犯人はあなただ!

長束直弥

如何にも

 招待客が次々に殺されていくという連続殺人事件が起きた――人里離れたとある財閥の屋敷。


 その屋敷の大広間に、残された関係者一同が集められた。

 そして一同は、名探偵の登場を今か今かと待ちわびていた。

 その部屋の扉が開いて、二人の男が入ってきた。


 そのひとり――今賀旬いまがしゅんは、一流ブランドのスーツを嫌みなく着こなし、一同の前で凛として言い放つ。

「お待たせしました。この事件の鍵は、心理トリックにありました。そしてその犯人は――そうです、その犯人こそが私の睨んだとおりの人物でした」


「おおぉ!」

 毅然きぜんとした態度で言い放つ今賀の言に、一同はある種のシンパシーを覚え響動どよめき立つ。


「な、何を云う!」

 皺苦茶になったコートに、六頭身で小太りの身を包んだ――謂わばファッションセンスというものには縁遠い――井伊友朗いいともろうが、周章狼狽しゅうしょうろうばいし、横から今賀の言葉を制する。


 二人の間には、マットブラックの手錠の鎖が見える。


「やはり、あなたが犯人だったのですね!」

 誰かが叫ぶ。


「最初からあなたが怪しいと思っていたのよ」

 また、誰かが叫ぶ。


 その場にいたすべての者がそれらの言葉に点頭うなずき、手錠に繋がれたその男に詰め寄る。


「…………?」

 詰め寄られた男は後退りをしながら首を傾げる。

 

「犯人は――あなただ!」

 一同が一斉に、ひとりの男を指差す。


 ――えっ? 

 

「ワ、ワタシは――ワタシは刑事だ!」


 井伊友朗は皺苦茶になったコートの内ポケットから俄に警察手帳を取り出すと、困惑した表情をみせながら一同の前に翳した。

 

 

          <了>



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犯人はあなただ! 長束直弥 @nagatsuka708

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