第112話 日常
既に三日経った。ここは
帰らなくてもいいかなと思い始めたのはお嬢様が原因の一つだということは間違いない。
最近の毎日の日課は京の街へ出て現在の日本の情勢を知ることだ。
今日も今日とて、京の街へと繰り出す星人だった。横にはお嬢様。そしてその後ろにはお嬢様のお付で護衛の細川持国とほか2名。
「
室町小路を北へ向かってい歩いている。この小路が一番繁栄しているようだ。色んな店が並んでいる。
すると前の横道の方が騒がしくなってきた。
「なんだ?なにかあるのか?祭か?」貴子様に聞いてみた。
「さぁ、今日祭があるとは聞いてませんが。何かあったのでしょうか。」
「何かあるのか?」
細川さんが店の店主に聞いている。
「あー、あれは今日、何でも、織田の若様が来られるとかで。その織田様は
「織田の若様?織田信長様が来られるのか?」細川さんは驚いている。興味津々のようだ。
「星人様も見たいでしょ。」貴子様が嬉しそうに顔を覗き込んでくる。
「えー、どんな男かみてみたいですね。」
苛烈な性格だと評判の男がどれほど恐ろしいのか見てみたい。大人数で行列してくるのだろうか。
「来たぞぉー!」
前の方から大きな声が聞こえた。
しかし、目を疑った。そこにはただの子供がいた。子供の俺よりもまだ若い十三歳位だろうか。まだほんの子供がいた。
恐ろしくもなんともないただの子供だ。それが初めて織田信長を見た第一印象だった。
しかも人数も大人数ではなくたったの五名しかいない。
「細川さん。たった五名で行列ですか?」
「いや、誰も行列だとは言ってないぞ。
「でも、尾張からここまで来るのに俺たちみたいに襲われたら大変じゃないですか。」
「なんか大丈夫らしいぞ。詳しいことは知らんが。」
「そうなんですか。もう鉄砲でも持ってるんでしょうか。ん?あれは?」
よく見れば一人、金髪の外人さんがいる。
「誰ですか?あの金髪の綺麗な人。ほんとに綺麗じゃないですか。あんな綺麗な人を連れてるなんてさすが織田信長ですね。」
「あー何時も連れてるな。あんな髪初めて見たが外国の人だろうな。」
すると金髪の女性が話が聞こえたみたいにこちらを見て会釈した。
「ん、何だ、お前、知り合いか?」
「そんな訳ないじゃないですか、細川さん。始めてみましたよ。」
「もう、殿方はあんな女性がお好きなんですねぇ。」
「え?貴子様、何を不機嫌になってらっしゃるですか。」
細川さんはオロオロし始めた。
「貴子さんもあんな綺麗な洋服着たいんですか?」俺は聞いてみた。
金髪の女性は外国の女性らしく真っ赤なスーツ姿で真っ赤はハイヒールを履いていて、髪を後ろで纏めているので、有能な秘書のように見える。外国ではあんな格好がこの時代でも流行っているのだろうか。メガネがないのが惜しいところだ。が、この時代では仕方がないだろう。
「いいえ。あの服は洋服というのですか。珍しい服ですよね。ってそうではなく、私が不機嫌なのはあの外国の方を綺麗だと褒められていたから・・・」
「そうですか?でも、貴子様も日本的に綺麗ですよ。」
「そ、そんなぁ~。(*^.^*)ポッ でも、日本的にと言うのが気になるところですが・・」
「も、もしかして、執着する性格ですか?ストーカーにならないように気をつけましょうね。」
「なんですかストーカーって?悪口言われてる気がするんですけど。」
「いえ、せっかく美人なんだから物事におおらかでないともったいないですよという意味です。」
「(。-_-。)ポッそ、そうなんですか。でも結婚はお父様のお許しをえないと。」
「そんな事は言ってません。どんな耳してるんですか。」
「そうですね。結婚はまだ早いですね。会ったばかりですから。でも結婚の申し入れは有り難く受け入れようと思います。」
「いえ、そんな申し込みしてません。ですが、してたら撤回します。」
「まぁ、そんな事言わずに。そこのお店でお茶でもしませんか。」
こ、こいつ確信犯だな。なし崩し的に結婚を進めようとしているな。まぁ、悪い気はしないが。彩香はもういないし。
茶屋に座りお茶と団子を頂きながら先程のことを思い出す。
織田信長は子供だったが、綺麗な女性が見れてよかった。
