第56話 京、そして・・・
怒号の様な悲鳴が続いていた。ただ、悲鳴は帰蝶が叫んでいたものではなかった。
悲鳴は炭化していた珠から出ていた。珠はいつの間にか回復していた。炭化していた妻木も回復している。
「もう許さない。」
燃えた服は炭化しているものの帰蝶の体は回復していた。
「あなたはやり過ぎた。」
強烈な雷鳴と強烈な光と共に稲妻が義信に落ちた。
その瞬間、義信の体は炭と化した。
「ダーリン、大丈夫?」
帰蝶は、焼けただれてケロイドで醜くなった吉法師に向かって優しく問いかけた。
「おい、だったら、この体を治してくれよ。珠と妻木だけ治療して俺と政勝と放置かよ。」
「あなた達は簡単には死なないでしょ。それに笑いのネタが減るもの。」
「帰蝶様、痛いです。治療して下さい。」
「仕様がないわね、政勝は。はい。」
帰蝶は治癒魔法を掛け二人の全身の火傷を治療した。吉法師と政勝は傷は癒えたものの
「まだ痛いけど助かったぞ。」
「お、お前ら、もう許さないぞ。」
どうやら生きていた義信が苦痛に顔を歪ませ息も絶え絶えに
「あら!生きてたの?『もう、許さない』って、あなたが仕掛けて来たんでしょ?」
「そうだな、天に吐いた唾が自分にかかって怒っている子供みたいいだぞ・・って子供だったな、前世から。」吉法師が義信を煽る。
義信は炭化は表面だけだったのか生きていて回復魔法で回復したのだろう。
「き、今日はこのくらいで勘弁しておいてやる。覚えてろよ。」
そう言うと転移魔法を使ったのだろう、義信は消えてしまった。
「ちょっとぉ聞いた?『今日はこれくらいで勘弁してやる』って雑魚のセリフよ。雑魚のセリフを本当に聞くとは思わなかったわ。あーはははは、勘弁してやるって、ぷっぷっぷーーっぷぅっあっははぁーっ、ヒーっ、ひーつ、お、お腹が痛い、痛いわよ、本当に勘弁してほしいわ、ヒーっ、お腹が。し、しかも、『覚えてろよ』って、絶対忘れる自信がないわよ、ひーーーっ、ひーつ、ふーっって、ど、どうやったらそんな雑魚セリフ本当に言えるの?雑魚印象が深すぎて忘れられる訳ないわよ。ひーっ、も、もう一度戻ってきて、もう一度わ、笑わせてよ。た、助けて面白すぎるわ。ひっひっひっひー、もう許して、私の負けで良いから。義信いつかは私の家来にするわよ。」
決意を新たにする帰蝶であった。
「取り敢えず、風呂に入るか。お湯張って来るから、まず帰蝶と珠と妻木が入れ。」
一刻経過後、吉法師達はお風呂に入り終えセスナに乗り込んだ。
「今度は大丈夫だろうな。」
吉法師は帰蝶に聞いてみた。
「多分、暫くは攻めてこないわよ。義元さんにお願いして、武田信玄、今はまだ晴信かな、晴信に義信を廃嫡してもらうのが一番かもね。廃嫡してもらわないと同盟は結べないでしょうね。」
「よし、義信廃嫡作戦で行くか。駄目なら武田と同盟を結べないどころか全面戦争だぞ。銃が三千丁あったも勝てるかどうか分からないぞ。」
「大丈夫よ。私一人で何とかなるわよ。多分。じゃぁ、転移するわよ。」
次の瞬間セスナごと相国寺の庭へと転移していた。前回と同じように小坊主が寄って来たが今日また来ると言ってあるので混乱はない。
「また、停めておくが宜しくな。」
「はい、承っておりますので。」
京の町は皐月に入り梅雨入りした模様で小雨が降っていた。
「しかし、雨だと傘さして観光するのが大変だな。」
「大丈夫よ、頭上に傘のようにシールド張れば、普通に観光出来るわよ。」
「じゃ、俺金閣寺に行ってみたいぞ。まだ新しいんだろ?」
「でも私たちがいた世界の金閣寺は再建されて60年くらいしか経ってなかったのよ。この時代の金閣寺は建ってから150年ほど経ってるから、今の方が古いわよね。しかも、応仁の乱で建物の多くが燃えてるし、舎利殿は、あ、金閣寺ね、江戸時代に修理されたらしいから残っていることは残っていると思うんだけど。修理するほどだからかなり燃えてるんじゃないかな。」
「それは、あまり見たくないな。じゃあ、銀閣寺は?」
「銀閣寺は応仁の乱の後に建てられたからまだ残ってるわよ。まだ50年くらいしか経ってないんじゃなかったかな。」
「なぁ、帰蝶。俺ずっと思ってたんだけど、帰蝶って歴史に詳しいよな。」
「そうね、かなり詳しいわよ。」
「だったら、織田信長何処にいるのか知らないのか、幼名とか。」
「それが不思議なのよね。記憶がぽっかり抜け落ちてるのよね。不思議な事もあるものね。」
「そうか、じゃあ、仕方ないな。」
「まぁ、信じるものは救われるって言うしな。」政勝が余計な事を言う。
「政勝、天誅!」
突如、政勝が体が硬直し痺れて小刻みに震え始める。
「す、す、す、すいませんでしたたたた。」
「すすすいませんでしたって、あーははっあっは、すすすいませんでしたって、すすすって、すすぅーって、ヒーーっ、あんた私を殺す気?殺す気ね。あなた、義信の子分でしょ?二人で私を笑い殺す気ねねねねって、真似しちゃったじゃない。」
五人はすぐ隣の室町御所まで来た。兵は十日前も来たので吉法師の顔を知っているので直ぐ通してくれた、でもまさか今現在修理の真っ最中である屋根を壊したのが隣にいる男だとは気が付かないだろう。将軍と義元は離れの
「将軍、義元殿、元気か?」相変わらず帰蝶以外には態度がデカい吉法師であった。
「これは副将軍、よく来たな。」
「元気だが、さっき死にかけたぞ。」
「何があったでおじゃるか。吉法師殿が死にかけるなど。」義元が目を丸くし、身を乗り出して、聞いて来る。
「武田の嫡男の太郎っているだろ。あれが、那古野城に来て宣戦を布告していった。
「なるほどでおじゃるな。文を出してみよう。」
「それより、武田に行ってみるか。帰蝶、武田晴信は何処の城にいるか知ってるか。」
「確か、
「じゃあ、先に尾張の兵士を尾張へ送って、次に駿府の兵士と
「ちょっと。どくろ城じゃないわよ。つつじよ、つつじ。」
「あの字は『つつじ』というより『どくろ』だろ。俺にはどくろ城にしか見えないな。」
「ダーリン、酷ーい。笑えなーい。」
こうして吉法師一行の甲府旅行が決まった。
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