第16話 僕の、恋愛悲劇・第二幕

 前に三白眼の女性の先輩の話をしたことを覚えているだろうか? 第一印象が無茶苦茶悪くて、僕よりも少し背が高い。高校時代はお決まりのバレーボールをやっていたそうだ。

 僕が新入社員で学参へ配属になった時には、僕と同い年のアルバイト(この人も身長が高かったな。悪い人ではなかったと思う。たまに大激怒していたけど)と付き合っていたみたいだったから眼中になかったよ。確か、男性は日本ペプシコーラ(株)に入社したんじゃなかったっけ? なんか名刺をもらった気がするよ。


 でもさ、そいいうカップルって、しばらくすると、すれ違いで別れるんだよね。書店員ってさあ、身内のカップル率がものすごく高いのさ。要するに普通のサラリーマンと違って、書店員って土日に働くから、一般社会と隔絶されるんだよね。。他のサービス業だって同じでしょ? いびつな労働環境を是正しなくちゃ、結婚も出来ないし、子供だって出来ないよ。考えろよバカ政治家!


 ここのカップルも結局はオジャンになったようだよ。そのうちに、なんとなく三白眼と僕が仲が良くなっていくの。不思議だね。三白眼で怖かった目が、徐々にチャームポイントになるし、永久凍土のような心が溶けて、なぜかお笑い系に変わっていく。なんか妙に気があって、ゲラゲラ笑いながら一緒に街を歩いてく。手を組んでも文句言われなかった。僕の方が少し小さいから引っ張り上げられているというか、エスコートされてる感がバリバリだったけどね。いいや、そんなことは。でもって、僕は仕事中でもなんでも、好きになった人の後ろをついてまわる変な癖があって、他の先輩に「あんた! またついて回ってるよ。よしなよ。みっともないから」と言われて初めて気がつく始末でさあ。これじゃあ、カルガモさんちのヒヨコちゃんだね。


 そのころは店の若手社員やアルバイトの仲がものすごくよくて、飲み会だの、カラオケだのと毎日のように行っていたよ。よく体力が持ったものだ。虚弱で普通の人間の体力じゃないのにさ。そこで、彼女とゲラゲラじゃれ合っていたなあ。前の失恋の傷もどっかにすっ飛んでしまったよ。でも、ものすごく、のめり込んでいたわけじゃないんだ。なにか冷静な部分があった。それがなんだたのかはいまだにわからないんだ。


 結局ね、彼女は仲良くなってすぐに、お隣の横浜高島屋店に異動になってしまった。歩いてすぐだから休憩時間だって会いに行けたよ。行かなかったけど。しばらくすると彼女は東戸塚店に異動になった。ここには月一くらいで高い電車賃を払って行ったさ。アポも何も取らずにね。休みだったらどうすんだろ? 僕はさ。でも居たね。必ず居たね。誰にも取り次いで貰わずに自力で探し出したよ。すごい吸引力だ。ダイソンに買ってもらいたい。三時の休憩中の飲み物代は当然、僕が払ったよ。就業時間後に食事にも行ったよ。僕が全額出したよ。あれ? これっていいように使われていただけかな。まあ、いいか!


 入社六年経って、僕が、たまプラーザ店に異動することになり、前にどこかで書いた、鬱状態になってしまい、彼女との連絡が全く出来なくなってしまった。


 そしたら、ある日社内報に、唐突に彼女の退職が載っていた。連絡先ねえ、相変わらず管理ができないんだよねえ。わからないわ。


 結局は、その程度の関係だったのかなあ。


 一度だけ、JRの横浜駅の相鉄口で彼女にそっくりな女性(いや、どう見ても本人だった)に出会ったんだけど、“近寄るなオーラ”がものすごく出ていて、僕は逃げ出した。そのあとフェイスブックで見かけたからメッセージを書いたんだけど、返事なし。

 

 もしかしたら、何かで僕は彼女を怒らせてしまったのかもしれない。仕方がないことだ。だからもう、構わないんだ。

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