まぁ、織田信長が見れてよかったな。案外、と言うか全く恐ろしい顔ではなかったな。まぁ、未だ子供だから当然か。でも細川さんは恐ろしいと言ってたな。何が恐ろしいんだろ。オレにはただの子供に見えたぞ。オレのほうが恐ろしいんじゃないのか。
しかし、一緒にいた外人さんは綺麗だったな。どんな顔だったかな、近くで見たかったな。
「細川さん、さっきの外人さん美人でしたねぇ。」
「その通りだな。おっ、
「いつかはあんな綺麗な女性を手に入れたいですね。天下を取れば可能ですかね。」
「そりゃぁ、天下を取れれば可能だろうが、まぁ、無理だろうが、頑張れ。未だお前は若いからな。拙者からの助言だ、よく聞けよ。『やってやれないことはある。』まぁ、諦めが肝心だということだ。」
「そうですね。でも未だ出来ないことがわからないから頑張って不可能を知りたいと思います。」
「壁にぶち当たるまで頑張れ。しかし、お前も助平だな、あーはっはっはっは。」
「もう、星人様ったら。あんまり妾は作らないでくださいまし。」
今日も今日とて京の一日は平和に暮れて行くのであった。
その頃、室町殿では日本の存亡に関わる大変な話し合いが行われていたことなど知るよしもなく・・
夜が明けて次第に暑くなり始めているどこかの砂漠で相も変わらず彩香は食を求め歩き続けていた。結局暗くなって襲撃があった場所へ戻ると既にラクダはすべて連れ去られていた。
「こ、これは、流石にダイエットには良いかもしれないけど・・・限度がァ、限度があるよぉ〰〰‼み、水は出せるから良いけどぉ・・ま、まだパンが出せないよぉ〰。」
頑張っても出せないことを彩香は未だ知らない。
『私は魔法については詳しくはないのですが、多分、魔法でパンは出せないと思いますよ。』
「え、そうなの?やっぱり?ハエさんもそう思う?私もそうじゃないかと思い始めてたのよぉ〰。」
『私はハエさんではありません。名前があります。』
「は、ハエさんにも名前があるの?ハエなのに?」
『いえ、ハエではありません。これは仮の姿です。』
「え、本当?魔法?」
『はい。そのようなものです。神様にお願いされてあなたを助けに来ました。』
「だったらパン出してよ。」
『不可能です。頑張って歩きましょう。』
「朝は涼しいけど、これからが地獄。日焼けと暑さの戦いが始まるのよ。ところで、レベルが現在4とか言ってたけど、どんなことが出来るの?」
『生活魔法が上手になりました。炎系の魔法がが少々長く使えますし、なんと夜の明かりをつけて本を読むことも出来ます。』
「どれ位?」
『10分ほどです。』
「
『ローマは一日にして成らずです。』
「スキルは?まだ付いて無いの?」
『はい、スキルは未だ所持していません。スキルは関連する何らかの行為を行えば付きやすくなりますよ。』
「ねぇ、東へ向かってて大丈夫?街があるの?」
『はい、ありますよ。』
「私はここゴビ砂漠だと推測したんだけど、東へ行けば日本があるんだよね。」
『はい、正解です。日本はここから東の方にあります。』
「良かった。頑張って歩く。」
それからどれほど歩いただろうか、未だ街に到着することなく日が暮れようとしている。また寒い夜がやって来る。
「あれ?あれ灯じゃないの?」
『その様ですね。』
「ねぇ、ハエさん。様子見て来てよ。」
『私はハエと言う名前ではありません。』
「名前があるの?何ていうの?」
『千奈です。』
「ハエなのに名前があるんだ。洒落てるハエね。」
『いえ、ハエでもありません。あんまりハエハエ言ってると私帰りますよ。いいんですか。』
「えー、ごめんごめん、もう言わないから。帰らないで。話し相手もいなくなったら私死ぬ。この際ハエでも構わないから。」
『またハエって言った。私帰ります。では、また会う事があれば・・・』
「えー、もう言わないから。帰って来て・・・・」
いなくなった。つい面白くってバカにしてたからいなくなった。
「帰って来て〰〰〰〰。」
ビュー〰〰〰〰
風が吹いてる、あー涼しい・・・・って本当にいなくなったんだぁ!帰ってきてよぉ〰〰〰〰。
ビュー〰〰〰〰〰
_| ̄|○
あーあ、話し相手がいなくなった・・・
ビュー〰〰〰〰〰
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