第41話 死地に陥れて後生く
「あなたを牢獄に送るわよ。そこで頑張ってダーリンを救い出して。ダーリンはまだ十歳だから背負ってでも脱出できるわ。偉そうにしてるからすぐ分かる思う。これは小さな銃。いざとなればこれを使って弾は12発入ってる。使い方はこうよ。お守りとでも言えば馬鹿な兵士は信じるわよ。それで牢を破ってこっそり脱出して。後は頑張って。」
それを聞くと滝川一益は兵士の前で帰蝶と妻木を脅し始めた。それを見て駆け付けた兵士に殴りかかり、見事に一益は兵に連れて行かれてしまった。
「良かったのですか。詳しい状況を伝えなくても。」
「孫氏も言ってるわよ『これを犯すに事をもってし、告ぐるに言をもってすることなかれ。これを犯すに利をもってし、告ぐるに害をもってすることなかれ。』つまり、兵を働かせる際は、任務を与えるだけにして、その理由を説明してはならない。 兵を働かせる際は、有利なことだけを知らせて、その害になることを告げてはならないってね。」
「それが有利に事を運ぶという事でしょうか。」
「危機に陥ってこそ、はじめて勝敗を決するような戦いができるらしい。信行の力を知ってたら誰も行かないわ。彼に賭けるしかないわよ。取り敢えず私達は行商農民の振りをして大根売るわよ。」
「どうやって売るのでしょうか。」
「私の脚の様な大根はいらんかねぇーと言って脚を見せながら売るのよ。私は少し離れて見てるから一人でやってみて。」
そう言うと少し離れたところから
妻木は人の行き交う大通りで足を
「大根はいらんかねぇー、私のこの脚のような白くて長い大根はいらんかねぇー。甘ーい、私の脚の様に太ーい大根はいらんかねー。」
男共が寄って来て大根ではなく脚をじろじろ見てくる。勿論大根を買う主婦は見向きもしない。帰蝶は笑いを堪え切れなくなった。
「ひーーっ、ひーー。殺す気?私を殺す気なのね?殺さないで。ひーーっ、ひーー。なぜ?男がじろじろ見てるのに、なぜ脚を出し続けるの?ストリッパーなの?ひーーっ、死、死ぬぅ。あ、脚は開かないで、だめぇ、笑い死にさせないでぇー。ストリップなの?公衆の面前でストリップしてるの?な、なぜ?なぜ大根を売り続けるの?買う人がいないのに?いないから大根売らずにストリップするの?だ、だめぇ、助けてぇ、ひーーっ。死ぬぅ!」
大喜びの帰蝶であった。
男どもが大根を買っていく。買わないと思っていた男共が大根を買っていき早々に大根は完売してしまった。
「さすが帰蝶様です。あっという間に大根は売れてしまいました。何を笑ってらっしゃるんですか。」
「ひーっ、ここここ、殺さないで。ひーーっ。あ、脚を私に見せないで。ひーーっ。」
笑いが収まらない帰蝶であった。
十数分間笑い転げ続けた後、帰蝶は息を整えて
「妻木、あなた私を殺そうとしたでしょ。」
自分で招いておいて理不尽な罪に妻木を陥れようとする帰蝶であった。
「え?何を仰ってるんだか。私は大根を販売しただけですよ。」
「大根を販売って、ぷぷぷぅっ、ヒー、ま、また私を殺そうとするの?こ、殺すの?ひー、ス、ストリップするの?もう、止めて。助けて。ヒー、殺さないで。」
すると兵士が寄って来た。
「何だこの女が幼女を殺そうとしてるか。」
「れ、連行して下さい。こ、殺されます。ひーっ。」
「え?き、帰蝶様?」
兵士は美人の妻木を上から下まで嘗め回すように見つめた後、連行していった。
去り際に一益に渡したグロックの様な自動拳銃を渡すのも忘れてはいない。
「妻木、頑張って。ダーリンを助けて。結果オーライよ。死地に陥れてしかる後に逝くよ。いえ、これでは、死んじゃうことになるわ。死んじゃうの?ひー、死ぬぅ。」
思い出し笑いに殺されそうになる帰蝶である。
しかし帰蝶は思った。
流石妻木ね、居なくなって迄私を殺そうとするなんて。
そう言えば、連れて行かれる妻木の目は売られていく子牛の様だったわ。ドナドナね。ドナドナよ。ヒー、また殺すの?更に殺し続けるの?
帰蝶は妻木を牢獄に閉じ込めたことを悪いとも思わず、捕らわれ連れ去られる妻木を笑い続けていた。
なぜなら、帰蝶がドSだからであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます