第19話 十年目の離婚

 結婚してから、僕の運は急降下した。正露丸を飲んだって止められないほどの雪崩連太郎だよって言っても若乃花だよね? で、何代目の若乃花だと思う? よく若乃花勝だった、花田虎上を三代目という人がいるけど、若乃花幹士出なくちゃダメだよね? だから『土俵の鬼』と呼ばれた初代と若三杉時代は美形力士として人気だった二代のみだと僕思うなあって、完全に逸脱してるね。


 まずさあ、異動した戸塚店が最悪だった。劣化しているし、モチベーションは低いし、ベテランバイトが幅を利かせているし、とにかく活気がない。入社同期なのに一度も戸塚から動いてない使えない男がやたら僕に威張ってくる。その上、いままで食らったことのないクレームをしょっちゅう受けた。大抵は相手がキチガイだったのだけど、僕はメンタルが弱いからさあ、いつもかなり凹んだなあ。


 さらに、能面冠者を超える超イカれてて、プライドばっかりが高慢と偏見な女が異動して来て、しょっちゅうお見舞いされた。悔しくて、いい歳して恥ずかしいけど泣いた。

 さらに定年間際の店長ががどうも僕のことを嫌っている上に嫉妬してるみたいでさあ。なんなんだよ!

 完全に仕事への情熱を失い『このミステリーがすごい!』で知った歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』に衝撃を受けたり、伊坂幸太郎の存在に気がついて、今まで「2時間ドラマみたいなもんだろ」とバカにしていたミステリーの世界にどっぷりはまってしまった。その前は柴田錬三郎の『眠狂四郎』シリーズなんて読んでいたのにねえ。いまだにミステリーばかり買っているよ。でも、最初に最高な作品を読んでしまったもので、それを超える作品には出会っていない。


 ああ、夫婦仲ね。とても良かったよ。一緒に函館やら知床やら札幌やらって北海道ばっかり行っていたね。「移住しようね」と二人で言っていたものだ。プライベートは良好だったのに仕事がダメ。結局、お偉いさんを怒らせて、左遷。菅原道真みたいだ。すぐに呪詛して、バカ書店を今のようなひどい会社にしてやったけど、神様にはしてくれなかった。潰れるよ、バカ書店は。僕の呪いは結構効くんだ。で、左遷先でやってられない気分になって、会社を辞めちゃった。妻だった人が「ゆっくり休めば」というから本当にゆっくりしてたら、結局、キレられた。そのショックでパニック発作が出るようになり、社会不安障害だの、うつ病だの言われて、本当に無気力になっちゃった。それで、僕が約束を違えて輪番で来る、自治会の理事を出来ないって言ったらまたキレられて、妻立た人は毎晩、午前様で帰って来るようになった。ヨシミっていう同期の女と飲み歩いていたらしい。で、勝手にマンションを売り払われて、金は貰えたけど、離婚届を突きつけられて、ボロくて狭いアパートで一人暮らしさ。そこで、躁鬱病になって、周りを恐怖の坩堝に叩き込み、警察官が四人来たけど、上申書を書いておしまい。まあ、でっかい警官と相撲を取ったりしたけどね。たくさんあったお金はどんどん浪費しちゃって(躁鬱病の特徴さ)、とても困っていたら、別れた妻がなぜか助けてくれて、今に至る。

 以上。

《おしまい》

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

堕ちていく 僕 それからチカラ よろしくま・ぺこり @ak1969

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