第116話 戦端

 その次の日、織田信長は朝から将軍足利義晴から携帯という名の通信機に連絡が入り緊急事態が起こったということで呼び出され京の室町殿へと向かっていた。勿論、彩香は京で恋人に会われたら神が困るので訓練と称し尾張に残してきた。

 先日、朝鮮の王明宗の件を伝える為、京まで赴き将軍に朝鮮からの宣戦布告を伝えた。そして、今日の呼び出しだ。何か進展があったのだろうか。

 京へ着くと亜里沙とエリカと千奈はドラマを見ると言ってチナチアットに残った。

 織田信長と紫葵ちな、珠。そして、三好政勝と妻木の五人で室町殿へと向かうことにした。

 相国寺でチナチアットを降り、そこから何時ものように徒歩で室町殿へと向かう。

 信長一行が室町殿へ到着し将軍のいる部屋へと案内された。既にそこには先客がいた。その男はまだ若く十代に見えた。出家しているのだろう。頭は剃り上げられ白い 房主ぼうずが着るような格好をしている。


「良く来た。まぁ、久しぶりというほどでもないな。」


「そうだな、将軍。ご無沙汰はしていないな。それで何か朝鮮の件で進展があったのか?ところで、そこの若者は誰だ。」


「将軍様、だ、誰ですか、この横柄な小僧は。」


 この若者は将軍にまで横柄な態度を取る小僧を憎らしく思ったが、同時にその年の割にでかい態度を取る小僧に恐怖を感じた。目力が強く意思の強さを感じさせた。


「隆信殿、こいつは先日副将軍に叙任された織田信長だ。態度がでかくてムカつくだろう?」


「はい。あ、いえ。この方が副将軍の織田信長様。」


「それで、この若者は誰だ?」


「こいつは龍造寺のせがれ円月殿だ。小さい頃から出家しているのだが先日祖父の龍造寺家純殿と父の龍造寺周家殿が殺された。」


「ほぉー、お家騒動でもあったか?」


「いや、殺したのは朝鮮の兵だったそうだ。」


「朝鮮?到頭来たか。」


「そうだ、その後、朝鮮兵は圧倒的な火力で肥前を侵略したそうだ。そして、円月殿は数名でここまで逃げてきたそうだが途中、筑前、筑後も侵略されていたそうだ。毛利からの連絡が来ていないところから長門への侵略は未だのようだ。その事から朝鮮兵は九州をすべて侵略するつもりかもしれんな。だから今日信長殿を呼んだんだ。尾張の火力で朝鮮兵を撃退してくれ。」


「難しいな。」


「え?なぜだ。」


「今日、その事を話したかった。先日朝鮮が攻めてくるとは言っていたが詳しいことは言ってなかった。実は朝鮮の王明宗は神の生まれ変わりらしい。普通の火力では通じない。尾張の火力でも無理だな。朝鮮王明宗は日本に対して極度の悪感情を抱いている。この日本を侵略し日本人全員を奴隷にすると言っていたそうだ。」


「そ、そんな。それでは日本は朝鮮になってしまう。明の皇帝に助けを依頼できないだろうか。」


「陛下には昨日伝えた。朝鮮が日本を侵略し手薄になった時に背後から朝鮮を攻撃する手はずにはなっている。しかし、朝鮮を倒すのは難しいかもしれないな。ちょっと九州まで様子を見に行ってくる。」


「あの、今から様子を見に行くにしても戻って来るには数週間はかかると思います。即、兵を率いて朝鮮兵の撃破に向かう方が良くありませんか。」


 円月は信長の非現実的な何も考えていない言動に不信感を覚えていた。その為態度が辛辣になっていた。


「円月殿、大丈夫だ。一刻もあれば戻って来れる。」


「一刻?冗談でしょ。一国では、堺の港までもいけません。」


「だったらお前も来い。さぁ、行くぞ。紫葵、チナチアットを相国寺に降ろせ。」


「はい。すぐに。」


 こうして信長達は朝鮮に侵略された九州の様子を見に行くのであった。


 円月は、降りてきたチナチアットを見た時目を丸くして固まってしまった。まるで化け物を前にしたかのようだ。チナチアットに乗ることを極度に嫌がり、まるで化け物に食べられるのを拒んでいるように拒絶した。神の乗り物だとお茶を濁すとやっと安心したようで乗り込んだ。

 初めて見る未来の装備、特にモニターにうつるライオンに本気で怯えて腰を抜かしてしまった。


 九州へ到着すると、既に九州のいたる所で煙が上がっている。


 鹿児島まで到着すると鹿児島では今まさに戦闘が行われていた。朝鮮兵の先頭には朝鮮王明宗がいる。明宗が九州を蹂躙していた。巨大な火力で多数の兵が一瞬でただの炭に変わっていった。このままでは九州から人がいなくなる。ことはないにしても、男がいなくなり、朝鮮王のハーレムと化してしまう。対抗できるのは帰蝶だけかもしれない。というより他に対抗できる人間はいないし、能力を制限されている帰蝶でさえ対抗できないかもしれない。


「どうする、帰蝶、朝鮮王を止めてみるか?」


「やってみる。無理なら京へ転移するから。あなた達はチナチアットで逃げて。」


 そして、帰蝶は朝鮮王明宗の前へと転移していった。

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