いたことばを反芻する。『働いていいよ』

「でもなぜ私がここで? 占いなんてできないし、何も見えないし感じないし、霊能力なんてないですよ」

「そんなことは期待してないよ」

「じゃあ何を」

「これ」

 点々と指さした先には、数匹の猫が戯れている。

 湖は可愛らしい猫から顔を横に動かし、(顔だけはちょっといい)変な占い師をうすら細い目で見てみる。


「猫の食事係とトイレ掃除係の募集しようと思ってたんだよね。丁度よかった。いいタイミング」

「猫のお世話係ですか。私、猫のお世話するんですか?」

「そう。猫、嫌いじゃないでしょ?」

「嫌いじゃないですけど。でも……」

 なんで猫のお世話?

「あ、あとあれ。コーヒー淹れる係も忘れないで」

「コーヒーってなんのために」

「君さあ、ここがどこだか分かってるよね。ここ、世間ではよく当たる占いの館って有名なんだよ」

「え、自分で言っちゃうんだ。それに占いの館なんですか。初めて聞きました。お告げカフェという話を聞いてますけど」

 占いの館(お告げカフェ)とはそのまんま霊的なものが占い師の目の前や耳元でごにょごにょと相談者の悩みやその解決法を話してくれる。

それをまんま伝えるといった内容だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る