第15話 僕の、恋愛悲劇・第一幕

 久しぶりだね。長らく放置してたから、もういいかなと思っていたんだけど、なぜか読まれてる。なにが楽しいんだろうね。他人の悲劇を読んでさ。もっと教養になるものをお読みよ。でなければ寝ちゃったほうが心身にいいさ。


 仕事の話はもうしないよ。さんざっぱら喋ったからね。あれって結局、自慢話になっちゃうんだろうね。


 前にも話したかもしれないけれど、美人が好きだあ! というわりに僕は性格で女性が好きになってしまいがちな男なんだよ。

 会社に入って最初に好きになったのは年下の先輩ってやつさ。性格はねえ『サザエさん』以外の言葉が思い浮かばないなあ。よく、お魚くわえたどら猫追っかけてたなあ〜って、違うね。元々は美人なんだろうけど、かわいそうに、ひどいアトピーでかなり無残だったよ。僕もアトピーだけど五、六年に一回しか顔にこないんであの辛さはよくわからなかった。でもさ、そんなこと気にもとめないで、とにかく明るいのさ。それがいい。加えて、声のトーンと軽い体臭。フェチで悪いけれど、自分の好きな体臭って変な香水よりフェロモンが出ているから気持ちが刺激されるんだよね。


 毎週土曜日が揃っての遅番だったんだけど、毎週のように喫茶店に誘っておしゃべりした。支払いはもちろん(?)僕さ。当然ね、下心はあるよ。でも、とても告白なんか出来なかった。喋っているだけで楽しかったのさ。


 でも、情勢は絶えず変化するものなんだよね。彼女といつも口喧嘩していた夜のアルバイトの男子(僕とタメ)が僕らの変化に気がついたみたい。そして、僕もようやく、彼女に告白らしきものをした。女性って、いや彼女だけかもしれないけれど、ものすごく、わかりやすく言わないと気がついてくれないみたい。今はすぐに「好きだ」って言えるけど、あの頃の僕にはムリな話さ。わかってもらえるのに本当、疲れたよ。


 結果? そんなもの聞くなよ。彼女はアルバイトの男子とくっついたに決まってるだろ。なんのためにあいつのことを挿入したと思ってるんだ。結局ね、僕が二人に火をつけちゃったんだよ。二人で遠くに飛んでったのさ。


 それから、彼女と口をきけなくなってしまった。心が硬直してしまったんだ。別に嫌いになったわけじゃないよ。でも、ダメなんだよね。

 でね。なぜか周りの先輩女子たちが変な動きを始めたんだ。彼女を売り場から排斥しようとしたんだ。理由はよくわからない。仕事が出来なかったからなあ。僕は何一つ頼んでいないよ。だって、一緒に働きたかったもの。でも、先輩たちは、どう見ても僕のためにやっているようにしか見えなかった。


 彼女は学参売り場を追い出されて文庫売り場へ異動した。でも、僕は帰宅前にしょっちゅう文庫売り場へ行って「すみませ〜ん」と客のふりをして会いに行ってたっけな。でもそのうち、彼女は会社を辞めてしまって、僕も管理が悪いから、住所も電話番号もどこかへ散逸してしまったよ。困った性格だ。


 そのあと一回だけ横浜の地下街で会ったけれど、なにかの勉強をしているって張り切っていたんでよかったよ。あの男とは結局は別れたようだった。僕は単なる火薬だったということだね。ドカーンとね。

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